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星のひとみ/サカリアス・トペリウス

星のひとみ
サカリアス・トペリウス

My評価★★★★☆

訳:万沢まき,岩波書店・世界児童文学集(1994年5月)
口絵・挿画:丸木俊
ISBN4-00-115714-4 【2003年版:Amazon
原題:Läsning för barn(1865)

目次:よいこどもたちに/スイレン/サンポー・ラッペリルの話/アリとお医者さま/星のひとみ/白いアネモネ/赤いくつ/夏至の夜の話/ウンダ・マリーナの足あと/古い小屋/霜の巨人/雲の中のかじやさん


世界名作童話の一つと言われる『星のひとみ』。これはフィンランドの作家サカリアス(ザカリアス)・トペリウス(1818-1898)の童話集。
当時のフィンランドはロシアの治世下。それ以前はスウェーデンの属領だったため、スウェーデン文化の影響を受けているそうです。私には文化の違いがわからないので、北欧的な作品世界としか言えないんだけど。

ある日フィンランドの森で、天使が一羽の小鳥に、子どもたちのために神様を敬うことや真心、勇気、正しさ、慎み、やさしさについて歌をうたいなさいと言いました。そのとき小鳥の歌ったうた、それがこの物語集なんです。

それぞれ独立したお話なので、どこから読んでも大丈夫。勇気や真心、慎みなど、人にとって正しい行いとは何かが、フィンランドの自然を背景に、愛らしく清らかに描かれています。
決して説教くさい物語ではないんですよ。確かに教訓的な部分はありますが、何よりも読んでいるだけで清心な気持ちになれる美しい物語集なんです。廃れることなく、いつまでも読み継がれてほしい本だと思います。

サンポー・ラッペリルの話
遠い北の国のラップ人夫婦に、サンポーという小さな男の子がいました。外国から来た紳士たちはサンポーのことを、ラッペリル(「かわいいラップ人の子ども」という意味)と呼ぶので、お母さんはラッペリル、お父さんはサンポーと呼ぶようになりました。
お母さんはまだ洗礼を受けていないサンポー・ラッペリルに、ラステカイスには山の王様が住んでいるので、決して行かないようにと言い聞かせていました。でもサンポー・ラッペリルは山の王様を見たくてたまりません。
待ち望んでいた日の出の兆しが表れたとき、サンポー・ラッベリルはこっそりラステカイスへ向かいます。その日はちょうど「太陽まつり」の日でした。サンポー・ラッペリルは、間近で山の王様を見ることができました。

********************

まだ幼い少年サンポー・ラッペリルが、好奇心から永遠の夜(冬)を願う山の王様を見るために出かけ、命からがら生還する創作民話。ひょっとするとサンポーや金の角のトナカイには、モデルとなった民間伝承があるのかな。
ラップ人は先住(少数)民族で、いまはサミ人またはサーミ人と呼ばれているそうです。彼らの慣習や伝承が基になってるのだと思われます。
訳注によると、彼らは洗礼を受けることを魔よけのように大切に考えていたのだそうです。現実にはどの程度大切に考えていたのかわかりませんが、作中では、洗礼をしているかいないかは、とても重要なことなのです。ある程度、ラップ人はそんな風に洗礼を考えていたのかもしれません。キリスト教が独特の形で受け止められていたのではないでしょうか。私にはお話そのものよりも、ラップ人の思想的背景の方が興味深かった。

星のひとみ
クリスマスの前日、ラップ人の夫婦は狼から逃げる途中、雪山に赤ん坊を落としてしまい、翌朝通りかかった百姓シモンに拾われました。赤ん坊には名前が付けられたのですが、星をちりばめたような瞳の美しさから「星のひとみ」と呼ばれるようになりました。
星のひとみを育てるようになったから、一家には運が向いてきました。
でも、星のひとみは壁を透したり、人の心の中まで何でも見ることができるんです。そのため、シモンのおかみさんは星のひとみを気味悪く思い、シモンの留守中に、星のひとみを床下の穴倉に閉じ込めてしまいます。

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おかみさんの気持ちはわかるんですよ。いつもいつも胸の内を見透かされてはたまらないですよね。常に善人でいれるといいだけれども、そうはいかないでしょ。
美しいお話ですが、私にはあまりにも理想的すぎるかな。しかし、手の届かない理想だからこそ、いつまでも美しいのかもしれませんね。
恵みをもたらすが、狡さや邪な考えを見抜く星のひとみ。どこにいても星を見ることができる少女・星のひとみは何者だったんでしょうね。

古い小屋
アントニアとマリイ姉妹は、両親と90歳近いおばおさんと一緒に、アルバノ荘という家に住んでいました。
ある日、姉妹はイチゴを摘みに出かけるのですが、嵐に遭ってしまい、いまでは使う人のない古い小屋に避難しました。そして壁の落書きに、おばあさんの名前を見つけました。その落書きは恋の詩だったのです。
夜になってマリイが眠れないでいると、17歳の少女だったときのおばおさんと、恋人の青年の幻を見ました。そして壁の隙間から指輪を見つけます。

********************

マリイが見たのは、おばあさんの70年前の出来事です。それは古い家の記憶なのでしょう。果たされることのなかった約束が70年の時を越え、おばあさんに届きます。
この作品集の中ではロマンチックですが、誰の上にも時は過ぎてゆくもの。ラストにはしんみりとした静けさを感じました。

雲の中のかじやさん
小さな男の子リッキはお父さんと、明朝に晴れたら島へ行って、ボートに乗せてもらう約束をしました。
絶対確実に晴れてほしいリッキは、雲の上にいる鍛冶屋ユッカさまに頼むことにしました。なぜならユッカさまの仕事場から天気が作られるからです。

********************

北欧の神話に登場する鍛冶屋と、いかも現代っ子らしい男の子。小さなリッキは大きなユッカさまを恐がらず、マッチで脅したりするのですが、その姿がユッカには面白おかしく、リッキとユッカの微妙に噛み合わない会話も楽しい。
「霜の巨人」のそうしたユーモラスな一篇で、「星のひとみ」などとは異なり、軽々としたテンポ、理屈抜きのナンセンスで愉快なお話。作風の広い作家なんですねえ。様々な作風がセレクトされた童話集でした。(2004/2/7)

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