スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ヴィティコー(3)/アーダルベルト・シュティフター

ヴィティコー 薔薇と剣の物語(3)
アーダルベルト・シュティフター

My評価★★★★

訳:谷口泰
書肆風の薔薇/白馬書房(1992年6月)[絶版]
ISBN4-89176-246-2 【Amazon


ヴラディスラフ大公軍とモラヴィア叛乱軍の戦いでは、大公軍が叛乱軍を敗走させた。ボヘミアとモラヴィアの地は平定された。ヴィティコーは褒賞を賜り、森の領主に任命される。いまや領主となったヴィティコーは館の建設に着手し、ベルタに求婚して承諾を得る。二人が出会ってから6年の歳月が経っていた。

秋、プラハで集会が開催された。大公、教皇イノツェンツより派遣された枢機卿をはじめ、司教たちや各地の領主らが列席。叛乱軍であるコンラート候やヴラティスラフらの異議申し立てと、彼らとの和解のために設けられた場だった。だがコンラート候やヴラティスラフら叛乱者は、一旦は和解を拒否。しかし信仰の許で和解に至る。
ヴィティコーはベルタと婚礼の儀式を行い、森の人々の祝福に包まれた。二人はプラハ宮殿へと参内し、大公と大公妃と、友として親交を深める。平和な時間が流れるが、再度コンラート候とウラティスラフが叛乱を起こし、大公の弟ディエポルトも加担していることが判明する。

ドイツでは若きフリードリッヒが、ドイツ国王(つまり神聖ローマ帝国皇帝)の座に就き、ドイツとポーランドを平定していた。フリードリッヒは親交篤いヴラディスラフ大公に、国王の王冠を授けた。
皇帝フリードリッヒはミラノの叛乱に対して、ヴラディスラフ国王ら諸国に派兵を要請。これに対してプラハの会議では賛否が分かれたが、派兵を決定。ヴィティコーら森の戦士を含むヴラディスラフ国王軍は、ミラノへと出兵する。
ミラノは一旦は平和裡に和解した。だが1162年に再びミラノが反旗を翻したため、皇帝軍とヴィティコーらヴラディスラフ国王軍はミラノへ出兵、鎮圧する。このイタリア遠征によって、各地に聖遺物や武器・宝石などの様々な品物が持ち帰られ、森の戦士たちにも分配される。

1184年、皇帝フリードリッヒはマインツで帝国議会を開催する。それは二度と見られないほど華々しく、後世まで語り継がれる盛大な祝典であった。祝典にはイングランド・フランス・イタリア・スペイン・ハンガリアなどの領主や騎士たちの姿があった。ヴィティコーとベルタ、ヴィティコーの友人たちの姿も。

********************

最終巻の今作ではヴィティコーの出世、ベルタとの婚礼、皇帝フリードリッヒの登場、ヴラディスラフ国王の誕生、イタリア遠征等これまでより華々しく展開。
前2巻に比べるといちばん物語を楽しめた。全巻を読んでの結論として、この作品は歴史小説の体裁をとってはいるが、歴史小説ではなく、シュティフターの思想を著した作品だと思う。その思想を端的に言えば「個々人を尊重し、和を以って尊しとする」ということだろうか。
例えばヴラディスラフと皇帝フリードリッヒは、謀反に対してまず和解を求める。特にヴラディスラフ大公は、幾度もの和解(対話)を試みる。結果的には戦になっても、常に和解を前提として諦めないという姿勢だ。対するコンラート候やミラノは、自分たちの利権を拡大しようと造反し敗れる。

また、ヴラディスラフはドイツの要請によるイタリアへの出兵を議題にかけるが、このときドイツ国王の僕(属国)になったのではなく、友人であるという態度を貫く。
そして並み居るボヘミアの領主や騎士も、ドイツ国王の僕ではなく、ヴラディスラフ国王の僕でもないと言い切り、出兵を強制せず自由意志に任せる。現実にはおおよそありえないだろう考え方をしている。

これらから、私には「国を司る者はかくあるべし」、人としてはヴィティコーのように「礼節と信義を重んじるべし」という作者の考えが浮かぶ。私利私欲のためではなく、信義と和を以ってことにあたり、支配/被支配の関係ではなく、共生の関係にあるべきだという作者の理想が伺える。
しかし私は、政教は分離されるべきだと思うし、作者には政治的観念が欠如していて、あくまでも理想論だと思う。だが、理想なくして国や人はどのように生きるのだろうか。

現代では戦争をせずに和平を結ぶことがいかに困難であり、且つ遵守されるかどうか疑念を抱いているかと思われる。強大な武力を誇る国家であっても、闇雲に武力を行使したりせず、双方を尊重して事を治めることができるのか疑問視しているのではないか。また、我欲に走った政治家の汚職は途切れることなく続き、経済は失調し続けており、政治に希望を見い出せないでいるのではないだろうか。つまるところ国の行く先に、理想を見い出せないでいるのではないかと思う。
この作品はシュティフターが希った理想の国と人のあり方だと思う。理想というものは漠然としたものではあるが、「理想」こそ現代の私たちが失ったものではないだろうか。これも一つの理想論ではあるけれど。(2003/7/17)

ヴィティコー(1巻)
ヴィティコー(2巻)
+ヴィティコー(3巻)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。