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アイルランド田舎物語/アリス・テイラー

アイルランド田舎物語 わたしのふるさとは牧場だった
アリス・テイラー

My評価★★★☆

訳:高橋豊子
新宿書房(1994年2月)
ISBN4-88008-196-5 【Amazon
原題:To School Through The Fields:An Irish Country Childhood(1988)


アイルランド南部の農家に生まれ育った作者が、子ども時代を過ごした1940年代の農村生活を描いた作品。当時の牧場の生活がよくわかった。
アイルランドの歴史からすると、おそらく作者の家庭は恵まれた方だったんじゃないのかな。自分たちの土地を持っていて、自立して生活できているのだもの。
のどかで牧歌的な生活はどこか懐かしい。自然と共に暮らす生活は現代では失われてしまっただけに、憧れのようなものを感じてしまう。
けれども実際には、アリスの家は町から5kmほど離れており、表の道路からさらに1kmほど牧場を入った場所。
水道はないので、井戸から水を汲んでこなければならず、火は暖炉やかまどで熾すしかない。
ほぼ完全に自給自足であり、出産や病気を含めた家畜・家禽の世話や乾草作り、作物の種蒔き収穫、冬に備えての保存食作りなど、季節ごとにやらなければいけないことがたくさんある。それらを家族や親戚、近所の人たちと助け合いながらこなしていく。
いろんな意味で現代のように便利ではないけれど、そのぶん自分たちで体を動かして工夫する充足感があるようだ。

とても牧歌的なのだが、アリスの子ども時代は第二次世界大戦とその直後にあたる。しかし、戦争に関する話題はチラホラとそれらしいエピソードはあるが、前面に出てこない。
アリスの周囲は(と言うよりもアイルランドは)、戦争とはまったく無縁な様子。どう考えても戦中・戦後とは思えない、平和な別世界なのだ。訳者あとがきによれば、その理由はアイルランドが中立を保っていたためだという。ほほう、それは知らなかった。

テイラーの家庭で珍しい点は、父親がプロテスタントの家系で、母親がカトリックというところだろう。
当時、プロテスタントとカトリックは対立しており(現在でも対立しているようだが)、イギリスにいい感情を持っていない人も登場するので、こうした宗派の異なる両親は珍しいんじゃないのかな。
父親は子どもたちに、アイルランドとイギリス双方の良さを伝えようとする。母親は熱心なカトリックなのだが、夫の宗教にはこだわっていない。
この父親、癇癪持ちなのが玉に瑕だが、母親(妻)はうまく対処している。妻の方がうわてなんだよね。
ともあれ、こういう両親に育てられたからこそ、偏見のないのびやかな子どもが育つのだろう。アリスの偏見のなさは、母親の影響が大きいのかな。

通常、思い出は多少は美化されるだろう。けれども子ども時代を振り返ったときに、語りたいほど良い思い出をたくさん持っているのは幸せなことだと思う。そうした家庭を、両親が築いていたということではないだろうか。
生活の喜び、日々の労働は大変だけれどそこから得られる喜び、といったことを考えさせられる。現代の方が絶対に便利で快適だ。でも、私たちが見失ってしまったものは何なのだろう。
この本は幸福感と寛ぎに満ちている。人々には逞しさとしなやかさ(なかには頑固な人もいるが)があると思う。なにより人々には、各々の生活に対するポリシーがあると思う。(2009/2/28)

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