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ヴィティコー(1)/アーダルベルト・シュティフター

ヴィティコー 薔薇と剣の物語(1)
アーダルベルト・シュティフター

My評価★★★☆

訳・解説:谷口泰
書肆風の薔薇/白馬書房(1990年12月)[絶版]
ISBN4-89176-244-6 【Amazon


1138年、ドイツは皇帝コンラート三世が統治し、バイエルンはハインリヒ尊大公、オーストリアはレオポルト辺境伯、ボヘミアはソビエスラフ一世が大公位にあった時代。ドナウ川の峡谷から高地を抜けて、一人の若者が馬上姿があった。そは20歳の若き騎士ヴィティコー。
高地の森を散策していたヴィティコーは、髪に真紅のバラを挿した16歳の少女ベルタと出会う。ベルタは彼に問う。「あなたは何を望んでいるのか、自分で言うように正しい人なのか」と。

ヴィティコーは、幸福と正しい男にふさわしい運命を求めていた。そのためソビエスラフ一世に仕えるべく、プラーン(オーベルプラーン)の地からボヘミアへの旅の路上にあった。
彼はボヘミアで大公ソビエスラフ一世に仕えるが、1140年に大公が病に臥し、余命幾ばくもない。大公はヴィティコーに、プラハのヴィシュハラット宮殿で諸侯たちが集って新大公を選出する会議を開くが、会議の議事進行の正確な報告を持ち帰るようにと指示する。

ヴィティコーは持ち前の誠実さによって、会議を聴衆することに成功。大公はプシェミスル一族から選出されるが、新大公は2年前の諸侯会議で決められたソビエスラフ一世の嫡男ヴラティスラフではなく、寛大だった前大公ヴラディスラフの嫡男ヴラディスラフに満場一致で決定。
新大公はヴィティコーを傍らに置こうとするが、ヴィティコーは辞退してプラーンの森へ帰り、農夫たちと交じって暮らす。

新大公就任後、一時は平和な時間が流れた。だが、モラヴィアへと逃れていたソビエスラフ一世の嫡男ヴラティスラフが反旗を翻す。首謀者は諸侯の信望篤いナチュラトを中心とする豪族たちだった。豪族たちは新大公が平民たちを優遇して、豪族の権利を傷つけていると不満を募らせていた。
ヴラティスラフは豪族たちに、大公となったあかつきには彼らの利権を確約していた。しかしヴィティコーは欲得ずくでなく、自ら信ずるところによって新大公側に付く。4月20日、遂に合戦の火蓋が切って落とされた!

********************

全3巻のうちの第1巻。巻末に登場人物一覧、大公を輩出するプシュミスル一族の家系図、ボヘミア周辺図、シュティフターの年譜付き。原書は1865~1867年にかけて刊行。全巻を通じて、時代背景は1138年のヴィティコー20歳時から60歳半ばごろまで。

ジャンル分けするとしたら、いわゆる歴史小説。なぜ「いわゆる」かと言うと、解説によると各地の領主は実在した人物らしいが、ヴィティコーの祖先らしきモデルはいてもヴィティコーについての記録はない。ベルタも同様。つまりヴィテイコーとベルタは架空の人物と考えられる。
また12世紀を舞台としつつも、必ずしも歴史に忠実ではない。例えばプラハでの新大公選出会議の様子でも明らかだが、大公の選出方法と議事の進行絵の仕方は12世紀のやり方ではないと思う。極めて近代的なように感じられる。登場人物たちの考え方は12世紀風ではなく、近代人の思考・思想に近い。

物語は廃墟の城跡から始まる。廃墟はヴィティコーの建てた城だ。この城がどういう経緯で建てられるまでに至ったのか、ということがこの作品の大枠。
若き騎士ヴィティコーは、混乱する社会・政治の中で、高邁な人間であろうと正しい道を模索する。彼を通じて国家のあり方、政治のあり方に対する作者の信条が描かれている。
12世紀の舞台を借りた作者なりの、個人による社会観・政治観を描いた作品と受け取れる。イデオロギーではなくて、一個の人間として社会と政治に対してどう向き合うか、ということだと思う。

一定の緩やかなリズムで語られる文体は叙事詩を思わせる。戦闘シーンでも牧歌的な長閑なシーンでも、すべてが同じリズムによって等価値に語られるのだ。等価値に語られることで、読む側は特定の人物なり出来事なりに感情移入させられず、客観的視座に置かれる。観察者の立場に置かれると言おうか。
時代考証が曖昧で、おそらく作者の誤解によるか、意図的なものだろう思われる箇所がいくつもあった。風俗のほとんどが、作者シュティフター(1805-1868)の時代感覚で書いているとしか思えない。
作者の誤解もあるだろうが、好意的に考えると、意図的に19世紀風の風俗を取り入れているのかもしれないとも思われる。私には、作者は時代背景を検証する気はなかったのだと思われる。おそらく史実に忠実な「歴史小説」を書きたかったのではないのだろう。2巻へつづく。(2003/6/7)

+ヴィティコー(1巻)
ヴィティコー(2巻)
ヴィティコー(3巻)

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