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太陽の子と氷の魔女/ジャンナ・A・ウィテンゾン

太陽の子と氷の魔女
ジャンナ・A・ウィテンゾン

My評価★★★★★

訳:田中かな子
カバー画・挿画:E・ニコラエフ & L・アリストフ
大日本図書(1969年2月)[絶版]
ISBN4-477-17412-8 【Amazon


東シベリアの果てのツンドラ地帯。トナカイの皮で作ったヤランガ(北極地方に住むヤクート族やチュクチ続のテントのような家)に、お母さんと二人の子ども、兄ヤットと妹テユーネが住んでいました。
お父さんのラグテルギンは猟師ですが、漁に出たままもう長い月日帰ってきませんでした。お母さんは子どもたちのために一生懸命働くのだけれど、子どもたちは怠け者で何も手伝おうとしないのです。

ツンドラには恐ろしい魔女プルガがいます。そのプルガが、母子たちのヤランガにやってきました。子どもたちを凍えさせようとするブルガ。お母さんは子どもたちを守ろうとして、プルガに連れさられてしまいます。
ヤットとテユーネは、これまでの自分たちの怠け者ぶりを後悔しながら、お母さんを助けだすために、プルガの住む遠い氷の山上にある氷のヤランガを目指し、ツンドラを旅することに。

お日さまに助けを求めたヤットは、矢を授かります。プルガは「ねむり精ドリョーマ」や、「くらやみのチムーシャ」を兄妹に差し向けますが、兄妹はトナカイやお日さまの兄弟「勇士スバローヒン(オーロラ)」たちの助勢を得ることができました。そして、ついにブルガの住む氷のヤランガに辿り着きました。

********************

シベリアのヤクート族を題材にし、連れ去られた母親を助けるため、氷の魔女プルガに立ち向かう兄妹の冒険ファンタジー。
シベリアを旅するうちに、怠け者だった兄妹は次第に他者を思いやる心に目覚め、厳しい自然の中で生きる力を身につけます。二人の冒険物語であり成長物語です。
都市化された現代人が失ってしまった、逞しさや思いやりの心が素朴ながらもストレートに迫ってきます。絵の効果もあり、なんとも力強い物語。
おそらくヤクートの民話を下敷きにしているのではないかと思います。厳しい自然との戦いは、トーテム信仰と結びつき、太陽と火を崇めるようになったとか。

本作は、ソビエト時代に執筆された物語だそうです。
訳者によると、ジャンナ・アレクサンドロウナ・ウィテンゾンは戦後(祖国戦争のことらしい)、モスクワに大学を卒業してすぐ、多くの青年たちとシベリア開発に志願して、ヤクーツク市にロシア語教師として赴任。
彼女は辺境のヤランガを訪ねて、シベリアの北の果てに伝わる民族の民話や伝説を収集したのだそうです。
そしてモスクワへ戻った後、アニメーション(原題は『ヤットとテユーネの物語』)として執筆。アニメは1956年にモスクワで金メダルを、翌1957年にヴェネツィア映画祭動画の部でグランプリを受賞。
本としては、フィルム制作所に勤めるE・ニコラエフとL・アリストフの画家との共同制作という形で、1963年に刊行。ウィテンゾンの書いた物語は次々とアニメーション化され、内外で高い評価を受けているのだとか。

訳者はヤクートの暮らしについても触れています。
ヤクート自治区(現在はサハ共和国。面積はインドと同じぐらいあり、ロシアで最も大きい地方)の人々は、北氷洋に面したレナ川流域の広大な永久凍土で暮らしているのだそうです。一年を通じて太陽の光を見ることができるのはほんの数えるほどしかなく、零下70度という極寒の地。
ソビエト政権樹立前、各種原住民の数はおよそ30万人で、辛うじて種族を絶やさないで生活するのが精一杯。工業も農業もなく、ほとんどが文盲だったらしいです。
ソ連時代になりシベリア開発が進められ、ダイヤモンド鉱や金鉱、錫鉱、石炭鉱が発見され、養殖コルーズや漁業コルホーズが設けられるともに各種学校ももつくられ、文盲がなくなったのだそうです。
また、水力・火力発電所が造られ各種工業が盛んになり、零下70度の極寒に耐えられる住宅か施設が造られ、ヤクートの人々の生活を一新したのだそうです。その結果、人口は65万人ほどにもなったのだとか(現在は98万人強)。
ヤクートの人々の生存環境は改善されたのでしょう。でも、急激な発展の影で、ヤクートの伝統や信仰、民話は失われつつあったのではないでしょうか。

この作品を読んで、都市化された現代の作品は、悩み事など様々な事柄が細分化されて描き出され(それが悪いというわけではないのですが)、人間が本来持っている「生きる力」といったものに、あまり目が向けられなくなっているような気がしました。
ともあれ、都市化及び複雑化した現代の生活からでは、もはや書かれることのない物語ではないでしょうか。けれど、現代でも力を失っていない作品だと思います。(2007/11/18)

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