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聖域の雀/エリス・ピーターズ

[修道士カドフェル・シリーズ7]聖域の雀
エリス・ピーターズ

My評価★★★★

訳:大出健,解説:大津波悦子
現代教養文庫(1992年9月)[廃版]
ISBN4-390-13007-2 【Amazon
原題:The Sanctuary Sparrow(1983)


1140年春、一時の平穏を取り戻したシュールズベリの夜。だが夜半、祈りの最中の教会で騒動が起こった。一人の若者が町の人々に追われ、教会に逃げ込んだからだ。
若者は旅の曲芸師でリリウィンという。リリウィンは、金細工師オーリファーバー家の息子ダニエルの結婚式で曲芸を披露した。その後、一家の主人ウォルターを殺して、持参金の金や宝石などの貴金属を奪ったと告発されたのだ。
しかし教会に逃げ込んだ者は、40日間は司法や世間の人々から庇護される。

カドフェルはウォルターの母ジュリアナの治療ため、オーリファーバー家へ向かう。ウォルターは気絶しただけで死んでいなかったが、持参金の行方は知れない。リリウィンに好意を寄せている下働きの女召使いラニルトは、彼の仕業ではないと主張。
やがて隣家の男の死体が発見された!巧妙に溺死を装っていたが他殺体だった。オーリファーバー家で何が起こっているのか?犯人の狙いは?カドフェルは犯人究明に乗り出す。

********************

今作はオーリファーバー家の内情に焦点が当てられていて、これまでとは趣きが異なっていると思いました。しかも珍しく悲劇的な結末。引き返すことのできない罪を犯した者には、この結末しかないのかも・・・。
姑ジュリアナと小姑スザンナ。30歳を越えて未婚のスザンナは、ジュリアナの孫娘で家事を取り仕切っている。そして一家には新参者の花嫁マージェリー。一つの家に姑・小姑・嫁の三人の女がいて、何が起こらない方がおかしい。恐ろしきは女の闘い。こういったことが現代でもあるだろうから、とてもリアルに感じましたねぇ。
マージェリーの要求に対する夫ダニエルの反応の鈍さ。私にはマージェリーが、なぜそれほどこだわるのかよくわかりませんでした。ダニエルの言うように、家事を分担すれば一人あたりの負担が減って合理的だと思うのだけれど、そうはいかないらしい。男女間の考え方の相違は、女性作家ならではの視点。男性作家だとこんなことは思い浮かばないんじゃないかな。

犯人にとって、本来の目的はお金ではなく、幸せになることだったはずだ。盗んだのは意趣返しのつもりだったろうが、欲に目が眩んだのだろう、本当に求めていることを忘れてしまった。
犯人にとって悲劇への引き金となったのは本当は欲ではなく、それまでの自分の境遇と、そうさせた人を許せる寛大さに欠けていたことだと思います。その点、リリウィンは自分の求めているものを知っており、人を許すことのできる寛大さがありますね。

話は変わりますが、冒頭で暴徒と化した群集を一括するラドルファス修道院長は、絵になるがカッコよすぎ。そろそろラドルファスの過去を知りたいなあ。

備考)2004年1月、光文社文庫より刊行【Amazon】(2004/3/4)

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氷のなかの処女/エリス・ピーターズ

[修道士カドフェル・シリーズ6]氷のなかの処女
エリス・ピーターズ

My評価★★★★☆

訳:岡本浜江,解説:大津波悦子
現代教養文庫(1992年3月)[廃版]
ISBN4-390-13006-4【Amazon
原題:The Virgin in the Ice(1982)


1139年11月、内乱が激しくなり、ウスターの町の人々はシュルーズベリへ逃げ込んだ。
ウスターを脱出した貴族の姉弟と付き添いの修道女ヒラリアは、シュルーズベリの修道院を目指している途上で行方不明になった。姉はアーミーナ・ユーゴニン、弟はイーヴ・ユーゴニンという。

カドフェルは重症人の看護をするために、ブロムフィールド小修道院へ向かう。ケガを負ったのはエルヤス修道士といった。
エルヤスはブロムフィールドへと聖骨を運んで来たが、その帰り道で何者かに襲われたのだった。エルヤスのうわ言から察するところ、彼はどこかでユーゴニン姉弟とヒラリア修道女と出遭っているらしい。

イーヴを見つけ出したカドフェルは、少年をブロムフィールド小修道院へと連れ帰ろうとする途中、凍った川の中で娘の死体を発見。娘はヒラリア修道女だった。
この地方では、荘園や村を襲い焼き尽くす盗賊団が跋扈している。ヒラリアは盗賊に襲われたのだろうか?アーミーナはどこにいるのか?
アーミーナの行方を聞き込みしていたカドフェルは、黒い肌の若者がアーミーナを探していることを知る。若者は何者なのか?

