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わが町/ソーントン・ワイルダー

わが町
ソーントン・ワイルダー

My評価★★★★☆

訳:鳴海四郎,あとがき:タッパン・ワイルダー,解題:水谷八也,解説:別役実
ハヤカワ演劇文庫(2007年5月)
ISBN978-4-15-140009-4 【Amazon
原題:Our Town(1938)


1938年にピュリッツァー賞を受賞したアメリカ演劇を代表する戯曲の一つ。3幕から成る。
1901年5月7日早朝、ニューハンプシャー州のグローヴァーズ・コーナーズ。お産のため夜中に呼び出されたギブズ医師が帰宅した。ギブズ夫人は夫を気遣いながら、エミリーとウィリーに朝食を摂らせ学校へ送り出す。
隣家のウェブ氏は、地方新聞の発行人兼編集長。家族は夫人と、もうじき17歳になるジョージ、レベッカ。ジョージは野球に夢中。ジョージは部屋の窓越しに、エミリーから勉強でわからないところを教わる。どこにでもあるような平凡な小さな町に暮らす人々のありふれた一日。

3年後、ハイスクールの卒業から間もない頃、多くの若者たちが結婚する時期、ジョージとエミリーも結婚式を挙げる。式の当日、二人とも落ちつかず不安を隠せないが、両家の親は感に堪えない。
二人が急接近したのは、二人ともクラス委員に選ばれたことがキッカケだった。学校帰り、ジョージは最近よそよそしくなったエミリーに理由を問う。そして二人はお互いの気持ちを確認したのだった。若い二人は実家を去り、ジョージの親戚の農場で働き、将来は農場を継ぐことになっている。
月日は流れ、1913年夏。9年間の幸せな夫婦生活を送った後、エミリーは・・・。

********************

ソーントン・ワイルダー(1897-1975,米ウィスコンシン州生まれ)はアメリカを代表する劇作家・小説家。1927年に小説、1938年に本作、1943年に戯曲でピュリッツァー賞を3度受賞した唯一の作家。
本作は21世紀の現在でも上演されており、アマチュアを含めれば、アメリカの戯曲の中でもっとも上演回数が多いのだそうだ。アメリカ以外、ヨーロッパや日本でも人気演目だという。
アメリカ演劇の頂点に輝く4つの戯曲のうちの一つで、『わが町』が世界的にもっとも広く親しまれている、という批評家もいるとか。ただし、同時にまたもっとも広く誤解されている作品である(p190)と続けられている。

ありふれた日常生活。そんな日常の中にかけがえのないものがあると、誰もが気づかないまま時は過ぎてゆく。生きている間はその価値に気づくことはない。本当に大切なものは目には見えず、人が活動を続けている間は意識に遡上しにくいのだろう。本当にかけがえのないものとは何か、その価値を問う作品。
戯曲についてはよくわからないのだけれど、これはすごい作品じゃないのかな。普遍性があるからだ。アメリカ及び海外で親しまれているということは想像に難くない。

別役氏はここには、「特殊化すればするほど普遍化する」という法則が働いている。奇妙な話だが、世界の片隅で発生した小さな出来事は、「どこにでもあるよ」ということでどこにでもあることを伝えられるのではなく、「ここにしかないよ」ということで、逆にどこにでもあることを伝えられるのだ、ということである。(p205)と述べている。
また、同氏による演劇における「構造外体験」と「構造内体験」は興味深かった。こういう言葉があるとは知らなかった。

年代や場所が事細かく記されているのだが、そのことで逆に時と場所(地域)が限定されず普遍性を有している。これが劇作が海外でも上演しやすい理由の一つではないだろうか。さらにほとんど舞台装置を要しないため、アマチュアでも上演しやすいと思われる。
日本人がこれを舞台に揚げたら甘ったるくなるだろうな。日本人は情感的なのを好むから。容易にお涙頂戴式の舞台に陥りやすく、そうした舞台が多いのではないだろうか。
ソーントンは手紙で、意図するところとは異なる女性観客の反応について触れている。私は作者の意図は共感や感動ではないと思う。感情に流されると、本来視えるものも視えなくなってしまう。そんな単純な作品ではないだろう。

粗筋を書くと非常に単純な話になってしまうのだが、私が読んだことのある戯曲の中では、この作品は高度。スルッと読めてしまう文章の中にも、深いものを秘めている。奇妙なことに、個人を描くことで、個を超えたところに誘ってくれるのである。
そして、舞台上におけるワイルダーによる仕掛け(視点や意識の流れと言おうか)が凝らされているように感じられる。その仕掛けが、共感や感動ではなく、もっと理性的で透徹した視点を求めているように思う。(2007/6/17)

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