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大聖堂 果てしなき世界/ケン・フォレット

大聖堂 果てしなき世界
ケン・フォレット

My評価★★★★

訳:戸田裕之,解説(下巻):児玉清
ソフトバンク文庫(2009年3月,上中下巻)
上巻:ISBN978-4-7973-4623-7 【Amazon
中巻:ISBN978-4-7973-4624-4 【Amazon
下巻:ISBN978-4-7973-4625-1 【Amazon


果てしなき世界(1)果てしなき世界(2)果てしなき世界(3)
1327年、イングランド。騎士の息子マーティンと弟ラルフ、極貧の一家の娘グウェンダ、裕福な羊毛商人の娘カリスたちが知り合う。
マーティン兄弟の父サー・ジェラルドは、ギングズブリッジ大聖堂を建立したジャック・ビルダーの息子の末裔だった(ジャック・ビルダーはレディ・アリエナと結婚してシャーリング伯となった)。
マーティンとラルフ、カリス、グウェンダは森で、1人の騎士が兵士に襲われている現場を目撃。マーティンは、騎士トマスと秘密を分かち合うことになってしまった。その秘密は、退位させられたニドワード2世に関わりがあるらしい。トマスの秘密とは?そのトマスはギングズブリッジ修道院で、修道生活を送る。

サー・ジェラルドが破産したため、マーティンは大工の徒弟に、ラルフは騎士見習いになる。マーティンは才能豊であるがため、嫉妬した親方エルフリックに疎んじられ、破門されてしまう。彼にはいまや恋人となったカリスがいた。
カリスは、聖堂区ギルドのオルダーマンで毛商のエドマンドの娘。彼女の一族は、ジャック・ビルダーの継父トム・ビルダーの子孫。

カリスと父親のエドマンドは、衰退していく羊毛市場を再生しようとするが、修道院長アントニーが旧態的で保守的なため、何ら有効な手を打てないでいた。修道院長アントニーが亡くなり、カリスの従兄ゴドウィンが新修道院長に就任する。ゴドウィンは改革派の先鋒とみなされていたが、フタを開けてみるとガチガチの保守派だった。
カリスはキングズブリッジを自由都市にしようと奔走するが、利権を手放したくないゴドウィンの策略によって魔女裁判にかけられる!彼女が生き延びるためには、修道女となる以外に術はない。しかし、それはマーティンとの別れでもある。失意のマーティンはキングズブリッジを去り、フィレンツェへ。
キングズブリッジはゴドウィンと、彼の手先として働く副院長フィルモン(グウェンダの兄)の手中に。

一方、善悪の区別のないラルフは、非道な罪を犯しながらも、その都度窮地を逃れて出世してゆく。
土地持ちの農夫の息子ウルフリックは、両親を亡くして土地をも失ってしまう。ウルフリックはラルフの恨みを買っていた。グウェンダとウルフリックは夫婦になるが、ラルフに辛酸を舐めさせられ、2人の生活は苦難と忍耐の連続だった。

歳月が経ち、マーティンがペストに襲われたフィレンツェから戻ってきた。しかしギングズブリッジもペストに襲われ、町は壊滅状態に陥る。カリスは人々を救おうと施療に専念するが、ゴドウィンは・・・。
やがてカリスは自由都市の認可と、倒壊の危険性のある大聖堂の塔の建て直しに着手。カリスとマーティンはキングズブリッジの復興を賭けて、イングランド一の塔を建立しようとする。

********************

前作『大聖堂』から18年を経て、刊行された続編。続編だが、どちらから読んでも問題ない。舞台は前作から約200年後、1327年~1361年のキングズブリッジ。5人の男女の34年間を追う波乱万丈のエンターテインメント。
大雑把に言えば、マーティンとカリスVSゴドウィンとフィルキン、グウェンダとウルフリックVSラルフという感じ。
マーティンとカリスは改革派のゴドウィンが修道院長に叙任したことで期待を抱くが、実はゴドウィンはとんでもなく保守的で権力志向だった。ま、こういうタイプはいなくもないな。権力にしがみつこうとするから視野が狭くなるのか、視野が狭いから権力にしがみつくのか。
ともあれゴドウィンが修道院長で、伏兵のフィルキンがいる限り、カリスたちの計画は実現しない。カリスとマーティンは理想を抱いて無私で動いているのだが、結果的には権力闘争なわけだ。

果たして前作を超えられるのか!?
結論を言えば、面白いんだけれども、前作ほどではないなあ。
いまどき珍しく善悪ハッキリしているので、それが単純に感じられてもの足りなかった。中巻は悪役の独断場で善役が苦難を強いられるのだが、イマイチ求心力が感じられず、読むのがダラけてしまった。
グウェンダとラルフの決着方法も、私には納得できなかった。この物語で大切なのは、つまるところ人間性ではないのかな。なのにあの決着方法はないんじゃない。デビュー作の『針の眼』もだったけれど、ケン・フォレットには確たる思想がないのでは。だから安易な決着に走ってしまうんじゃないかな。

私が面白いと思った点は、「自由都市」請願について。教会に支配されているカリスたちは、経済を発展させるためギルドが裁量権を得ようと、王による支配を望む。この点が興味深かった。
中世の王政というものを考えたとき、一般的には王による専制政治というイメージがあると思う。しかし、王政はなぜ続いたのか。支配される側は、王による支配を望んでいなかったのか、という疑問が起こる。
この物語でカリスたちは、要するに自分たちに利のある権力(組織)に鞍替えしたわけだ。つまり、王政は一方的に押し付けられるものではないという意味になる。本書は物語であり、都市部と農村では状況は異なると思うが、王政はなぜ続いたのか、に対する一つの答えではないかと思う。(2010/4/27)

大聖堂

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