********************

行方不明となった貴族の姉弟と、二人を探し暗躍する謎の若者。氷のなかで発見されたヒラリア修道女は誰に殺されたのか。また、エルヤス修道士はなぜ重症を負ったのか。そして跋扈する盗賊団。
いくつもの謎が交錯し、これまでのシリーズ中ではいちばん複雑な展開になっています。複雑さ以外でも、これまででいちばんよかった。哀しい話だけれど。

事件の発端はアーミーナの強引さから始まるといっていいでしょう。はじめはなんて我儘な娘だろうと思ったけど、彼女にも言い分があり、その気持ちはわからないではない。自分の言い分を胸に秘め、ぐっと耐える気丈さがあるので責めることはできない。
氷の中から発見された美しきヒラリア修道女。彼女には何の咎もないのに・・・。突然に命を断ち切られる理不尽さに、怒りよりも哀しみを誘われる。無垢な彼女の死が、この作品の深みとなっている。またエルヤスの悔恨や、彼がイーヴに寄せる父性愛が愛おしい。父性愛と言えばカドフェルも。

このシリーズは毎回恋人たちが誕生しますが、その理由がわかったような気が。カドフェルは考える、「一人ではたやすく諦めてしまうが、二人だと励まし支え合い、助け合えると 」。
恋人だけに限らないんですが、今作では人と人を繋ぐ想い、人が人へ寄せる想いが強く打ち出されていると思うんです。一人では苦難や哀しみに耐えられないかもしれない。けれども二人だと哀しみを乗り越えることができ、歓びを分かち合うこともできるのだ、と。

備考)2003年11月、光文社文庫より刊行【Amazon】(2004/2/23)

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死への婚礼/エリス・ピーターズ

[修道士カドフェル・シリーズ5]死への婚礼
エリス・ピーターズ

My評価★★★★

訳:大出健,解説:大津波悦子
現代教養文庫(1991年11月)[廃版]
ISBN4-390-13005-6【Amazon
原題:The Leper of Saint Giles(1981)


1139年10月、修道院の教会で婚礼を行うために、花婿と花嫁の行列がやって来た。花婿は60歳近い有力な領主ウォン・ド・ドンヴィル。傲慢なドンヴィルは見物人を鞭で蹴散らす。花嫁は18歳の少女イヴェッタ・ド・マサール。

イヴェッタは両親亡き後、伯父ピカール夫婦に育てられた。ピカール夫婦はイヴェッタが継いだ財産を利用して利益を上げるべく、イヴェッタの意思を無視してドンヴィルと縁戚関係を結ぼうとしたのだった。
ドンヴィルの従者ジョスリンは、イヴェッタと幼なじみで彼女を愛していた。ジョスリンは婚礼を阻止しようとするが、解雇され放逐される。

婚礼当日、ドンヴィルが死体で発見された。殺人容疑はジョスリンにかかった。ジョスリンは逃亡し潜伏しながら、イヴェッタをピカール夫婦から開放してやりたいと願う。
カドフェルはイヴェッタが、かつて自身も参戦した十字軍で伝説の英雄となった騎士のギマール・ド・マサールの孫だと知り、事件の解明に乗り出す。その最中、第二の殺人が起きた!

********************

冒頭から珍しく不機嫌なカドフェルが登場。有能な助手マークが施療院へ行ったので、代わりにオズウィンが助手となったから。
恐ろしく不器用で、触れる物をみな破壊してしまうオズウィン。だが本人に悪意はなく、善良なだけに憎めず始末に終えない。
他人事だと面白いのですが、いざ自分にこういう助手がいたら・・・。ぞぞぞー。絶対いらない。でも性格が悪いよりはいいかなぁ。カドフェルは助手で苦労してますねえ。私はカドフェルのような上司だったらほしい。

前巻はこの作家としてはイマイチだったけど、この巻で持ち直してくれたのがうれしい。
事件はそれほど複雑ではないのですが、登場人物(正確には登場人物の生き方)が強烈な印象を残す。
そのうちの一人は、マークが行った施療院に身を寄せているラザラス。なんと言ってもラザラスの存在感が圧倒的!人生経験豊富なカドフェルですら、彼を前にしてはまだまだという感じ。もう一人はエイヴィス。美人だけど、こすっからい女かと思いきや・・・。

今作では外面と内面との相違、外からではわからない一面といったところが重視されているように思いました。
エイヴィスもそうですが、外聞から想像する人物像と、実際の内面にかなりの隔たりがあるんですよ。ドンヴィルにも実は人間的なところがあり、他人には見せない知られざる一面がある。イヴェッタは従順で一見意思薄弱のように思われるけど、実はそうではなく、内面に激しいものを持っているんですねえ。

今作ではハンセン病が取り挙げられており、マークの行った施療院は町や旅の病人、ハンセン病患者を収容する施設。
そのような人々と交わることによって、ジョスリンは彼らの人となりを身を持って知る。ジョスリンの体験がこの作品に重みと深みを与えています。この場面があるからこそ、ラザラスの存在が活きてくるのだと思います。

備考)2003年9月、光文社文庫より『死を呼ぶ婚礼』として刊行【Amazon】(2004/2/17)

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