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プロヴァンスの青い空と海/レディ・フォーテスキュー

プロヴァンスの青い空と海
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

My評価★★★★★

訳:尾島恵子
カバー画:B・サンダース,挿画:E・H・シェパード
読売新聞社(1994年2月)[絶版]
ISBN4-643-94011-5 【Amazon
原題:PERFUME FROM PROVENCE(1935)


レディ・フォーテスキュー(1888-1951,イギリス)は、牧師の三女として生まれ、家計を助けるため17歳のときに劇団の舞台に立つ。その後、王立図書館の英陸軍氏研究家ジョン・フォンテスキューと結婚。
結婚後もイリンテリアやドレスデザインをしていたがコラムニストに転身し、『モーニング・ポスト』紙の婦人ページの初代編集長を務める。
夫妻は30代のはじめに貴族の称号を授けられ、その機会に夫の病気静養のため南仏プロヴァンスへ移住。
本書はプロヴァンスへの移住直後から始まる、日々の出来事を綴った滋味溢れるエッセイ集。『クマのプーさん』で知られるE・H・シェパードの挿画も味わい深い一冊。

ブルーのローマン・ヒヤシンス、真紅のミニチュアサイズのチューリップ、モーブとスカーレットのアネモネ、芳香のある黄水仙、スイートピー、ナデシコなどが自生するプロヴァンス。
野菜が驚異的なスピードで育ち、ブドウなどの果実が豊富で、海に沈む夕陽が眺められ、ナイチンゲールが囀る。庭と畑仕事に精を出す夫妻。オリーブの収穫にブドウ摘み・・・。素朴な信仰を持つ人々。

プロヴァンスは魅力的な理想郷としか思えない。しかしそこで暮らすとなると話は異なる。物事は何もかもすべてプロヴァンス流で、家族・親族が絶対的に最優先され、商売は二の次でしか進まないのだった。郵便局や役所でも物事はスムーズに進まない。
しかし登場人物の誰もが個性的で実在感があり、ときには頑固だがユニークで憎めない。そんな人々を描けるのは、著者の人を見る目線が温かいからに違いない。
イギリス人のマダムにとって、プロヴァンスの人々は悠長でいい加減と映る。ときにはカッカするが、ちょっぴり抜け目ないけれど気取らない彼らを愛らしく思い、好奇心をもってプロヴァンス流の生活を楽しんでいる。

異国の地で、貴族とはいえ家計は決してラクではなく、病身の夫サー・フォーテスキューを支えながらの生活は、人に言えない苦労が絶えなかったろう。後に死別するのだが、苦労をそれと感じさせないのは、生きること、生きていること、今という時間など、すべてを慈しんでいるからではないかと想像される。彼女は慈しみの目でもって、プロヴァンスの生活や人々と接する。
そのためには度量の広さはもちろんだが、愛して受け入れるためには、やさしさだけではな「強さ」「しなやかさ」が必要だと思う。著者にはそういった芯の強さがある。けれども、そうした強さは表面にあらわれず、傍目にはわからない類のもの。穏やかで、しなやかで、たおやかな強さの持ち主なのだろう。

華やかな生活ではないけれど、生きることを愛し楽しもうとする著者の姿勢がじわじわと沁みてくる滋養溢れる本。ページを繰る手を急がずに、プロヴァンス流にのんぴりとくつろぎながら読みたい。すると、私たちが時間に追われ、日々のなかでいつの間にか忘れていたことを思い出させてくれる。(2002/8/31)

プロヴァンスの小さな家 サンセット・ハウス物語

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