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虚空の旅人/上橋菜穂子

[守り人シリーズ]虚空の旅人
上橋菜穂子

My評価★★★★

カバー画・挿画:二木真希子
偕成社(2001年8月)
ISBN4-03-540270-2 【Amazon


新ヨゴ皇国の皇太子チャダムが主人公のシリーズ外伝。
チャダムは王の名代として、サンガル王国の「親王即位ノ儀」に出席することになった。星読博士で相談役のシュガを伴に、珊瑚のように美しい首都<望光の都(サンガル・ヤシーラ)>に入る。

折りしもサンガル王宮に、<ナユーグル・ライタの目>と呼ばれる漁民の幼女エーシャナが連れて来られた。
エーシャナは、ナユーグルという別世界(精霊界)に住むナユーグル・ライタの民の歌を聴いて魅せられ、魂を囚われてしまったのだ。そんな子どもを<ナユーグル・ライタの目>という。
ナユーグル・ライタの目は王宮に連れてこられ、大切に扱われた後、儀式に則って海へ還される。要するに人身御供だ。ただし儀式の前に魂が戻って目覚めれば解放される。
チャダムはエーシャナを救おうとするが・・・。

サンガル王国は海運業を主とし、数百の島々から成り立つ。個々の島には島を統べる「島守り」がいて、彼らはサンガル王家の女たちを妻に迎えている。島守りのアドルは王の座を得んがため、密かにタルシュ帝国と手を結び、反乱を企てていた。
第二王子のタルサンは、潜伏していたタルシュ帝国の呪術師に呪いをかけられる。タルサンの姉サルーナ王女とチャダムは、罠にかけられたタルサンを救おうとする。

海の上で暮らす民ラッシャローのスリファは、忽然と現われた船に襲われて、父と弟を連れ去られた。
船は偽装していたが、サンガル王国を攻めようとするタルシュ帝国の斥候船だった。スリファは家族を救うため、タルサン王子の助力を請おうと首都へ向かう。
そして<ナユーグル・ライタの目>の儀式の夜がやってきた。

********************

時間的には『夢の守り人』より後の出来事。今作ではバルサとタンダは登場せず、皇太子として成長したチャダムの活躍!これまで山岳地帯や平原を舞台としていたけれど、今回は南洋の王国が舞台。
エーシャナは救われるのか、さらわれたスリファの家族は?スリファはこの物語にどう関わってくるのか?タルサン王子の冤罪は解けるのか?しかも反乱の兆しまである息をつかせぬ展開。すべてはチャダムの決断にかかっている。どうするチャダム!?
『闇の守り人』の新カンバル王ラダールも登場します。ラダールは相変わらずですねえ。

色白くて軟弱そうでツンとすまして見えるチャダムは、同世代で野性味溢れ開放的なタルサン王子の反感を買うけれど、二人はじきに打ち解けます。
でもチャダムは、最後までタルサンの言動を全面的に肯定していない。それはチャダムが王位継承者である皇太子として自覚している一方、タルサンは王位に関わりないとはいえ王子の職分を顧みていないから、いうこともあるようです。
兵士を従えて誇らしげに出兵するタルサンを見て、チャダムは「自分なら誇りより痛みを感じるだろう」と内心思う。タルサンとの対比によって、チャダムの性格に陰影が与えられ個性が際立ってくるようですね。
チャダムの性格は、日常的な感覚から言えば決して複雑ではないけれども、子どもも読むファンタジーのキャラクターとしては若干複雑な設定。

己の意思に反して、身の内に精霊の卵宿をし精霊界を視たチャダムは、同じような境遇の<ナユーグル・ライタの目>幼女エーシャナを救いたいと願います。けれども次代の王となる身、外交にも関わるので思うように動けません。
ひとりの人間を救えず国を守れるのか、ひとりの犠牲によって大勢の民と国を守るか、と煩悶するチャダム。そして王たる者への道を歩み始める。チャダム、生真面目すぎ。
これまでチャダムは内政のみに意識を向けていたけれど、今作では諸外国との外政に目を向け、それを鏡として自国の内政にも目を向けています。
大国に対して小国が共同戦線を張るのはよくあることでしょうが、チャダムの狙いは軍事そのものより、各国が協調して共栄共存しようとするグローバルな視点にあるのだと思います。しかし、守り人シリーズの世界がグッと広がったはいいけれど、これからどうなるんでしょうねぇ。(2003/6/21)

備考:2008年7月、新潮文庫化【Amazon

精霊の守り人
闇の守り人
夢の守り人
+虚空の旅人
神の守り人<来訪編>
神の守り人<帰還編>
蒼路の旅人
天と地の守り人(第1部)
天と地の守り人(第2部)
天と地の守り人(第3部)
流れ行く者[守り人短編集]

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夢の守り人/上橋菜穂子

[守り人シリーズ]夢の守り人
上橋菜穂子

My評価★★★★☆

カバー画・挿画:二木真希子
偕成社(2000年6月)
ISBN4-03-540230-3 【Amazon


新ヨゴ皇国へ戻って来たバルサは、追われていた男ユグノを助ける。旅の歌い手ユグノは、『リー・トゥ・ルエン<木霊の想い人>』だった。木霊の想い人とは、精霊に愛された人と言うか、精霊たちを視ることができ、語りかけることができる。ユグノーは20歳ぐらいに見えるけれど、実は52歳だった!

