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アンジェロの朝/ルキノ・ヴィスコンティ

アンジェロの朝
ルキノ・ヴィスコンティ

My評価★★★☆

訳:吉田加南子,解説:ルネ・ド・セカティ
PARCO出版(1995年2月)[絶版]
ISBN4-89194-394-7 【Amazon
原題:Le Roman d'Angelo(1993)


11月の夕方、少年のアンジェロは母サビーナと共に馬車に揺られ、ローマのスタッレ(厩舎)通りにある自宅を目指していた。しかしアンジェロはチフスに罹り、2ヶ月間病院で療養する。やっと自宅に戻ることができたが、いまだ体力は快復しておらず、時折り膝が痛んだ。

アンジェロの脳裏に様々な想いが交錯する。
幼さななじみの少女アンナと兄フランコと、三人で納屋で遊んだ思い出。食料品屋のおかみのこと。愛情が感じられない父親と、言葉にすることがためらわれる母親への愛情。母親は、夫の散財によって苦しい家計を助けるため、病院の夜勤を始めた。
兄はミラノへ働きに出ており、父の友だちのタニーノが家に下宿していた。アンジェロにとって成熟した男タニーノの存在は、妙に居心地が悪かった。アンジェロはタニーノから、わが家の経済状態を知らされる。

アンジェロは週に2回薪を買いに行っていた。炭屋の青年トニーノは、元気で活発だが人づき合いをしない。だが彼は、アンジェロが来るのを楽しみにしていた。トニーノはアンジェロを見舞いに行く。それから二人は親しくなる。
トニーノからアンジェロは、父親とアニータという女性のことを聞く。その話の直後、アンジェロは一人の女性とすれ違う・・・。

********************

ルキノ・ヴィスコンティ・ディ・モドローネ(1906-1976)の未完及び生前未発表の小説。巻末に『ルキノ・ヴィスコンティ年譜』有り。
生前未発表だったこのタイプ原稿は、ローマのグラムシ研究所に保管されているとのこと。1993年に、イタリア語版とフランス語版が同時刊行。
解説によると、映画監督(1942年に監督してデビュー)になる以前、1930~37年の間に書かれたのではないかという。当時、ヴィスコンティは短篇映画を撮り始めていたのだそうだ。

未完なので判断し難いのだが、ストーリーといえるほどのものはなく、長篇小説のプロローグのような印象を受けた。
これだけでは小説としての良し悪しは判断できないが、すでに後年のヴィスコンティらしさが溢れている。短篇映画を撮り始めたころに書かれたらしいが、はやくもヴィスコンティの美学が確立されていることがわかる。
イノセントな少年、青年、成熟した男たちが登場する。そこには同性愛的な匂いがする。一方、少年と母サビーナとの愛情は、決して口にされることはないが、秘めやかであるがゆえに深い。
そして性的アピールを周囲に発散するかのような女性が登場する。この女性の性質は、サビーナと対極にあると思われる。

人物の動作の描写と、静止した状態で醸し出される雰囲気の描写は、ヴィスコンティの映画で見られる表現。また、室内や街路などの背景の描写はこと細かく書かれており、これが非常に映像を喚起させられる。
この作品は文字で読む映像といった感じがする。本来は映像で観るべきものだろう。ストーリーそのものよりも描写がとても興味深く、ヴィスコンティの創作の一端がうかがえる。(2006/4/14)

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