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赤い高粱/莫言

赤い高粱
莫言(Mo Yan)

My評価★★★★

訳:井口晃,解説:張競
岩波現代文庫(2003年12月)
ISBN4-00-602079-1 【Amazon
原題:紅高粱家族(1987)

収録作:赤い高粱/高粱の酒


1969年にベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した、張芸謀監督の映画『紅コーリャン』(1968年,中国)の原作。
映画を観たのが随分昔なのでうろ覚えだけれど、ラストの高粱(こうりゃん)畑での強烈な印象が忘れられない。私は好きです、この映画。
映画は原作とストーリーが異なり、原作のエッセンスを抽出したもののように思われる。原作は全5篇の中篇から成る。順に『赤い高粱』『高粱の酒』『赤い高粱・続』『犬の道』『高粱の葬礼』となる。この5篇で長篇小説を形成しているという。中篇は各々読み切り形式だが、やはり全篇を読まないと。2篇だけでは片手落ちなので、残り3篇も文庫化を希望。

抗日戦争を扱っているが、よくあるような戦争の悲惨さや中国正当性を主張したものではない。そういった部分もあるにはあるが、それよりも過酷な状況でも己の命をまっとうしようとする人々の、溢れんばかりの生命力を描いていると思う。
原始的なまでの欲望、喜びや悲しみ、怒りが荒々しく剥き出しにされる。互いに喰らいつきあって共倒れせんばかりの苛烈な生き方が、読む者を圧倒する
莫言は賤しきもの卑俗なるものから生命の輝きを見い出す。それは、譬えは悪いが肥溜の中で輝く命というダイヤモンド。人々はがむしゃら生き、死んでゆく。その命は糞や泥にまみれながらも、一瞬に燃え上がる光芒の矢と化す。そして血は土へと還る。

解説が秀逸で、莫言という作家の経歴と作品の性質をよく著している。本文より先に解説を読むのも構わないが、できれば解説は本文を読んでだ後のほうがいい。先入観を持たずに作品に触れられるからだ。

赤い高粱
物語は後年に作家となった豆官(トウクァン)の息子が語り手となる。この息子がすでに父亡き後、自分の一族について調べた、という体裁をとってる。
1939年、抗日戦争中の山東省高密県。高粱畑の広がるこの地方には、高粱から酒を造る醸造小屋が多い。なかでも女主人・戴鳳蓮(タイ・フェンリエン)の高粱酒は、高密県で抜きん出た美酒として知られる。
そこへ日本がやってきて道路を敷設するために、戴鳳蓮のラバと醸造小屋を取り仕切る羅漢大爺(ルオハン・ターイエ)を徴収した。
戴鳳蓮の愛人で元盗賊といわれる余占鰲(ユィ・チャンアオ)は、村人から遊撃隊を募り日本軍を駆逐せんとす。
14歳の少年・豆官は、義父・余占鰲の指揮する遊撃隊とともに、日本軍の自動車隊を奇襲しようと高粱で待ち伏せた。しかしいくら待っても自動車隊はやって来ない。戴鳳蓮は差し入れを届けようとするが・・・。

********************

奇襲作戦を遂行しようとする時間軸をベースとして、羅漢大爺の運命と、戴鳳蓮の輿入れ、彼女と余占鰲との出会いが語られる。
後年の莫言作品を読んでいるためか、この初期の作品にはぎこちなさが感じられた。それぞれのエピソードや登場人物には魅力があるのだが、現在と過去をシャッフルする手法がまだ完成されていないようで、魅力を生かしきれていないように思った。しかし羅漢大爺と戴鳳蓮は、凄烈な印象を残した。

高粱の酒
『赤い高粱』で奇襲した直後がベースの時間軸となっているが、戴鳳蓮が16歳時にハンセン病の婿宅に輿入れした様子。彼女が舅と夫を亡くし、人に敷かれたレールではなく自らの意思で生き始めるまで。
彼女は酒造小屋を取り仕切り、余占鰲と惹かれ合う。余占鰲の才覚と彼が盗賊と言われる所以が語られる。それまで平凡だった戴鳳蓮の酒が、どうして馥郁とした美酒となったのか。

********************

世間知らずの小娘だった戴鳳蓮が、なぜどうして女傑となったのか。彼女の生き様に焦点を絞ったためか、『赤い高粱』より格段と読みやすくなり、ストーリーに惹き込まれた。
彼女にとって生と性は、情動ではなく本能に根差しているかのようだ。ときには小ずるく陰険となり、ときには激しいまでの愛を交わし、己の欲するまま生きるために生きる戴鳳蓮と余占鰲。
二人の姿は「放埓」とは言えないと思うのだ。なんと言うかなぁ、すべてを飲み尽くさんばかりの激しい「生命欲」ではないかと思う。(2004/1/25)

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