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木/幸田文


幸田文

My評価★★★★★

解説:佐伯一麦
新潮文庫(1995年12月)
ISBN4-10-111607-5 【Amazon


幸田文(こうだ・あや,1904-1990)は幸田露伴の次女。娘は青木玉。ちなみに青木玉の娘が青木奈緒という文筆業の家系。
北は北海道のえぞ松から、南は屋久島の縄文杉まで、各地の樹木を歴訪。樹木の姿に生死の本質を捉え、そこに人間の生の諸相を視る。凛とした美しい文章で綴られた15篇の随筆。初出は1971年~1984年。

千年の古木「藤」では、優雅な花を<情緒>と言い表すが、直後、根の太さと形状を目にし、おどろおどろしさを感じる。花はどこまでも美しく儚い。対して根は、美醜を振り捨て貪欲なまでに生にしがみつく。一本の木の二つの相、それが著者を戸惑わせる。

「ひのき」では、アテ(瘤や歪み、曲がり)のある木は材として用をなさないため、製材業者に嫌われている。アテのあることは、悪い木で厄介者なのだ。
苦労して育った木が、厄介者で役立たず扱いされていることに納得できない著者は、何がどう厄介なのか実際に挽いてもらう。挽いてもらい目の当たりにしても、著者はこのアテをどうしたらいいかと途方にくれる。製材業者にとって、経済的価値のない木は厄介者でしかない。同じことは、田圃に一本だけ残された「松楠杉」でもいえる。
また、木肌の模様を着物に見立てるところは、いかにも和服を常用していた女性らしい。「たての木 よこの木」では、縦と横を別の視点で捉えてみせる。それは木の生と死の形。

私は、女性は男性よりも共感力に優れていると思っているのだが、本書を読むとやはりそう思わざるをえない。著者は五感と、女性らしい細やかさとしなやかな感性で、木々の運命に想いを馳せる。
木の運命を自分のものとするのだが、感情や感傷に走ることなく対峙する。木そのものから受ける恐れや辛さと、自身の内にある恐れからも目を逸らさない。そのしなやかさと強靭さ。
読みやすいのだが、とっくりと練られている。あくまで等身大であり続けるため、驕らないよう自らを戒めているかのように思われ、適度な抑制が効いている。
ともかく文章が素晴らしい。日本語は美しいんだなあ、ということを久しぶりに実感できた珠玉の随筆集。(2007/7/13)

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