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マラキア・タペストリ/ブライアン・W・オールディス

マラキア・タペストリ
ブライアン・W・オールディス

My評価★★★

訳:齋藤数衛,解説:大瀧啓裕
カバー画:山田維史
サンリオSF文庫(1986年4月)[廃版]
ISBN4-387-86013-8 【Amazon
原題:THE MALACIA TAPESTRY(1976)


過去でも未来でもなく、まったく違う進化を遂げたイタリア的な都市国家<マラキア>。ピザンチン帝国に属するマラキアを舞台としたSF。
貴族たちは狩りを催して宴に興じ、労働者階級の人々は貧困に喘ぐ、中世的な都市マラキア。魔術師は妖しげな儀式をし、有翼人が空を飛び、トカゲ男たち爬虫類は人類の従僕となり、好色な半人半獣サチュロスが跋扈する。
マラキアの創立者デスポルドが初めてこの地に立ったとき、大魔術師に一つの願い事をした。それはマラキアに変化が訪れないこと。最高会議はテクノロジーなどのあらゆる進歩を認めず、変化を徹底的に排斥するため革新主義者たちを謀殺。完全な階級社会を維持している。

軽薄でプレイボーイでデカダンスを気取る役者ペリアン・ド・キロロは、革新主義者ベントーソンの作る劇に雇われる。
ベントーソンは極秘の技術『ザーノスコープ』(水銀塩処理によって、ガラスのスライドに被写体を焼き付ける技法)を使って劇を作ろうとしていた。ベントーソンと彼の弟子ボニハッチは、変化や進歩のないことで人々は退廃し、貧しい階級の人々が貴族に搾取されるマラニアを変革しようとしていた。だがド・キロロ革新主義を信じず、変化のないことを恩恵だと考えて真面目に受け止めない。

ド・キロロは上流階級のアルミダが劇に出ることを知る。二人は恋に陥り、ド・キロロはアルミダと釣り合う地位と名誉を得るため、水素気球に乗り込んでトルコ陣営の上空を飛んだり、恐竜狩りに参加しようとする。
その一方でド・キロロは行く先々で色事を繰り返す。だがやがて悔い改め、本気でアルミダを愛するようになる。
ベントーソンは最高会議に捕まり、ザーノスコープは破壊される。そしてド・キロロはアルミダに心を傷つけられ、彼女もまた堕落した階級であることを知る。ド・キロロはマラキアにはびこる社会的要因を、その身をもってようやく理解する。

********************

悪魔の姿に似せて生み出された人類ホモ・サウルスが進化した地球。その都市国家マラキアは、通常は異端といわれる宗教観に基づいている。変化を禁じられて人々は倦んでいる、停滞したアンチ・ユートピア。
軽薄で色好き、物事を真摯に受け止めないで快楽を求めラクをしようとするド・キロロは、ドン・ファンの役回りだろう。
ド・キロロは可愛い娘にちょっかいを出しておいて、それがバレると誘ったのは向こうだとか、本気じゃなかったその場限りの遊び心だとか言い訳をする。また、貧しい仕立て屋の娘に近づいて、色目を使って高価な衣装を巻き上げようする、自信家だが浅はかな男。
とても共感できるタイプではないが、その彼がアルミダに恋をして様々な経験をする。やがて階級社会と人間性の問題、進歩・変化が禁止されたことによる退廃など、マラキアの真の姿を認識するようになるまでの話。

階級社会による物理的な弊害よりも、自分自身の本当の感情を理解していなかったり、コントロールできなかったり、平気で他人を精神的に傷つけたりとかいった情緒的な面が強調されている。自分自身を見失っているのだが、そのことに気づかない。
都市生活はそれなりに豊かで楽しいが、それは表面上のこと。人々は漠然とした不安を感じていて、それが狂騒に駆り立てているんじゃないのかな。
特殊な宗教観や魔術師、恐竜が跋扈する世界設定は、果たして本当に必要なのかと疑問に思う。書き方をちょっと変えるとファンタジーや文学作品になるんじゃないかなあ。
もっともオールディスが紡ぎ出す様々なイメージは、絢爛豪華なタペストリのイメージを醸し出している。タペストリを読み解くように、ド・キロロを通じて時間が静止したようなマラキアを鳥瞰できる。(2002/12/14)

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