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赤い小馬/ジョン・スタインベック

赤い小馬
スタインベック(ジョン・スタインベック)

My評価★★★★

訳・解説:西川正身
新潮文庫(1988年6月改版)
ISBN4-10-210107-1 【Amazon
原題:The Red Pony

収録作:贈り物/大連峰/約束/開拓者


作者の故郷カリフォルニア州サリーナス谷の農場(牧場)を舞台に、10歳になったばかりのジョーディ少年の成長を描いた短編集。
全編を通じて主人公のジョーディ少年を中心に、厳格な父カール・ティフリン、小言はいうがやさしい母ミセス・ティフリン、馬に関してはスペシャリストの雇い人ビリー・バックらが登場するので、連作短編と言えるだろう。

解説によると、1939年に「贈り物」「大連峰」「約束」の3編を、『The Red Pony』(赤い小馬)と題して単行本化。この3篇は翌年、改めて短編集『The Long Valley』(長い谷間)に収録されたという。
『長い谷間』の中に「The Leader of the People」(民衆を導き行く者)という短編があり、それを本書では「開拓者」と題している。私としては原題の直訳の方が内容に合っていて、作者の意図が伝わるんじゃないかと思うのだが。

読みながら腑に落ちなかったので原題を見たら、てっきり仔馬だとばかり思っていたのが、実はポニー、ポニーの仔馬とは意外だった。小馬=ポニーと、即連想できる人がいるのかねえ。
私はクォーターホース(アメリカ開拓期に交配・改良されて生まれた品種。ウエスタン乗馬に適している)あたりの仔馬だろうと思っていたんだけど。この違いは大きい。
ポニーは放牧の作業用としては不向きなので、通常は子どもの乗用馬とされる。なのではじめからポニーと訳されていれば、父親が作業用としてではなく、ジョーディのためだけに買ってきたことがわかったのだ。普段は厳格な父親がジョーディのことを想っているのかが、もっとスンナリ伝わってきたのに。

安かったとはいえ当時、馬は財産的価値を持っていたので、ポニーを買う余裕があるということは、ティフリン家は裕福とは言えないかもしれないが、貧しくはない。経済的にある程度は余裕のある家庭だろう。
こうしたことを踏まえると、ポニーと訳すか訳さないかで、全体のイメージが微妙に違ってくるんだよなあ。初版が1955(昭和30)年だから、当時はポニーという言葉が一般的でなかったろうから仕方ないのだけれど。

自伝的作品だそうだから、時代背景は20世紀初頭かもしれない。いまだ電気は通っていない。
私たち現代人には、大自然とともに生き、人智を超えた自然の営みに時に抗い時に共存するということは、もはや未知の世界であって憧れでさえあるかもしれない。
けれども医療の普及していない時代では、生半可のことでは生き延びられず、理屈では割り切れない突発的な出来事も起こる。それをどう受け止めるのか。

ジョーディは馬の死と誕生(主に死)を目の当たりし、目線を内面的な世界から外部へと向けてゆく。死という避けることの出来ない圧倒的な現実に直面して、そこから生へと目を転じ、他者への「いたわり」といった気持ちを育んでゆく。
ジョーディは厳しい現実を直視するが、全体として息詰まるような圧迫感や緊迫感といった感じはなく、わりにサラリとしていると同時に力強さもある。読後は哀しいようなせつないような気持ちに襲われたが、ジョーディが成長とともに開花してゆく、彼のやさしさと逞しさに安堵した。
薄い本だが中身がぎゅっと詰っており、全編に詩情性があって惹きつけられる短編集だった。(2006/2/17)

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