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ヴェネチア風物誌/アンリ・ド・レニエ

ヴェネチア風物誌
アンリ・ド・レニエ

My評価★★★★★

訳:窪田般彌,挿画:マクシム・ドトマ
王国社(1992年1月)
ISBN4-900456-25-X 【Amazon

目次:扉の詩/朱ぬりのインクスタンド/幻覚/鍵/風変わりな庭園/肖像/ツァッテーレ河岸/象/茶碗/文具箱/渡し場/美しい貴婦人/ベッチーナの気まぐれ/喜劇/策略/売邸/画家/一寸法師/宮殿/屋形/冬/病後恢復期/ブレンタ河/仮面/ヴェネチア短章


「黄昏の詩人」「憂愁にして豪奢な詩人」と評される、フランスの詩人・作家アンリ・ド・レニエ(1864-1936)の掌編集。原書は1906年刊。

インクスタンド、鍵、茶碗、文具箱など物にまつわるタイトルが多い。レニエはこれらの物を透して、彼方の都ヴェネチアへと想いを馳せている。それもレニエ存命の時代より遡る「アドリア海の女王」と讃称えられた18世紀往時、いわゆるヴェネチア斜陽の時代。
レニエはインクスタンドや貴婦人の肖像を透して、彼の庭園ヴェネチアへと誘う。そしてピエトロ・ロンギの絵に魅入り不可思議な古物商の店頭で立ち止まり、シニョーラに挨拶し、教会から教会へと小路(カッレ)を彷徨う。
あるときは粗野だが朴訥としたゴンドニエーレが操る舟に揺られて潟(ラグーナ)へ乗り出し、薔薇色の夕霧に抱かれた宮殿を訪う。そうして在りし日のヴェネチアの街と人々を視る。

レニエは彼自身の記憶にあるヴェネチアを漉して澱をすくい純化させて、「おそらくはこうであったろう」過去の姿を再現している。イメージを喚起させる様は、エッセイでも紀行文でもなく詩としか言いようがない。まさに<幻視者>というべき詩人の業だろう。
白昼夢のヴェネチアは、ウォーター・マークか逃げ水のように捉えどころがなく儚い。儚いゆえに美しく、庭園から帰還した読後は心地よい午睡から覚めたかのよう。だが、捉えるのは難しい。美しいものを捉え損なって残念だが、捉え損なったことで安堵するのか溜息がでてしまう。レニエの庭園は書物のなかで誰に侵されることも色褪せることもなく、その幻想性をいつまでもいつまでも保ち続けるのだろう。

この本を手にする前に、ヴェネチアの地理及びルネサンス時代の風俗に関する予備知識が多少必要かもしれない。予備知識がなくても読むのに支障はないだろうが、文章の魅力を充分に堪能できないのでは、と思われる。
プルーストに「すばらしいエチュード」と絶賛されたという、マクシム・ドトマの木炭画が80点併載されている。観光名所ではない市井のヴェネチアの街と人々を描いており、簡潔で力強く、なんとも言えない深い味わいがあり、レニエの筆と絶妙に相まっている。(2001/2/24)

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