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プロヴァンスの小さな家/レディ・フォーテスキュー

プロヴァンスの小さな家 サンセット・ハウス物語
レディ・フォーテスキュー

My評価★★★★★

訳:尾島恵子
カバー画:B・サンダース,扉絵:E・H・シェパード
読売新聞社(1994年7月)[絶版]
ISBN4-643-94051-4 【Amazon
原題:SUNSET HOUSE(1937)


イギリスから南仏プロヴァンスへ移住したレディ・フォーテスキュー(本名ウィニィブレッド・フォーテスキュー。1888-1951)によるエッセイ。『プロヴァンスの青い空と海』の続編。前作から読むのが順当だが、この巻から読んでも特に支障はないだろう。

夫に先立たれて未亡人となったマダム(レディ・フォーテスキュー)は、新しい環境で生きるべく、二人が暮らしたドメイン(田舎家)を離れる決意をする。一軒のコテッジ(小さな家)を目にした彼女は、シャトーの女主人マドモアゼルに相談して、その家を買い取ろうと交渉を開始する。
だが、物事がスムーズに進まないのがプロヴァンス。まず土地の問題があり、土地の一部を所有するフロリサール老人との交渉が難航する。マダムはフロリサール相手に四苦八苦。
次に間借りしているイタリア人一家に立ち退いてもらおうとするが、いざ工事が始まっても引っ越す気配がない。

やっと工事が始り、マダムと設計を担当したマドモアゼルは、シンプルに暮らして一息つくべく、美しい地中海の見える浜辺の小屋で数日を過ごす。マダムは村で不思議な青年ニコラを紹介される。だが大工からの手紙によって、小屋での生活を切り上げることに。

チャペルの工事が思うように進まない間、マダムとマドモアゼルは調度品を揃えるべく、漁村のサントロペに向う。
クリスマスが過ぎ、チャペルの祝福も無事に終わっった春。ドメインから荷物を移すのに一騒動が持ち上がる。引っ越しが終わったマダムは、小旅行するために留守番役を募集するが、なかなか人が決まらないなど、てんやわんや。
旅行から帰って来たマダムは、大金を手にして喜んでいたフロリサール老人の消息を知る。

********************

夫の思い出に縛られずに生きようと決断する著者。しかし夫の思い出話をされると涙ぐんでしまったりと、ときには脆さも見せる。
夫と暮らしたドメインを離れようとする姿は毅然としているのだが、総じて著者は、決して毅然としているのではなく自然体で、生きることを楽しんでいる。マダム(著者)もマドモアゼルも、いろんなことから楽しみや喜びを見出せる人たちだ。そういう生き方って、いいなと思う。

浜辺でのシンプルな暮らしのなかでマダムは、マドモアゼルに問いを発する。
「またフランス革命が起き、群集がシャトーに押しかけてきたとしたら、あなたはなにを持って逃げる?」
私の質問に彼女は微笑し、少し考えてから指を折りながら名前を挙げた。が、三本で止まってしまった。マドモアゼルが必要だと言った品物は思い出のある品とか財宝ではなかった。
私自身がリスト・アップしても似たようなものだった。(p92)

自分たちにとって何が大切なのか、キッパリと見極めているマダムとマドモアゼル。そんな生き方に憧れるが、どうすればそう言い切れるのだろう。

本書に書かれることのなかった出来事もあっただろう。でも、前向きに生きようとする力まない強さ。ときには怒ることもあるが、それを自分の内で解決でして笑いとばせる強さと賢さ、寛大さ。どうやったらそんな気持ちになれるのだろう。

今作の魅力的な、と言うか一癖も二癖もある人物はフロリサール老人。フロリサールとマダムの丁々発止は、本人たちは真剣なのだが、おかしみがある。正式契約の際にフロリサールは、マダムにキスしたいからと髭を剃りに行った。それを聞いたマダムの反応に笑ってしまった。
フロリサールは憎めないんだな。しかし、土地代を手にしたフロリサールの顛末は哀しい。あるに越したことはないが、お金ってなんだろうと思ってしまう。

ペリゴール爺さんは実にしたたかで、マダムは体よくあしらわれてしまう。でもペリゴール爺さんも憎めない。これはすべて著者の人柄によるのだろう。
ロシア人のストレポフ大佐ことセルジュ。セルジュは貴族なのに、妙にマメだったりする。セルジュや将軍とその妻といった、国を追われた元貴族たちの意外な逞しさが知れる。ロシア人の書いたロシア文学に登場する、いかにも貴族然としたイメージからほど遠くて、ちょっと意外な感じがした。
前作の登場人物エミリアは、今作ではドメインで留守番しているため後半から登場するが、彼女がいるとにぎやかになる。ドメインで庭師をしていたイレールもチラリと登場して、性格は相変わらずだが、老いたことがわかってしんみり。

風光明媚なプロヴァンスの美しさと、人々の暮らしぶりに、和やかな気分になれる本。(2002/11/21)

プロヴァンスの青い空と海

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