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雨・赤毛/モーム

雨・赤毛
モーム(ウィリアム・サマセット・モーム)

My評価★★★☆

訳・解説:中野好夫
新潮文庫(1994年2月改版)
ISBN4-10-213008-X 【Amazon

収録作:雨/赤毛/ホノルル


ウィリアム・サマセット・モーム(1874-1965,イギリス)の作品中、「南海もの」といわれる3篇。どれもラストにかけての数行が心にくい。人の心はうつろうもの。心の不確定さ、確実なことは何もないというかのようなラストばかり。


南洋のエイピアへ向かう客船で知り合ったマクフェイル博士夫妻と、宣教師のデイヴィッドソン夫妻は、雨の降るパゴパゴ島に足止めされる。彼らは出航許可の下りる日までホテルに泊まって待つことにするが、雨で外出もままならない。
ホテルには、船で見かけたミス・トムソンも泊まっていた。娼婦のミス・トムソンは男たちを連れ込み、蓄音機を鳴らして騒ぎ続ける。
デイヴィッドソンはミス・トムソンを改心させようとするが、彼女は聞き入れない。デイヴィッドソンは強引な手を打つが、彼の態度は次第に狂信的になっていく。

********************

デイヴィッドソンの高圧的で狂信的な態度は、伝道という名の洗脳でしかないだろう。ミセス・デイヴィッドソンの白人至上主義や、ミス・トムソンに対する偏見もやはり狂信的。
マクフェイル博士によるネブラスカの山々の連想で、ラストが暗示される。禁欲的な男と肉感的な女が出会ったらどうなるのか?その結果はある程度、当初から予測できるだろう。それでも、この短篇が傑作といわれるのも、強ち大袈裟ではないと思う。
ここではストーリーよりも、自然と人間の関係と、異文化の中に置かれるイギリス人という点に注目したい。幾日もパゴパゴに降り続く鬱陶しい雨。その雨が人々の精神に作用するかのよう。まるで雨が精神に変調を及ぼしたかのようだ。
肝心なのは、ここがイギリス人にとって異文化の地だということではないだろうか。異国の地が彼らの本性を曝け出させているように思われるからだ。もし本国で雨が降り続いたとしても、ここまで自我を剥き出しにしないのではないかな。

赤毛
島に暮らすニールソンは、自分の家を通りかかった船長を自宅へ招いて、スウェーデンから来て島に住み着いたことなどを話す。そしてアメリカ海軍から脱走したレッドという美しい男と、島の娘サリーの悲恋物語を聞かせる。二人の恋は悲しい結末を迎えたが、それゆえにニールソンとってはいつまでも美しい恋物語だった。

********************

語り終えて真実を知ったニールソンの心境が変化するが、その変化がとても自然。ニールソンの想像が破られたとき、美しいと信じていた彼の王国は消えて、初めて現実に眼を向ける。だが、目の前に突きつけられる現実は残酷ですらある。

ホノルル
典型的な西欧都市ホノルルにフラリと来た私は、知人に紹介されたウィンターという男に都市を案内してもらう。
私はウィンターにバトラー船長を紹介してもらう。
バトラー船長は群島で知り合った娘と恋に落ちた。船長と娘は船で暮らすが、原住民の航海士が横恋慕をする。船長は航海士を脅し付けたことで、話は終わったと信じていた。
だが直後に船長は原因不明の病気で寝付いてしまい、余命幾ばくもなくなる。そのとき娘がとった行動とは!?

********************

怪奇小説風の短篇。欧化された都市に潜む原始的な怪異と言ったところ。西洋と東洋が混在するホノルル。この都市を闊歩する日本人や中国人の描写が時代を表していて面白い。
前2篇に比べると完成度が劣る。最後に私とウィンターが娘のことを語るときに、ひと捻りあるのがせめてもの救いだろう。(2001/10/31)

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