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クレモニエール事件/アンリ・トロワイヤ

クレモニエール事件
アンリ・トロワイヤ

My評価★★★★

訳:小笠原豊樹
草思社(2004年2月)
ISBN4-7942-1284-4 【Amazon
原題:L' affaire Crémonnière(1997)


1988年、フィリップ・クレモニエールは妻シモーヌを殺害した罪により、15年の禁固刑に処せられた。
当時、娘のマリ-エレーヌは15歳だった。父の無実を信じるマリ-エレーヌは、弁護士エチエンヌ・ポルケスの力を借りて、父の冤罪を晴らすべく司法と闘い続ける。
24歳となったマリ-エレーヌは、ついに勝利を手にする。父の冤罪が晴れたのだ。

クレモニエール宅にはリュシー小母さんが同居して、食事支度やら身の回りの世話をしてくれていたが、マリ-エレーヌは小母さんをどうしても好きになれなかった。
マリ-エレーヌは親子水入らずで暮らすべく、父の帰宅を契機に小母さんを追い出す。肝心の父はといえば、陰鬱で無気力となって部屋に引きこもりがち。マスコミや知人への応対は、マリ-エレーヌが一手に引き受けることになった。

いつしかマスコミの寵児となったマリ-エレーヌは、ポルケスから回想録を執筆し本を出版するよう勧められる。彼女は執筆に勤しみながら、失った青春を取り戻すかのようにポルケスとの恋に陥る。
だが彼女が己の人生を謳歌しようとすればするほど、父娘の関係が軋んでゆく     

********************

物語はマリ-エレーヌが、父親の再審に勝訴するところから始まる。
少女期の彼女は亡き母親と仲がよく、父親を尊敬していたわけではない。だが父の冤罪を晴らそうと奮闘して青春時代を過ごした。そんな彼女の複雑な心理に焦点が当てられている。

彼女は妹のシャルロットやリュシー小母さんの生き方を軽蔑している。そんな彼女の傲慢さやプライドの高さには鼻白んだが、決して自分を過大評価したり真実の彎曲を許さない、正直さ聡明さもある。でもまあ、どう転んでも頑固には違いない。またマリ-エレーヌの相矛盾する感情が描かれ、人間というものの複雑さがうかがえる。
父親を尊敬しているわけではないのに、呪縛のように父親に繋がれる娘。その矛盾する感情の動き。彼女は事態を冷静に見つめつつも翻弄される。

私はマリ-エレーヌの性格は好きなタイプではないが、彼女の感情の動きはわかるような気がする。
物語全体からすればマリ-エレーヌの心境は激変するわけではない。周囲の変化はあるが、彼女自身が激変したとは言えないと思う。
だがリュシー小母さんとの関係の変化や妹のことを考えるようになるなど、全体からすれば些細な部分に、彼女の心境の微妙な変化が表れている。それをサラリと書いているところがにくいなぁと思うのだ。
ともすれば凡庸な作品となるか、感情面をドラスティックに強調した作品となりそうなところを、作者は巧く舵を取っている。とても巧い作家だと思う。(2004/5/3)

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