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見えざる神々の島/ベン・オクリ

見えざる神々の島
ベン・オクリ

My評価★★★

訳:金原瑞人
青山出版社(1998年1月)
ISBN4-900845-54-X 【Amazon
原題:Astonishing the Gods(1995)


彼は生まれつき人に見えなかった。母親もそうだ。彼は学校で学んだ。だが大人になる前に、可視の秘密を求めて、船乗りとなって海へ飛び出した。
7年間船乗りとして働いたある日、不思議な島に上陸した彼は、島に留まることにした。人影がないのに、声が聞こえて気配がする。鈴の音や笑い声が聞こえてくる。でも彼には街の住人を見ることはできない・・・。

鏡の道を歩き続けた彼は、エメラルドの角を持つ白いユニコーンを見た。大天使に会い、霧の橋を渡り、案内役の声に導かれて不可視の街へ入ってゆく。
『不可視の街』、それは目に見えざるものこそが最良の街。苦しみから生れた知恵に守られた街。
彼は気づかなかったことを再び経験しなくてしならない。気づかなかったことは経験しなかったということだから。

翼のあるドラゴンの門を潜り、新たな案内役に導かれてゆく。病気にならないよう健康なときにかかる病院、才能を通貨とする人々、新鮮なミントの香りのするパラドックス。
夜の街に現れた、見えるようになりたい女。彼には命を与えることができないため、傷つき死にかけている鳩。広場のベッドで一晩過ごした彼は、謙虚の門を潜って宮殿へと向う。いたるところで彼は様々な試練と向き合う。
より崇高な高次の次元へと精神的進化を遂げた、不可視の人々の物語。

********************

ベン・オクリ(1959年)はナイジェリア生まれの詩人・作家。エセックス大学を卒業。現在はロンドン在住。
詩人というのには納得。あらすじではファンタジーのように思われるかもしれないが、この作品は詩であり哲学だろう。また、ユートピア小説とも言えるのではないだうか。

鈴や水の音に溢れているかのように、美しく儚い夢のように幻想的だが(幻想というよりヴィジョンと言うべきか)、実はこの街は幻想のない街で、非常に厳しい街だ。詩的な美しさの垣間に厳しさが覗いていて、底にナイフの切れ味を隠しているかのようだ。
ふわりとした儚いようなヴィジョンを詩的に描いているが、言葉そのものは力強く感じられる。作者は言葉の力というものを信じているのだろう。逆説に次ぐ逆説、奔放なレトリックに頭がクラッとしそうになる。しかし意味を探らずに、ともかく最後まで読んだ。
「わかろうとしないほうがいい」導く声がいった。「わかろうとすることをやめたときに、わかるものだ。理解は、彼方からやってくる」(p24)

読んでいる間は幻想的なヴィジョンに眩惑されてしまったが、多少時間を置いてから、幻想性を抜き取って考えてみた。次にセリフだけを抜き出して読んでみた。
主人公は見えない存在だ。だが彼の見えない状態と、不可視の人々の見えない状態は違う。何が可視で不可視なのかが重要で、このことは手を替え品を替えて何度も繰り返し書かれている。しかし、私は理想主義的だと思う。だからと言って内容が損なわれるわけではないが。
一風変わった作品で正直言ってよくわからないのだが、高次の精神によって恒常的な平和を求める気持ちを哲学的な詩に似た物語にしたもの、と思われる。(2002/7/27)

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