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しらみとり夫人/財産没収ほか/テネシー・ウィリアムズ

しらみとり夫人/財産没収ほか
テネシー・ウィリアムズ

My評価★★★★

訳:鳴海四郎・倉橋健,解説:一ノ瀬和夫
ハヤカワ演劇文庫(2007年1月)
ISBN978-4-15-140006-3 【Amazon

収録作:しらみとり夫人/風変わりなロマンス/ロング・グッドバイ/バーサよりよろしく/財産没収/話してくれ、雨のように・・・/東京のホテルのバーにて


『風変わりなロマンス』は四場、『東京のホテルのバーにて』は中篇、他はすべて一幕の戯曲集。
解説によると、『しらみとり夫人』『風変わりなロマンス』『ロング・グッドバイ』『バーサよりよろしく』『財産没収』は、1940~1942年にかけて完成されたという。
プロの劇作家としてのデビューが、1940年初演の『天使のたたかい』(後に『地獄のオルフェウス』と改題され、1957年初演)だそうだから、プロとしての初期作品群となるわけだ。初のブロードウェイ成功作『ガラスの動物園』は1943年頃、『欲望という名の電車』は1945年に書き始められたとのこと。
これら出世作より以前に書かれたということだが、すでに出世作へと連なる要素が表れており、長篇で結実したことがよくわかる。
本書のうち、最も初期のものは『ロング・グッドバイ』。『風変わりなロマンス』は1942年頃。『話してくれ、雨のように・・・』は1950年頃、『東京のホテルのバーにて』は1969年発表・初演。

テネシー・ウィリアムズの作品はまだ数冊しか読んでいないのだけれど、いまひとつ掴みにくい作家だなあと感じていた。作品によって受ける印象が多少異なるからだが、それよりも、戯曲としては人間像が複雑なために掴みきれないからだ。ウィリアムズ作品の人物造型は、劇作というよりも、小説に近いのではないかと思う。

この作品集では、いずれも大都会など世間に取り残された人々の孤独を描いており、人々はどこかしら病んでいる。その多くは過去と、その幻想に取りすがって生きようとする。その哀しみ、と同時に、それでも生きようとする強靭さ。作品によって表れ方は異なるが、これまでに読んだどの作品にもこうした面があるように思う。

解説を読んでわかったのだが、矛盾し錯綜する人間の複雑さや二面性こそが、ウィリアムズの劇作の本領なのだそうだ。また、「自己と現実世界を結ぶ回路を構築していこうとする」という。この点には、なるほどなあと思った。「自己と現実世界を結ぶ回路の構築」、これがウィリアムズ作品の核なのだろう。砕かれた理想と現実のギャップをどうやって取り持つか、ということだろうか。

解説が要点を抑えて語り尽くしちゃっているので、もはや何もいうことはない。何を書いても模倣になってしまう。それ以外で、この解説のように的確には書けないし、書けるわけがない。
印象を述べるとすれば、これまでなんとなく矛盾しているように感じていた人間像は、本書を読むと矛盾でないことがわかった。「複雑さ」というものが、どういう類のものかもわかった。
ウィリアムズの劇作を知るには、これまでに読んだ本のうち、この作品集がいちばん掴みやすかった。話が短いからストーリーに気を取られず、人物像に集中して読めるからかもしれない。ウィリアムズの目線と作風を知るのに格好の作品集だと思う。(2007/4/16)

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