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コーネルの箱/チャールズ・シミック

コーネルの箱
チャールズ・シミック

My評価★★★★★

訳:柴田元幸
文藝春秋(2003年12月)
ISBN4-16-322420-3 【Amazon
原題:Dime-Store Alchemy(1992)


ジョゼフ・コーネル(1903-1972)はアメリカに生まれ育ち、ダダ・シュルレアリスムの影響を受け、映画フィルムのコラージュに始まり、アッサンブラージュ(日用品や廃材などの様々な物を寄せ集め(アッサンブレ)して作られた芸術表現形式。コラージュは平面的構成だが、アッサンブラージュは立面的構成)による箱の芸術家。
アメリカを代表する最も魅惑的な芸術家と言う人もいる。1968年にはニューヨーク・グッケンハイム美術館、1970年にはニューヨーク・メトロポリタン美術館など各地で個展を催した。

チャールズ・シミック(1938年生まれ)は、ユーゴスラビア(現セルビア・モンテネグロ)のベオグラードに生まれ、後にアメリカ渡り、1990年に詩集『世界は終わらない』(訳:柴田元幸)でピュリッツァー賞を受賞。現代アメリカを代表する詩人とのこと。

コーネルの箱(カラー図版多数)に、詩人のシミックが文章を寄せたのがこの本。
シミックの文章は、ときにコーネルの伝記を綴ったりコーネルの日記を引用したりして、その人柄から創作の源を探っている。またコーネルの箱に対する作品論でもあり、その作品からイメージされた物語でもあるが、全体的にシミックの散文詩というような印象がある。
シミックの文章は、コーネル作品のエクリチュール(この定義は様々だが)を探り、それをシミック自身の言葉で文章化した、彼流の言語によるコラージュなのだと思う。私が何を言いたいかというと、シミックの文章はたんなる作品解説や批評ではない、ということ。
例えば優れた絵本は、絵と文が互いを補完し合うのではなく、それぞれが完成された絵と文が組み合わされることで、相互に引き立て合い相乗以上の効果をもたらす。コーネル作品とシミックの文章は、そんな絵本のような関係に似ている。もっともコーネルの作品が先行してあり、シミックは作品の魅力を損なうことのないよう神経を砕いたのだろうけど。

シミックの言葉によるコーネルの作品は玩具とは夢見る者たちに仕掛けられた罠である。真の玩具は詩的なオブジェである。(p99)罠とはもちろん好意的な意味だ。また、秘密の家の秘密の部屋で、彼の秘密の玩具は、それ自身の静寂にじっと耳をすましている。(p102)と著している箇所もある。
「夢見る者たちに仕掛けられた罠」とは、巧い表現だと思う。「彼の秘密の玩具は、それ自身の静寂にじっと耳をすましている」とは、コーネルの作品を端的に表現していると思う(もっとも私は本書の図版でしか知らないのだが)。前者では鑑賞者は作品を通じて自らの内的世界へと至る。後者では作品そのものが内在している魅力を表しているのだと言えるんじゃないかな。

コーネルはキリコやルネ・マグリットの絵画を敬愛していたという。コーネルの作品は、キリコとマグリットの絵画がもつ静寂さに通じるものがあると思う。キリコのように、画面には露にされないけれども、何かが隠されているような秘密めいた雰囲気が感じられる。
また、コーネルはエミリー・ディキンソンの詩を愛していたという。ただし、二人は生涯一度も交流はなかったそうだ。私はディキンソンの詩は未読なので、コーネルの作品にディキンソンの詩が、どのような影響を与えているのかわからない。
コーネルは「青い半島に向かって」という作品をディキンソンに捧げている。この作品は、白くてガランとした部屋を模った箱に空の見える窓があるだけで、何もない部屋という感じだ。
空虚な空間を創り上げているように思えるが、私としては、コーネルの言うオプセッションが詰め込まれているように感じられてならない。そのオプセッションは、窓からの開放を願っているのだろうか?むしろ、距離を保ちながらも外界と通づるための窓のように思われる。

作品には一見すると、これは何を意味しているんだろうと首を捻りたくなるものもある。しかし、作品が何を意味しているかが大切なのではなく、そこから何を感じるか、どんな夢を見るかが肝要ではないだろうか。(2003/12/12)

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