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トロイア戦争全史/松田治

トロイア戦争全史
松田治

My評価★★★★☆

講談社学術文庫(2008年9月)
ISBN978-4-06-159891-1 【Amazon


トロイア戦争全史ウェルギリウスの『アエネーイス』を読もうとしたけれども、ホメーロスの『イーリアス』が未読なので、内容がいまいちピンとこない(『アエネーイス』はトロイア方の英雄の一人アエネイアースが、トロイアを脱出した後の物語)。
まずは『イーリアス』を読まなければならないんだけれども、イーリアスは戦時中から物語が始まるため、戦争の発端については触れられていない。だいいち長くて読む気になれない。
トロイア戦争の発端から経緯を経て結末まで、加えて関連するギリシア文学作品を取り上げていて、読みやすく手っ取り早くわかる本はないものか(欲張り)。そして、見つけたのがこの本。

壮大で複雑に絡み合うギリシア神話及び文学。その中からトロイア戦争の発端から結末と、直接・間接に関わるエピソードを網羅して、物語仕立てにした本。
例えばエウリーピデースの『アウリスのイーピゲネイア』だが、これが戦争のどの時点で、どういうふうに関わって派生しているのか。トロイア戦争を軸として、各ギリシア文学作品の関わりもわかる優れもの。

著者は西洋古典学者・松田治(1940-2006)氏。氏の遺稿を元にして成った本なのだそうだ。
ゆえにトロイア戦争の物語だけを切り離して取り上げ、原典が読める人でも何冊も読まなければ知ることのできない戦争の原因から終末までを順次述べ、この戦争にまつわるあらゆる話題、エピソードを物語年代の順に記述し、「トロイア戦争について知りたければ、この一冊で十分だ」と言えるような本をつくりたい。(p4)と執筆の意図が記されている。
トロイア戦争は、トロイアの王子パリスが、スパルタの王妃ヘレネーに横恋慕したことが直接の原因だけれども、本書では時間を遡って、イエーソンと共に黄金の羊毛を探索したペーレウスと女神テティスの結婚から始まる。二人の子どもが、長じてトロイア戦争の英雄となるアキレウス。つまり、アキレウスの誕生に至る経緯から始まり、戦争を経て、トロイアが海中に没するまで。
典拠は主にホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』だが、後半にはウェルギリウスの『アエネーイス』やクィントゥス『トロイア戦記』などローマ時代の文学も入ってくる。ローマ文学を典拠とした部分は、生身の人間味を想起させるのでそれとわかる。

各エピソードを交えて発端から終末までを知ると、パリスの世代よりもずっと以前からギリシアとトロイアは衝突があるため、ヘレネーの一件はギリシア側に名目を与えたにすぎないと思われる。トロイア戦争とはギリシア都市国家連合軍によるアジア圏への進出、あるいは侵略だったのだろうと推測される。
戦争の経緯と各文学作品との関わりはわかった。この点に関しては、とても便利な本。けれども、この戦争がなぜ起こったのかということに関しては、わからない部分が多すぎる。
松田氏はトロイア戦争を人間の物語として捉えているが、「神々」や「英雄」を抜きにして、ギリシア諸都市国家側の戦略的な(要するに政治経済的な)観点に立って、トロイア戦争を考察した本はないだろうか。(2010/6/18)

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No title

こんにちは
とっても面白そうな本ですね.“イリアス”や“アエネーイス”とか大好きなので,興味津々です.
さっそく読んでみたいと思います.
これからも素敵な本を紹介してください.
では,また.

読みやすい本でした

こんばん。
Fridayさんのブログを拝見してますが、ギリシア文学をよく読まれてますよね。私はいまだ『イリアス』も『アエネーイス』も読みきってないです・・・。
この本は物語風に書かれていて、時系列で追っていので、トロイア戦争というものがよくわかりました。読みやすいので、私のようにギリシア文学の入門書としてはうってつけでした。
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