タンダは、原因不明で眠り続ける姪のカヤを見舞っていた。カヤは魂が体から離れて彷徨っているのだ。
呪術師トロガイはカヤが眠り続けている原因を、異界で人の夢を糧にして咲く<花>のためだと考える。花は受粉するために、多くの夢を必要としており、この世をはかなく思う者が花の夢に捉えられる。
カヤの他に一ノ妃も眠り続けていた。そしてチャダムも・・・。

タンダはカヤを救おうとするが、花番に捕らえられて<花守り>にされてしまう。花守りの役目は、<風>を探し出して連れ戻すこと。受粉が行なわれたときが、夢から目覚めるチャンスだった。
花番の様子がどうもおかしい。悪夢と化した花番に体を乗っ取られたタンダは、ユグノーを連れたバルサに襲いかかる!?

********************

シリーズ3作目。1作目の『精霊の守り人』を読んでいないと登場人物の関係を把握できないので注意。バルサの心境が変化していったりするので、刊行順に読んだほうがいいみたい。
タンダとバルサの関係に、微妙な変化が起こります。タンダとバルサ、そしてリアノの、愛するがゆえの強さと脆さ。また、チャダムの成長ぶりや、呪術師となる以前のトムカことトロガイの意外なロマンスもあり、変化に富んでいます。

前作までは女用心棒バルサが関わることによって国に変化が起こるのですが、今作は国政というものに関わりはなく、内的世界での話。
人の夢を糧にして生きる花。その花が見せる夢に、魂を囚われる人々。
岐路に立たされたときに、そのときは英断と思われる判断を下して結果としてそれが正しくても、もしも違う道を選んでいたら?と思わない人はいるでしょうか。失った人々や失われた時間を懐古しない人がいるでしょうか。花が見せるのはそんな夢。その夢はなんだか哀しくむなしい。
夢は夢でしかない。だからこそ魅せられるのかもしれません。でも生きるということは、痛みを痛みとして抱きながらも前に進むこと。なんて言うは易し・・・。

花は死の抱擁と生の喜びという両面性を持っています。
冥界に咲くかのような花が、生への歓喜にはじける。死の影に満ちた願望の世界から、五感と肌を揺さぶり体感できる生の世界へ     
めくるくめく歓喜の爆発、舞い上がる魂。それはまるで正と負の両極に働き、正から負へと、負から正へと回転するエネルギー。そんなエルネギーが、良くも悪くも人に内在するものなのだ、と言わんばかりのように思われてなりません。(2003/3/2)

備考:2007年12月、新潮文庫化【Amazon

精霊の守り人
闇の守り人
+夢の守り人
虚空の旅人
神の守り人<来訪編>
神の守り人<帰還編>
蒼路の旅人
天と地の守り人(第1部)
天と地の守り人(第2部)
天と地の守り人(第3部)
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闇の守り人/上橋菜穂子

[守り人シリーズ]闇の守り人
上橋菜穂子

My評価★★★★★

カバー画・挿画:二木真希子
偕成社(1999年2月)
ISBN4-03-540210-9 【Amazon


『精霊の守り人』の続編。今作はバルサの話なので、この巻から読んでも支障はないかと思われます。
カンバル王位を狙うログサムの陰謀で父親を殺されたバルサは、父の親友ジグロによって生まれ故郷のカンバル王国を脱出。そのためにジグロは汚名を着せられ、討手をかわしながら放浪の旅を続けてきた。

バルサは亡きジグロの汚名を晴らすべく、カンバル王国に戻ってきた。
人知れず国内入りしようとするが、洞窟で『山の王』の家来ヒョウル<闇の守り人>に襲われているカッサとジナの兄妹を助ける。
バルサは二人に自分と出会ったことを口止めするが、ジナが王しか採ることのできないルイシャ<青光石(せいこうせき)>を洞窟から持ち帰ったことで、事態は複雑に。

ジグロの末弟ユグロは、カンバル最強の短槍使いであり、カンバル王を守る<王の槍>を束ねていた。ユグロはバルサを捕らえて抹殺しようとする。一体なぜ?バルサはカンバル王国に渦巻く陰謀の匂いを嗅ぎ取る。

折りしも山の王との儀式が再開されようとしていた。山の王に貢物を供える変わりに、青光石を贈られ、それを糧食にして飢えを逃れる大事な儀式。
儀式では、最も優れた短槍使いだけが、山の王へと至る最後の扉を開けることができる。しかし、その前に短槍使いはヒョウル<闇の守り人>に認められなければならない。ヒョウル、そして山の王とは何者なのか?

********************

前作も面白かったけれど、今作はさらに面白かったです。
山の王は幻想的で美しく、予想していた姿とまったく違ったので意表を突かれた。ルイシャ<青光石>がそんなものだったとは!今後、何が出てくるのかわからないですね。

私が面白いと思ったのはバルサの活躍よりも、カンバル王国がどうやって成立しているか、氏族と牧童がどう関わっているのか。「山の王」と人との関係、真実が失われた儀式(知恵)がどうやって利用され歪められるのか。一国内に様々な種族が住み、それぞれが国にどう関わっているのかというところにあります。
牧童たち、<闇の守り人>ヒョウルのそれぞれに存在意義があるんです。ヒョウルとは何者なのか知ることが重要な鍵となり、すべてが密接に連なってこそのカンバル王国なのでしょう。

ユグロの言動は政治家のそれであり、彼のような人物の執る政治が国にどう影響するのか、という政治的な部分も興味深かったです。
個人あってこその国であり、国が個々人の生き方や考え方を規制すべきではないというようなニュアンスが感じられました。物語のなかだけではなく、実在する問題が提起されていると思います。(2003/2/22)

備考:2007年6月、新潮文庫化【Amazon

精霊の守り人
+闇の守り人
夢の守り人
虚空の旅人
神の守り人<来訪編>
神の守り人<帰還編>
蒼路の旅人
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