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貴婦人と一角獣/トレイシー・シュヴァリエ

貴婦人と一角獣
トレイシー・シュヴァリエ

My評価★★★☆

訳:木下哲夫
白水社(2005年1月)
ISBN4-560-04799-5 【Amazon
原題:the Lady and the Unicorn(2003)


1940年パリ、肖像画や細密画を特異とする青年絵師ニコラ・デジノサンは、国王の廷臣の貴族ジャン・ル・ヴィストの屋敷に呼びつけられた。
ニコラはタピスリーの図案を依頼される。図案は会戦の情景を描くようとのことだったが、ジャン・ル・ヴィストの妻ジュヌヴィエーヴの要望により、血生臭い会戦図ではなく、穏やかで神秘的な一角獣の図案に変えられた。
男子のいないル・ヴィスト家では、タピストリーは将来、長女クロードが相続することになる。

ニコラはクロードに惚れ、クロードもまた彼に惹かれる。だが、ニコラは女たらしで、すでにル・ヴィスト家の女中に手をつけていた。
一方のクロードは、将来有望な貴族に嫁ぐ大切な身。母親ジュヌヴィエーヴは、クロードとニコラを引き離すため、タピスリーの制作は、ブリュッセルの織師ジョルジュの工房に任される。ジョルジュは制作期限は短く、報酬が安いと知りつつも請け負う。

本来絵師は図案を描けば放免だが、自分の絵に手が加わることを嫌うニコラは、工房で下絵を描く。
織師ジョルジュは、ニコラが気に入らないので口には出さないが、図案の美しさを認めていた。
ジョルジュには、娘アリエノールがいた。ジョルジュ夫婦は、彼女の意に沿わない結婚話を進行していたが、それには理由があった。
想いのままに生きられない女たち、ジュヌヴィエーヴ、クロード、アリエノール。ニコラは女たちの姿を図案に取り入れる。
タピスリーは様々な人間模様を絡めとり織り上げられてゆく     

********************

貴婦人と一角獣とは、6連作のタピスリー(英語ではタペストリー)の名称。このタペトスリーは、パリのクリュニュー美術館の特別室に保管展示されている。
現存するタペトスリーの最高峰といわれるのが、この『貴婦人と一角獣』、メトロポリタン美術館の分館・クロイスターズ美術館収蔵『一角獣のタペストリー』、フランスのアンジェ城収蔵の『アンジェの黙示録』。これらは世界三大タペストリーといわれている。
どれも中世美術の最高傑作といわれているが、華やかさと神秘的さでは、貴婦人と一角獣に軍配が上がるのではと私は思う。どれも実物を観たことはないけどね。

このタペストリーの制作の理由や正確な制作年代などは明らかではないが、作者は『注ならびに謝辞』で貴婦人の服装と織りの技法から、15世紀末にブリュッセルの工房で作られたのだろうと推測している。
また、ル・ヴィスト家の紋章入りであることから、当時発注出来た人物は、ジャン・ルイ・ヴィストしかいなかったと述べている。

本書は作者が想像力豊かに、このタペストリー制作の経緯とそれに関る人々の物語を描いた物語。
寓意に充ちたタペストリーを、誰が何のために発注し、図案が描かれ、どのようにして織られたのか。それが横糸なら、縦糸はタペススリーに関る人々の人生模様だろう。
幾組かの男女、特に自由意志で生きられないし独立できない女性たちに焦点が当てられている。ニコラはたんなる女たらしでしかなく、登場人物の中ではいちばん軽く扱われているんじゃないかな。
芸術家だからといって人間性が優れているわけではない、ということはわかっているけれども、彼のタペストリーへの想いまで軽く感じられてならない。もっとも、彼が絵筆を握っているときの真剣さが伝わらなかったけれど。

ソツなく書かれていると思う。けれども、「ここが感動的」とか「ここが印象深かった」という場面がなかった。
悪くはないのだが、強く印象に残る作品ではなかった。巧い作家と言うよりも「器用な作家」といった感じがするなあ。
また、章ごとに語り手と場面が変わるため、「これから」というところで次の章次の語り手に移ってしまう。人物に興味を憶え、「アリエノールはいったいどうなるのだろう」と思ったところで章が変わり、ブツブツと興味が途切れてしまう。これは、章立てと語り手が多すぎるからだと思う。

私としては、一人ひとりにもう少し描写を割き、特にアリエノールとクロードの内面を、もうちょっと深く掘り下げてほしかった。
アリエノールの決意と、ラストでのクロードの態度に、何かしらシックリこなかったからだ。彼女たちの強さは伝わるのだけれど・・・。頭ではそれなりに納得できるのだけれど、感情的になんかシックリこないんだなあ。
クロードは家族思いとは考えにくいから、地位と金(贅沢)に執着したということか、と下世話な解釈をする私であった。だって、彼女が何をどう考えて、ああいう態度をとったのか伝わってこなかったんだもの。(2005/2/18)

追記:2013年3月、白水uブックス化 【Amazon】。

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