スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

美術愛好家の陳列室/ジョルジュ・ペレック

美術愛好家の陳列室
ジョルジュ・ペレック

My評価★★★★

訳:塩塚秀一郎
水声社(2006年12月)
ISBN4-89176-556-9 【Amazon
原題:Un Cabinet d'amateur(1979)


1913年、米ペンシルヴァニア州ピッツバーグで、ドイツ系アメリカ人画家のハインリッヒ・キュルツの作品「美術愛好家の陳列室」が公開された。その絵はアメリカ中の話題を集めた。
キュルツが描いた一枚の絵の中には、ドラクロワやホルバイン、ヤン・ブリューゲル、ルーベンス、ニコラ・プッサン、ファン・ダイク、クラナハ、セザンヌの作品等々、百を超える古今の洋画が描かれていた。だが微妙に細部が変更されており、そんな差異が人々の好奇心をそそった。

キュルツの画面にはヘルマン・ラフケが描かれている。キュルツに絵を発注したヘルマン・ラフケは、ビール醸造業で成功した絵画コレクターだった。描かれた複製画はラフケのコレクションであり、ラフケの陳列室を再現したものと思われた。
ラフケの死後、彼の所持する絵画のカタログが作成され、絵はオークションにかけられる。
美術愛好家の陳列室を人々は観ることができなくなったため、キュルツが画面に複製した元の絵が注目され、次々に落札されるが・・・。

********************

ジョルジュ・ペレック(1936-1982)パリ生まれ。1965年、『事物』でルドノー賞を受賞して文壇デビュー。1986年、『人生 使用法』でメディシス賞を受賞。ペレックの作品は、主に言語遊戯的で実験的な作風らしい。
キュルツの画の中に複製された絵画についての説明が主体なのだが、ところどころ、おや?と思う箇所がある。元の絵の説明を、真に受けてはいけない。

例えば「コーネリウス・ファン・デル・ヘーストの陳列室」(別名コウネリウス・ファン・デル・ヘーストのギャラリー)に描かれて人物の中に、ポーランド王ラディスラス・シジスモンドの名が挙げられている。
元となっているコーネリウスの絵がどうなっているのかわからないが、歴史上ではポーランドにこんな名前の王は実在しないはず。反目したヴワディスワフ2世とジギスムントのことだと思うのだが。たぶん、ロッシーニの歌劇『シジスモンド』を意味しているのではないかな。
クレスピはジュゼッペ・マリア・クレスピのことだと思うのだけれど、その高弟のアリゴ・マッティって実在したの?聞いたことない名前なんだけど、どうなんだろう?
クラナハがヤーコプ・ツィーグラーという人物を描いた肖像画は実在する?クラナハはルターと親交があったので、ルターを訪ねたツィーグラーと出会う可能性はある。でもツィーグラーとは何者?この肖像画は実在するんだろうか?

どこまでが真実で、どこからが創作なのか。どれも真実そうな反面、どれもあやしく思えてしまうから厄介だ。疑いだすとキリがない。
作者の詐術を解き明かす楽しみのある作品なのだが、正直なところ見当のつかないところがほとんどで、まったく太刀打ちできなかった。

詐術を解き明かす楽しみとは別に、私にはこの作品が<絵画>というものの有り方と、その価値観を問いかけているように思われてならない。
例えばメーヘレンの作品群のように、オリジナルを凌駕したといわれる贋作がある。とするとオリジナル性とは何かという問題が生じる。
また、投機対象としての絵画の有り方という問題もある。
有名画家の絵であれば価値が高くなるのだが、投機対象としての絵画は、本来の美の鑑賞とはまったく異なる価値観であるため、鑑賞する目がなくても出来るだろう。しかも権威者によるお墨付きがあれば(作中、レスター・K・ノヴァクなる人物によって、オハイオ大学の美学雑誌にキュルツの絵に関する論考が発表される)、さらに価値は高まる。
人は権威に弱い。そこを巧妙に突かれると、落とし穴にはまりやすいということだ。(2009/4/10)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。