スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

イーゴリ遠征物語/作者不詳

イーゴリ遠征物語
作者不詳

My評価★★★★

訳・解説:木村彰一
岩波文庫(1983年4月)
ISBN4-00-326011-2 【Amazon
原題:СЛОВО О ПОЛКУ ИГОРЕВЕ(12世紀末)

目次:例言/オレークの孫 スヴャトスラーフの子 イーゴリの 遠征の物語/付録 イーゴリの遠征にかんする『イパーチイ年代記』の記事/注/解説/関連系図/関連地図


12世紀、キエフ大候国の統一的支配が弱まり、小国が乱立し、領土をめぐる内紛が絶えないロシア。
ポーロヴェツ(またはポロヴェツ。クマン人のこと。日本では韃靼人として知られる)軍が侵攻してロシア領土を荒らすのだが、内乱の絶えない大公国では統一的軍事戦略がとれない。
1185年4月、イーゴリ(1151-1202,キエフ大候国の祖の子孫)は己が武勲を高めるため(要するに名声を得るため)、一党を率いて討伐に向かう。だが、敗れて囚われの身となってしまう。しかし、イーゴリは機を得て脱走。無事に帰還したイーゴリを、皆は祝い讃える。

********************

12世紀末に成立したという、中世ロシアの物語。解説によると原文は散文で書かれているという。フランスの『ローラン(ロラン)の歌』が同時代に成立したのだそうで、ローランの歌のような英雄詩、武勲の歌といったところ。神々の物語ではなく、あくまでも人間的な物語。
ちなみに1185年というと、日本では壇ノ浦の戦いがあった年にあたる。鎌倉幕府が成立し、貴族政治から武家政治へと変遷する年である。
キエフ・ルーシ(ロシア)は、13世紀に<タタールのくびき>を迎えるわけだが、その前兆がすでに表れており、キエフが衰退していく理由がうかがえる。中世ロシア史を知る上で、とても興味深い作品。

当時の歴史的・宗教的背景がわからないので、注と解説がなければ理解するのが難しかった。ストーリーはわかるのだけれど、ちょっとした表現に宗教的背景が込められていたりするので、そこのところがね。キリスト教以前の土着信仰でもいうのかな、トーテム信仰とは違うのかなあ。
付録の『イパーチイ年代記』は、年代記におけるイーゴリ遠征の記述は、だいぶキリスト教的。比べると、違いがハッキリわかる。でも物語成立時のロシアでは、文中の表現が通じていただろうから、土着信仰がまだまだ通じていたのではないのかな。キリスト教へ移行する段階ではなかったのかと想像する。

この物語のもっとも面白いところは、作者の文学的意図と政治的見解が異なっている点にあるだろう。
作者は政治的には、功名心に逸って自軍を潰滅させたイーゴリを批判している。そして国の危機であるというのに、利害に走って対立するだけの諸侯に、一致団結せよと呼びかけている。
実際、諸侯が共同戦線に立てば、ポーロヴェツを撃退することは不可能ではなかったと思われる。しかし、作者は政治より詩魂を優先させている。

文中では過去の出来事として、内乱を治めるために他国の武力を借り、それが結果としてキエフを衰退させてしまったことが語られている。
歴史的にどんな国も他国の勢力を借りて内乱を治めようとすると、その国の支配ないし影響を受けざるを得ないことになる。一時的には平定されても、やがて不満を呼び、さらなる内乱を招いてしまう。そうして国が衰退してゆく。現代でも同じことが繰り返されている。
この物語を読んで、人類の進歩のなさを見せつけられているかのような気がした。12世紀という昔むかしの物語だけれど、反面教師として学ぶところがあるということは、いいのやら悪いのかやら。(2009/6/14)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

『我が先祖は神奈川県横須賀市三春町で小泉元首相の実家付近かい』

 トラックバックをさせて下さい・・・今日も暑いですねー?異常気象のせいか?暑いのに災害も多いですね~?。 共通するキーワード=「源頼朝:鎌倉幕府」を含むブログ記事:我が家の実家:祖母が住んでた神奈川県横須賀市三春町って所で小泉元首相の実家から歩いて3分程の所だったんです。まぁ夏休みの旅行にはよく出かけて海水浴を楽しんだモノでした。が「坂本龍馬の嫁:お龍の墓」があったり、歴史的に「戦国時代」も横須賀って深い歴史があったんですよね?三浦半島で勢力をふるっていた三浦一族は、桓武天皇の皇子の子孫の流れをくむ村岡為道がはじまりと言われている。江戸時代には三浦郡日蓮宗32か寺の本山として幕府より十万石を与えるほどの格式を持ってたそうだと言う。・・・トラックバックをさせて戴きとう思っております。<m(__)m>

共通性?

智太郎さん

>共通するキーワード=「源頼朝:鎌倉幕府」を含むブログ記事
ということですが、智太郎さんのブログを拝読しましたが話題の共通性を見つけられませんでした。
そもそも私の投稿記事をちゃんと読んでいただければわかるはずですが、12世紀のロシア文学についてであり、頼朝と鎌倉幕府とは何の関連性もありません。なぜトラックバックを希望するのか理解に苦しみます。
トラックバックを要望するのなら、まずは相手の文章に目を通すべきでしょう。そのぐらいの礼儀はほしいものです。
プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。