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渡り鳥と秋/ナギーブ・マフフーズ

渡り鳥と秋
ナギーブ・マフフーズ

My評価★★★

訳:青柳伸子
文芸社(2002年3月)
ISBN4-8355-3516-2 【Amazon


エジプト史はまったく知らないので、時代背景を訳者あとがきから引用すると、この小説は、一九五二年一月にスエズ運河で起きたイギリス人兵士によるエジプト人警察官の虐殺につづく有名なカイロ大火の描写で幕を開け、腐敗役人の粛清などエジプト革命初期の大事件をたどり、スエズ運河の国営化および一九五六年の英、仏、イスラエル三国による侵攻直後に幕を閉じる。(p242)
一般的にエジプト革命とは、民族自立を掲げた自由将校軍によるイギリスからの独立、国王の追放(王政廃止)と、政治家たち(政党)の一掃のことだとか。一掃は無血で行われたという。

物語は列強相手の交渉の舞台にも列席し、出世街道まっしぐらの上級官吏の青年イーサーが主人公。
政治家としてこれからというイーサーは革命によって、一転して粛清される側となり、政治の舞台から追放される。そして婚約を破棄される。彼は母親や親友、従兄弟らに仕事に就くよう勧められるが、プライドの高さゆえ頑なに拒む。
カイロを抜け出した彼は、アレキサンドリアでブラブラと過ごすうち、リーリーという娘と知り合うのだが・・・。結局は財産を目当てにして、裕福な女性と結婚する。だが、何をしても満たされず苛立ちが募るばかりだった。

********************

ナギーブ・マフフーズ(マハフーズとも。1911~2006年)は、エジプトのカイロ出身。1988年、エジプト初・アラブ圏初のノーベル文学賞を受賞。エジプトのみならずアラブを代表する作家。彼はアラビア語で著述したという。
本書はアラビア語の原典からではなく、英訳版からの翻訳。英語版のタイトルはAUTUMN QUAIL。アラビア語の原題を英訳はTHE BEGGAR,THE THIEF AND THE DOGS,AUTUMN QUAILとなっている。これって格言とか諺なのだろうか?
二重翻訳なので、どうしても元々の原文のニュアンスはどうだったのだろうかと思ってしまう。いかにも英語を訳したという印象を受けるんだなあ。

野心満々の上級官吏イーサーは、一転して政治の舞台から追放される。挫折を知らないエリートほど、いざというとき脆くて立ち直れないというが、彼もそういうタイプ。
これがまったく同情できない嫌な男なのだ。自己中心的でプライドが高く、常にプライドと保身を忘れない。自己憐憫と自己正当化によって、過去に固執してばかりで立ち直る努力をしない。国や民族に対するピジョンは持っていないんだな。こういう男は同性から見ても、まったく同情できない。
しかも女性に対する、あまりにも自己中心的で保身的な態度は、最低最悪。女性が読んだら、フェミニストでなくても怒りを覚えるだろう。

作者はイーサーを肯定も否定もせず、中立的(客観的)な立場で描いているように思う。おそらくイーサーのようなミドルクラスの官僚は大勢いたんじゃないのかな。革命までは、彼のような者たちがエジプトを動かしていたのだろう。そうした人々の倫理観が、イーサーを通じて描かれている。
しかし現実には、イーサーのように没落した人ばかりでなく、上手く立ち回った官僚や政治家もいたはず。そんな者たちも、中身はイーサーと似たりよったりなのでは。そのような者たちが国を動かしていたことを書いたところに、作者のスタンスが現れていると思う。
でも、この一冊だけではこの作家の思想や作風がわからないため、本作についてどうこう言うのは難しい。ほかの作品も読んでみたいと思う。(2007/5/7)

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