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網野善彦 列島の歴史を語る/網野善彦

網野善彦 列島の歴史を語る
網野善彦

My評価★★★★★

編:藤沢・網野さんを囲む会
本の森(2005年11月)
ISBN4-00-938965-76-3 【Amazon

目次:第1章 日本の転換点としての中世 東国と西国/第2章 『無縁の原理』と現代 『日本中世の民衆像』と『無縁・公界・楽』を読んで/第3章 新たな視点から描く日本社会の歴史/第4章 日本人・日本国をめぐって 中世国家成立期の諸問題/第5章 時宗と一遍聖絵をめぐって/あとがき 藤沢・網野さんを囲む会 松延康隆


網野善彦列島の歴史を語る日本中世史の歴史家で【日本常民文化研究所】(1981年に神奈川大学に委譲された)のメンバー、故網野善彦(1928-2004)が、神奈川県藤沢市で十数年間に亘る講演を活字化したもの。本人の要望により、講演の一部は録音・活字化していないという。

私たちが義務教育で習う歴史は、いわゆる正史というものの断片でしかないのだが、それをもってなんとなく中世の社会をイメージできたように錯覚して、常識的な中世の知識として受け止めてしまう。しかし、正史とはそれを書き残せる立場と能力のある者が、自分たちの立脚点に基づいて著した、あるいは著させたものだと思う。
正史には現れない、中世の社会とはどんなふうだったのか。中世の一般の人々はどのような生活をしていたのかは、いまもって謎が多い。いや、本書を読むと謎だらけだ。そうしたところが刺激的で面白く、何度か読み返しているのだが飽きず、読むごとに考えさせられる。

網野氏は、室町時代に日本に非常に大きな転換点があり、室町期以前と以後とでは文化や社会の質が異なり、日本の伝統文化や現在につながる社会の基礎は、室町時代以降のものだという。貴族中心の社会から武士階級の台頭によって、それまでの文化及び宗教観(政治)がダイナミックな転換を迎えたのだろうと思う。
私が興味を惹かれるのは、鎌倉時代は武士階級が台頭し、農商業が発達した12世紀だという点にある。同時代の海外へ目を向けると、十字軍や地中海世界を中心とする12世紀ルネサンスという、世界的な規模での転換点に当たるからだ。室町時代は盛期ルネサンスに当たるだろう。

話を本書に戻すと、例えば日本列島は島国であるため、海によって外の世界と隔てられていると言われる。だが、中世では海を通じて交流が盛んだったと氏は語っている。
まあ日本のルーツは大陸から渡って来た人たちだし、文化も宗教も大陸から輸入したものだから、中世とはいっても寺社造営料唐船(鎌倉時代末期から南北町時代にかけて、寺社を造営する費用を賄うための公認貿易船)の以前に交流がなかったと考えるほうが不自然だろう。
中世といっても、当然ながら琉球王国も北海道も含まれない。また、史実では四国について語られた記録はほとんどないらしい。東北地方もどこまで含まれるのか疑問なのだが。
ようするに一口に日本といっても、実際は東と西や地方によって社会や文化が異なるのだが、そうした差異が従来の歴史観では見受けられなかったという。また、従来の歴史観では日本を農業中心社会と捉えんがためか、漁民の存在が欠けているという。従来の歴史観とは戦後の歴史観だろう。
ふと思ったのだが、戦中における海外の植民地化政策を経て、敗戦後の国内の農業政策といったものが、私たちの歴史観に影響していないのかな。

講演記録を起こしたものなので、話し口調そのままで読みやくわかりやすい。網野史学のエッセンスがぎゅっと詰まっているため、氏の歴史観を知る入門書としては絶好の本。
これまで当たり前に思っていた歴史観に疑問を投げかけられて、ハッとさせられる。物事は一方向から見ただけではわからないものだと、改めて思い起こされた。(2010/7/8)

追記:2014年4月、ちくま学芸文庫化 【Amazon

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