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ヴィティコー(2)/アーダルベルト・シュティフター

ヴィティコー 薔薇と剣の物語(2)
アーダルベルト・シュティフター

My評価★★★☆

訳:谷口泰
書肆風の薔薇/白馬書房(1991年8月)[絶版]
ISBN4-89176-245-4 【Amazon


前巻の合戦(1142年春)で決着がつかなかったヴラディスラフ大公軍は、撤退してプラハで敵を迎え討つことにした。大公は、妻の異父兄・ドイツ国王にして神聖ローマ帝国皇帝のコンラート三世に、援軍を要請することを提案。
外国勢力の介入に難色を示す者もいたが、大公はヴィティコーら少数の護衛に守られてニュルンベルクへと出発。コンラート三世の援軍を得て、5月30日にニュルンベルクを出てプラハへ。
大公不在の間、プラハの総指揮は弟デェエポルトに委ねられた。士気を鼓舞する大公妃の傍らには、武具をまとったログノオの妹ディムートの姿があった。プラハの攻防戦は熾烈を極め、街や教会は放たれた火で焦土と化す。

プラハへの帰路でヴィティコーの一隊は、敵モラヴィア軍の故ソビエスラフ前大公の子息ヴラティスラフと遭遇。ヴラデティスラフは、モラヴィア軍の総領コンラート大公の物見の者を捕え、コンラート大公にドイツ軍の進軍を知らせまいとしていた。ドイツ軍が来たことを知れば、コンラート大公が退却するか降伏してしまうからだ。
ヴィティコーは、コンラート大公へ情報が伝わることで退却なり降伏するよう仕向ける。6月6日、ヴラディスラフ大公とドイツ軍はプラハに到着。だが、すでにモラヴィア軍が逃走した後だった。

プラーンへ戻ったヴィティコーは、司教職を退いたズィルヴェスターを訪問した。ある日、ヴィティコーの元に、粗末な身なりの男が現われた。ヴィティコーは男と従僕ライムントを伴にして、フラリと旅に出る。
4年ぶりにハンリヒ・フォン・ユーゲルバッハを訪ねたヴィティコーは、ハンリヒの娘ベルタと再会。二人は愛を確かめ合い将来を誓う。その後にパッサウの司教を訪ねて、同行した男の身柄を預ける。
それから、オーストリア辺境伯の未亡人アグネスの元にいる母親を訪ね、アグネスの息子で現辺境伯ハインリヒ大公に謁見。数日ウィーンに滞在した後、プラーンへ。

冬の間ヴィティコーは、雪が解けた来春には再び襲来するであろうモラヴィア軍に対して、備えをするよう森の人々を説いて、戦闘への準備を始めさせた。
雪が消え始めた三月の終わり、ヴラディスラフ大公の指示が届いた。再びヴィティコーが森の人々の指揮を執り、大公の元へ馳せ参じる。ヴィティコーは大公より、正式に森の人々の指揮官に任命され、大公旗を渡される。ヴラディスラフ大公軍は士気高く、モラヴィアへ進軍を開始する。

********************

史実に残る戦いを扱っているが、歴史ものでも戦記でもない。12世紀を舞台とした、作者の思想を著した作品だと思う。
1巻では大公位を争うプシェミスル一族の親子・兄弟間での、血で血を洗う抗争について語られた。この2巻では、ノルマンディー出でのタンクレト一族の子孫が、イタリアを侵略したことについて語られる。タンクレト一族も血族同士の争いを避けられなかった。プシェミスルと一族とタンクレト一族に共通するのは、欲望と血族同士の抗争だ。抗争は果てしなく続き、国土や人心を荒廃させる。

ヴラディスラフ大公と、ソビエスラフの子息ヴラディスラフが組んだモラヴィアのコンラート大公の戦いも、血族・同民族による諍いであるし、利権を得ようと欲望ゆえに反逆したことが原因だ。
プシェミスルと一族とタンクレト一族の話は、ヴラディスラフ大公軍とモラヴィア軍と似たような様相を示しており、戦いというものの果てしなさを不毛さを顕にしていると思う。

大公とヴィティコーは、血族・同民族による戦いを忌避し国土・人心の荒廃を防ぐべく、和平を結ぼうとするが叶わない。しかしヴィティコーは自身の判断で行動する。戦いをなくし平和な国にするためには、人はどう行動すればいいのか。そういったことに関する作者の思想を、体現した存在がヴィティコーだ。彼は常に公正な高徳の士であろうとし続ける。

大公がドイツの援軍を求めるべく協議したとき、他国へ軍事介入を依頼することに懸念を示したり、反対する者がいた。戦争終結後に異国の支配力が増し、終いには大公座が危うくなるからだ。膨大な戦費は国庫(国力)を疲弊させる。
その後のヴィティコーの行動で、彼も他国の軍事介入に賛成でなかったことがわかる。しかし援軍を要請するしか手は残されていない。そのため戦争を一時も早く終結させ、援軍要請期間を早く切り上げたいと願う。
対してドイツの諸侯は、帝国が侮られてはならん、帝国の威光を誇るべく、士気高く参戦する。ヴラディスラフとしては隣人に手を差し伸べてほしいだけだと思われるが、ドイツ側は帝国の威光を誇るべく参戦する。このギャップにこそ、プラハ側の懸念を表していると思う。

ヴィティコーはベルタと再会してお互いの気持ちを確認し合う。束の間の逢瀬だが、この作品の性質上、ロマンティックなシーンにはならない。全編を通じて感情の迸り、感情的な抑揚が抑えられているので、良くも悪くも劇的なシーンにならないのだ。

巻末に主要人名一覧と、家系図、地図(作中当時と、邦訳が刊行された時点での地図)がある。
同名人物が非常に多いので、人名一覧は多少ありがたい。地図は、主にモルダウ川に沿っていることが多い、ヴィティコーの行程を確認できる。プラーンなど森の町や村々が、大国と接する複雑な地理にあることがわかる。
また、研究者・ヘルベルト・ザイトラーによる「『ヴィティコー』     芸術敵構成に関する覚え書」が収録されている。この覚え書は全巻を通じて語られているので、3巻に収録したらよかったのに。興味深い箇所は多々あるのだが、私にはあまりに専門的すぎるので、読んで楽しいものではなかった。3巻へつづく。(2003/6/24)

ヴィティコー(1巻)
+ヴィティコー(2巻)
ヴィティコー(3巻)

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