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ちいさなおうさま/ハンヌ・タイナ

ちいさなおうさま
文:ライヤ・シエッキネン,絵:ハンヌ・タイナ

My評価★★★★★

訳:坂井玲子
冨山房(1989年11月)[絶版]
ISBN4-572-00303-3 【Amazon
原題:HERRA KUNINGAS(1986)


海の浜辺に一軒ポツンと建ったお城に、白いヒゲの小さな王様が一人で住んでいました。ガラスの丸屋根の部屋は、お日さまがあたると美しく輝きます。
お城の部屋お庭はどこも美しく、たくさんの本があり、レコードが美しい調べを奏でるのですが、ひとりぼっちの王様はさびしくてたまりません。家来の一人もいないのですから。

ある夜、お城に大きなネコが迷い込んできました。ネコは「トラ」と名乗りました。早速王様はトラを家来にします。ネコがお腹が空いたと言うと食べ物を持ってきてやり、眠いと言えば羽枕を持ってきて、寒いと言えば暖炉に火をいれてやりました。
しばらくするとお城の周りにどんどん家が建って町ができました。王様はたくさん家来ができたと大喜び。でも家来たちが突然どこかへ行ってしまうのではないかと心配で。そこで庭のリンゴを配ったり、みんなをパーティーに招いて歓待します。

********************

なんといっても絵がいい。丸屋根のお城や波止場など、異国風(ロシア風なのかな?)の造型美と色彩。繊細なガラスのモザイクのような、静謐で繊細な美しさ漂うフィンランドの絵本。
おそらく水彩でしょうか。全体に寒色を多様していますが冷たい感じはせず、透明感としっとりとしたムードがあります。触れると壊れてしまいそうに思うほど、とても繊細。
なかでも、桟橋に立つ王様の後ろ姿が描かれた見開きが特に好きです。スリガラスに描いたかのような海面、桟橋と支柱の影、帆掛け舟のシルエットなどとても美しく、王様のさびしさが伝わってくるよう。
文章もわりに淡々と語られ、デリケートな内容を慎ましくわかりやすく表現していると思います。

美しいお城や庭、たくさんの本と音楽があっても、王様は満たされません。それは王様がひとりぼっちでさびしいから。周りに人が住んでいないので、話相手がまったくいないのです。
どんなに美しいものに囲まれていても、物質的に恵まれていても、ひとりぼっちでは幸せになれません。
王様は迷い込んで住みついたネコを家来にするのですが、「家来」とはどういうものなのか、知らないんですね。だからまるで王様がネコの家来になったかのように、甲斐甲斐しく世話をするのですが、その姿に滑稽さは微塵もなく、微笑ましさがあるんです。

やがて町ができて大勢の人々が住みつき、王様のさびしさは消えました。それは王様がみんなに好かれたからです。威張っていたらみんなに嫌われていたことでしょう。
なぜ王様が好かれたかというと、押し付けがましくなく、みんなを楽しませてあげようとしたからではないでしょうか。みんなの楽しむ姿をみることが、王様にとって何よりもうれしいことなのです。
献身的で謙虚な王様の姿を通じて、人として何が幸せとなり喜びなのか、を描いた絵本ではないでしょうか。理屈はともかくとして、絵がとても素敵です。(2003/4/30)

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