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白さと想像力 アメリカ文学の黒人像/トニ・モリスン

白さと想像力 アメリカ文学の黒人像
トニ・モリスン

My評価★★★★★

訳:大社淑子
朝日選書(1994年5月)
ISBN4-02-259599-X 【Amazon
原題:Playing in the Dark(1992)


トニ・モリスン(1931年生まれ)は、アフリカ系アメリカ人の女性作家。1988年にピュリツァー賞、1993年にノーベル文学賞を受賞。
本書はハーバード大学での3回にわたるウィリアム・E・マッシー・シニア記念講演中に提起された疑問と、モリスンが大学で担当した講義の資料が元になっているという。
モリスンは、ここでは説明する必要のない理由から、ごく最近まで、そして、作者がどの人種の人間であるかには関わりなく、事実上すべてのアメリカ小説の読者は白人として位置づけられてきた。(p15)という。
私はアメリカ文学の全てを知っているわけではないが、19世紀から20世紀半ばまでに書かれアメリカを代表するといわれ翻訳された小説は、確かに白人による白人のための文学であることは否めないと思う。問題はそうしたアメリカ文学の中でアフリカニストがどう描かれてきたか、人々にどう影響しているのかという点にある。

作者は、アメリカ文学の批評上において、アフリカニストまたはアフリカニズムについては空白になっているという。その理由の一つに、人種問題に対する歴史的な沈黙と回避の傾向や、人種論争への気後れを挙げている。さらにここが重要なのだが、
また、人種を無視するのは、優雅で寛大とさえ言えるリベラルな態度であり習慣だということになっているため、さらに複雑になってくる。人種に注目すれば、すでに悪評高い差異を認めることになるからだ。沈黙したままむりやり目に入っていないことにしてしまえば、黒人総体を支配的な文化の共同体のなかへ影もなくひっそりと組みこむことができる。この論理によって、生まれのよい人の本能は、見ないことにしよう(本文では傍点)と主張して、おとなの議論を妨げる。(p30)
これはアメリカや人種問題に限らず、例えば日本でも、身障者に対してこうした態度が見受けられることは少なくない。

アメリカの批評界において、アフリカニストの存在と影響についての文学論に、このまったくおざなりの空白が見られるようになったもう一つの理由は、人種差別主義を、犠牲者に対する結果という視点から考えようとするパターンである。そうしたパターンでは、つねに一方的に人種差別主義の政策や態度を、その対象とされるものに与える衝撃の視点から定義しようとする。(p31~32)
つまり被害者へのインパクトという視点で、人種問題が判断されるということだろう。
作者は、加害者である白人にとって、人種的偏見をすることにどのような意味があるのか、といった分析及び調査が欠如しているという。人種的偏見をすることによる白人のメリットは何なのか、ということだろう。そこから、なぜ人間が人間を差別するのか、という理由が見えてくるのではないかと思うのだが・・・。

私たちは、一般的に清純無垢や純粋といえば「白」を、闇や悪といえば「黒」を連想する。それはなぜか?白と黒という色自体には主体性はなく、あるものに付随した場合においてイメージを喚起させるという。色から想像されるイメージは、何を意味して、人々の意識にどう影響しているのか。
そして、アメリカ文学におけるアフリカ系アメリカ人の役割と意味とは何か。例として、アメリカを代表する作家の作品、特にヘミングウェイが挙げられている。私にはヘミングウェイの描く主人公などは、「これこそがアメリカ人だ」と言っているかのようで、良くも悪くもとてもアメリカ人らしいと感じる。しかし、この場合「アメリカ人」という言葉にアフリカニストは含まれていないという。
ヘミングウェイの考えるアメリカ人にアフリカニストは含まれないが、ある役割を担っているため、彼の小説はアフリカニストの存在に影響されているという。モリスンは、白人らしさをより表す場合、黒人の存在は欠かせないとし、その起因するところを述べている。

作者が言いたいのは、作家とその作品を非難することではない。決して反人種差別主義者の文学を唱えているのでもない。これまで批評家が語ってこなかった、新たな視点の導入である。
訳者があとがきでまとめているように、アメリカの総人口の16%を占める黒人が、アメリカ文学・アメリカ文化に影響を与えていないと考える方が不自然ではないだろうか。アフリカニスト及びアフリカニズムの影響を考えてこなかった批評こそが不自然だろう。

モリスンはアメリカ文学の批評界においてこれまで試みられなかったという、アメリカ文学におけるアフリカニズムという視点を提起しており、明快でわかりやすく解いている。しかし、それは建国以来、アメリカという国のアイデンティティに関わる問題でもあるため、実に根が深い。作者は文学上でのアフリカニストの存在に限定しているが、文学やアフリカ人という枠を超え、異人種間だけではなく同人種間にもよる差別問題への視点を提起していると思う。
大切なのは、当たり前に感じて疑問を抱かずにいたことを、新たな視点で見渡すこと。それこそが私にとって本書の最大の魅力だった。(2007/12/5)

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