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ヤンとカワカマス/町田純

ヤンとカワカマス
町田純

My評価★★★★

カバー画・挿画:町田純
未知谷(1997年10月)
ISBN4-915841-55-3 【Amazon


誰も住んでいない低い丘にヤンの暮らす小屋がある。そこから見えるのは草原と小さな森、地平線に銀色の川。
ある日、久しぶりに小屋の戸口をたたく音がしました。ヤンが出ると、そこにはカワカマスが立っていました。彼は遠くに見える川に住んでいるのだそうです。
ヤンとカワカマスはおしゃべりをして過ごします。カワカマスは帰り際に、明日の「名の日のお祝い」(自分の洗礼名と同じ名の聖人の日)にキノコのスープを作るのだけれど、足りない食材があるので貸して欲しいと言うのです。ヤンは快く貸してあげました。

翌日またカワカマスがやって来て、おしゃべりをして過ごし、明日の「名の日のお祝い」にキノコのスープを作るけれど、足りない食材を貸してほしいと言うのです。次の日の夕方も翌々日も。ヤンは大切にしているサモワールも貸してあげました。
次の日からカワカマスが来なくなったので、ヤンは会いに出かけることにしました。その夜に大雨が降り、カワカマスの小屋が流されてしまったのです。それから3ヶ月が経ち、春になってヤンは川へ出かけてみることにしました。

********************

オデッサ(黒海沿岸の都市。現在はウクライナ領)で生まれた猫のヤンは、革命期に中央アジアなどを経てイスタンブールへ亡命。この物語、初めは店で販売するために、作者が描いた絵葉書だったのだそうです。店はかつて渋谷にあり、都市計画で失われたカフェ『オデッサ・イスタンブール』。絵葉書から、やがてヤンの手記という形で、物語となったのだとか。

本書は、ヤンがまだ小さかった頃に暮らしていたロシアでの平和なひとときを描いた物語。シリーズ第1作目。
なんということのない日々が過ぎてゆく、とても坦々と。そんなお話です。でも、私は好きです。清々しく気持ちのいい読後感でした。しかし、誰もがそう思うわけではないかもしれませんねぇ、たぶん。

ヤンはいつも気持ちよく貸してあげます。カワカマスは借りてばかりいて、返す気配はありません。ヤンは人(猫)が良すぎる、カワカマスはずるい。ですがそう思うこと自体、自分の中にそんな感情があるということなんですよねえ。
二人の友だち関係は、ずるさやひけ目、騙し、駆け引き、損得勘定、嫉みといった感情とは無縁です。ある意味、それは物に縛られないということなのでしょう。要するに、あらゆる「欲」と無縁なのです。負の感情を介さずに、付き合うことのできる二人の姿が、正直言ってうらやましい。

二人は常に対等な関係です。互いに相手に何らかのひけ目や優越感を感じていたなら、対等な関係とは言えません。
それは自分自身を、もしくは相手を貶めることになります。ですが、二人はそんなことはしません。そういった発想がないのでしょうね。
自然体の二人。彼らのようにやっかいな感情を抱かずに他人と関係を築き、過ごせたらいいなあと思う。理想ですね、清らかな理想。

絵も素敵です。草原を雨風が吹き渡る様が、まるでその場に居て、風の匂い草の匂いを嗅ぎ、肌に感じるかのよう。広大な草原が、目の前に拡がっているかのようです。(2006/5/4)

草原の祝祭 ヤンのヨールカ

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