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森の小道・二人の姉妹/アーダルベルト・シュティフター

森の小道・二人の姉妹
シュティフター(アーダルベルト・シュティフター)

My評価★★★☆

訳・解説:山崎章甫
岩波文庫(2003年2月)
ISBN4-00-324224-6 【Amazon

収録作:森の小道/二人の姉妹


「森の小道」は山室静訳があるが(ただし絶版)、「二人の姉妹」は本邦初訳なのだそうだ。文庫カバーにシュティフター画『ワッツマン山を望むケーニッヒ湖』が使われている。しかもカラー!また、本文中にシュティフターによる風景画4葉、解説に1葉とかなりお徳。モノクロであってもシュティフターの絵を見れるのはうれしい。
他に若きシュティフターの肖像画(ダッフィンガー画)と、クリーフーバー画のミラノロ姉妹の図版を収録している。

両作とも身寄りがなく財産を相続した青年が主人公で、作者の経歴が表れているのだと思われる。生き方を模索する青年が理想の生活をする女性と出会う話なのだが、これは作者の願望ではないかな。訳者も解説で言っているが、大人向けの御伽噺といった感がある。
大切なのは男女がどういう出会いをして恋をするかではなく、どんな生活を理想としているかだろう。それはとても慎ましく、ともすれば見落とされがちで、傍から見れば取るに足りないことのように映るかもしれない。
けれども当事者たちは気高く精力に満ち、自分自身はもとより周囲の人々と共に、よりよい生き方をしようとする心構えと希望を忘れない。なによりも揺るぎない信念をもっている。

シュティフターの自然描写が美しい。その描写は科学者的な見方であり、感傷的な気分で書かれたものではない。人間と自然が共栄共存する考え方は、当時としてはかなり進歩的だったのではないだろうか。この自然描写と、その中で信念をもって生きる人々、そしてロマンティックな物語があいまって、清澄な雰囲気を醸し出している。

森の小道(DER WALDSTEIG.1844)
あらすじは山室静訳『森の小径』を参照。
訳は違うが再読ということもあってか、初読よりも好印象だった。嫌いだったわけではないが、初読では取り立てどこう言うほどではなかったのだ。
いまでもストーリーの流れそのものは、甘いハッピーエンド。私としてはどうということはないと思う。だが大切なのはストーリーではなく、ティブリウスとマリアの生活信条なのだ。
肝心なのはティブリウスよりマリアであり、ただで苺を分けてあげ、何反も美しい服地を贈られても、流行を追わずにこれまでと同じように裁断させる、彼女の考え方にある。それはささやかなことだけれど、こういったことが読むたびに清水のように沁みてくるのかもしれない。

山崎訳はとても明確で滑らか。ただ、それが逆にもの足りない。あまりに滑らかなので行間から漂うものが感じられなかった。それと文末に余韻がほしい。また、会話の部分が一本調子で堅ぐるしく感じられる。
原文がそうなのかもしれないが、台本を棒読みしているかのようなセリフ回しで、セリフを喋っている人がどんな気持ちで話しているのか、ニュアンスが伝わってこなかった。
この作品に関しては、私は山室訳の方が行間から森の雰囲気を想像させ、ソフトな雰囲気が内容にマッチしていると思う。

●二人の姉妹(ZWEI SCHWESTERN.1845)
たまたま行き会った初老の男フランツ・リカールと、ウィーンで再会した青年。二人は同じホテルで隣室だったことから親しくなる。二人で行き当りバッタリで劇場へ入ると、舞台ではヴァイオリンを弾く少女テレサ・ミラノロが、天才的な音楽を奏でた。
テレサの妹マリアも舞台で演奏する。姉妹の音楽を聴いたリカールは嗚咽するが、黙して理由を語らなかった。

青年は相続した財産で、農場を経営して裕福となった。そして数年後にイタリアへの旅に出る。
途中でフランツ・リカールと再会したいがため、彼の居所を探し当てる。リカールは人里離れた険しい聖グスタフ山で、妻と長女マリア、二女カミラ、使用人たちに囲まれて慎ましく暮らしていた。
青年は求められるままに滞在し、リカールが劇場で涙したわけを知る。かつてリカール一家は裕福だったが財産を失い、以後この山地に引きこもった。一家の苦しい生計を支えたのがマリアだった。

********************

主人公の青年よりマリアが魅力的。マリアは限られた土地を有効利用するために、熱心に研究して成果を挙げている。そして家族を支えて妹想い。
あまりにも出来すぎた女性だが、いちばん生命力に溢れている。ハッキリとしたハッピーエンドの「森の小道」より、ハッピーエンドを匂わせながらも、想像の余地を残したこの作品の方が私は好きだな。

他人の喜びを自分のものとし、モノに縛られず暮らす一家。血縁でなくても人々を結び付ける絆。そこでの暮らしぶりと家族及び隣人像は、作者が夢みた理想郷であろうが、現代にも通じるところがあり、人としての生き方を問いかけている。(2003/2/21)

森の小径

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