葉書でドナルド・エヴァンズに/平出隆
葉書でドナルド・エヴァンズに
平出隆
My評価★★★★★
作品社(2001年4月)
ISBN4-87893-370-4 【Amazon】
平出隆(ひらいで・たかし,1950年生まれ)は福岡出身の詩人。1984年に芸術選奨新人賞、1994年の読売文学賞などを受賞。著書は、詩集の他に小説やエッセイなどがある。
本書は、著者が1985年から1988年にかけ、ドナルド・エヴァンズに宛てて186通の葉書を発信。その葉書を十余年後を経て集め復元(ただし40通が欠落)したものなのだそうだ。いわば(一方的な)書簡集なのだが、エッセイであり、紀行文でもあり、小説のようにも思われる。
ドナルド・エヴァンズ(1945−1977)は、アメリカ・ニュージャージー州出身の画家。架空の国々を創り、それらの国が発行する切手を描き蒐集。架空の切手だが、手がこんでいて目地まで表現されている上に、手紙や葉書に貼られ消印まで押されている。
こういう画家と作品があるとは知らなかった。ちなみにエヴァンズの作品集に、イタロ・カルヴィーノが書評を書いているという。
ここまで読んであれ?と思うだろう。そう、平出隆は故人に宛てて葉書を発信しているのだ。
なぜなら著者がエヴァンズの作品を知ったのは、1984年だから。しかし、生きている親しい友だちに語りかけているかのよう。
彼はエヴァンズの足跡を追い、エヴァンズの知人や友人たちを訪ね、アイオワシティからワシントン、ニューヨークなどアメリカを旅する。
しばらく東京での生活が続いた後、エヴァンズ夭逝した画家が暮らしていたアムステルダムへと向かう。さらにベルリン、ロンドン、そしてエヴァンズが恋人と行くはずだったのに嵐で行けなくなったランディ島へ。
それはエヴァンズを探す旅であり、著者自身が生まれ変わる旅でもあった。
あなたは生前、なににとらわれていたのでしょうか。やはりこの世界に、なのか。
それともこの世界の中に隠れた、少し違った、あるいはまったく別の世界に、なのでしょうか。
そしていま、あなたはどこにいるのでしょうか。(p83)
彼はエヴァンズの虚構、虚構ゆえの真実を経巡り、エヴァンズにとっての真実の世界に近づいてゆく。
いくつもの虚構から蜃気楼のように現れる真実。エヴァンズが世界の果てに見い出し、創造=想像した世界とは何なのだろう。しかもエヴァンズは彼の王国の王でなく、その国の切手を蒐集する一人なのだ。
本書の魅力は様々だが、なんといっても詩人による言葉の美しさ。詩人にとっての真実を伝えるべく、飾らない平易な言葉を遣いながら、玲瓏かつ端正な文章。言葉の澱を丁寧に洗い流したようで、とてもフレッシュに感じられる。
そして行間には、様々な想いがつまったかのようでありながらも、静謐さや清澄さが漂う。(2007/4/27)
さようなら、ドナルド。ぼくはいま旅立ったところだ。世界へ、世界から。
すべてはまるで違っていて、親しいドナルド、ぼくにもすべてがあたらしい。(p161)

平出隆
My評価★★★★★
作品社(2001年4月)
ISBN4-87893-370-4 【Amazon】
平出隆(ひらいで・たかし,1950年生まれ)は福岡出身の詩人。1984年に芸術選奨新人賞、1994年の読売文学賞などを受賞。著書は、詩集の他に小説やエッセイなどがある。
本書は、著者が1985年から1988年にかけ、ドナルド・エヴァンズに宛てて186通の葉書を発信。その葉書を十余年後を経て集め復元(ただし40通が欠落)したものなのだそうだ。いわば(一方的な)書簡集なのだが、エッセイであり、紀行文でもあり、小説のようにも思われる。
ドナルド・エヴァンズ(1945−1977)は、アメリカ・ニュージャージー州出身の画家。架空の国々を創り、それらの国が発行する切手を描き蒐集。架空の切手だが、手がこんでいて目地まで表現されている上に、手紙や葉書に貼られ消印まで押されている。
こういう画家と作品があるとは知らなかった。ちなみにエヴァンズの作品集に、イタロ・カルヴィーノが書評を書いているという。
ここまで読んであれ?と思うだろう。そう、平出隆は故人に宛てて葉書を発信しているのだ。
なぜなら著者がエヴァンズの作品を知ったのは、1984年だから。しかし、生きている親しい友だちに語りかけているかのよう。
彼はエヴァンズの足跡を追い、エヴァンズの知人や友人たちを訪ね、アイオワシティからワシントン、ニューヨークなどアメリカを旅する。
しばらく東京での生活が続いた後、エヴァンズ夭逝した画家が暮らしていたアムステルダムへと向かう。さらにベルリン、ロンドン、そしてエヴァンズが恋人と行くはずだったのに嵐で行けなくなったランディ島へ。
それはエヴァンズを探す旅であり、著者自身が生まれ変わる旅でもあった。
あなたは生前、なににとらわれていたのでしょうか。やはりこの世界に、なのか。
それともこの世界の中に隠れた、少し違った、あるいはまったく別の世界に、なのでしょうか。
そしていま、あなたはどこにいるのでしょうか。(p83)
彼はエヴァンズの虚構、虚構ゆえの真実を経巡り、エヴァンズにとっての真実の世界に近づいてゆく。
いくつもの虚構から蜃気楼のように現れる真実。エヴァンズが世界の果てに見い出し、創造=想像した世界とは何なのだろう。しかもエヴァンズは彼の王国の王でなく、その国の切手を蒐集する一人なのだ。
本書の魅力は様々だが、なんといっても詩人による言葉の美しさ。詩人にとっての真実を伝えるべく、飾らない平易な言葉を遣いながら、玲瓏かつ端正な文章。言葉の澱を丁寧に洗い流したようで、とてもフレッシュに感じられる。
そして行間には、様々な想いがつまったかのようでありながらも、静謐さや清澄さが漂う。(2007/4/27)
さようなら、ドナルド。ぼくはいま旅立ったところだ。世界へ、世界から。
すべてはまるで違っていて、親しいドナルド、ぼくにもすべてがあたらしい。(p161)

