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カーソン・マッカラーズ短編集/カーソン・マッカラーズ

カーソン・マッカラーズ短編集 少年少女たちの心の世界
カーソン・マッカラーズ

My評価★★★☆

訳・解説:浅井明美
近代文藝社(1993年3月)[絶版]
ISBN4-7733-1350-1 【Amazon
原題:9 STORIES TAKEN FROM 'THE MORTGAGED HEART'

収録作:お人好し/西八十丁目の中庭/ポールディ/空より息吹来たりて/孤児院/あんなのはいや/見知らぬ町/文通/とりつかれた少年


お人好し(1)
ピートを慕い、彼の言うことを何でも信じ込むサッカー。だが失恋したピートはサッカーに当り散らし、彼をひどく傷つけてしまった。そのことをピートは反省するが、もはや二人の仲は取り返しがつかないほど、決定的に変わってしまった。

西八十丁目の中庭(2)
大学生活の一年目をニューヨーク西八十丁目のアパートで暮らす私は、いつもアパートの真向かいの部屋に住む赤毛の男の人を見ていた。彼とは話したこともなく名前も知らないが、彼なら中庭から見えるチェリストや若夫婦のいざこざを解決できるだろう。
彼だけがアパートの住人を理解できると信じているのだ。やがて若夫婦とチェリストが引っ越して、遂に彼も引っ越して行くが・・・。

ポールディ(3)
ポールディがチェロの練習をしている部屋へ来たハンス。ハンスは彼女を愛していたが、告白することができないでいた。彼女はハンスを弟分としか考えておらず、彼の前で他の男性に熱烈な手紙を出したこと。返事がこないけれども、それは相手が返事を書く時期を見計らっているからだろう、ということを話す。

空より息吹来たりて(4)
病気から回復し、やっと外の空気に触れる許可を得たコンスタンス。そこへ母と妹と弟が戻ってくる。
体を動かすことができないコンスタンスの前で、妹は無邪気に新しい水着を着て海に行きたいと言う。
転地静養しなければいけないコンスタンスは、一人で行くのかと母に問いかける。

孤児院(5)
幼いころは前を通りかかるたびに恐ろしく思っていたホーム(孤児院)。ハッティという少女と遊んでいるとき、気味の悪いガラス瓶を見せられる。そしていつのまにか、ホームと気味の悪いガラス瓶を関連づけて考えるようになってしまった。しかし、いつしかホームへの恐れが憧れに変わり、あるときホームを訪問する機会に恵まれた。

あんなのはいや(6)
兄ダンと姉シス、あたし。ダンはある夏の日に明け方に酔っ払って帰ってきて以来、すっかり変わってしまった。シスはあたしより五つ年上の18歳だが、どんな姉妹よりも仲が良く、なんでも相談していつも一緒に遊んでいた。だが、シスはタックという男の子と知り合ってから変わってしまった。
あたしはいつまでも13歳のままでいられないことはわかっている。でもシスのようになることが大人になることだと言うのなら、大人になんかなりたくない。

見知らぬ町(7)
3年ぶりに故郷の町へと戻る途中のアンドルーは、子ども時代のことを思い出していた。仲の良かった一つ年下の妹サラとグライダーを作ったこと。そのサラが変わってしまったこと。最も身近な存在だった、父親の仕事場に出入りしていたハリーと、家政婦のヴァイタリスと過ごした時間。
様々な事が混乱して感じられ、かみ合わなく感じられていた日々。そして故郷を飛び出したが、いま故郷に近い町まで戻ってきた。

文通(8)
ヘンリエッタはハイスクールの提示板の文通希望欄を見て、南アメリカに住むマノエルに手紙を出した。手紙には彼マノエルのことを、ずっと以前から知っているようで、どんなことでも話し合える間柄だということを書いた。返事を待ちきれずに2通目を出す。2ヵ月が経ってもまだ返事がこないので3通目を出した。そして4通目・・・。

とりつかれた少年(9)
ヒューが家に帰ると母がいなかった。母は子どもが生まれると思っていたが、実は腫瘍だったことが判明し、そのすぐ後に更年期障害がきて精神にショックを受けていた。ふさぎこんでいた母は「事件」を起こしたため、病院に入院させるしかなかった。
現在、母は退院して家にいるが、今日はその母がいない!ヒューは恐ろしくて2階に上がって行くことができなかった。友だちのジョンをなんとか引き止めようとするが、ジョンは帰ってしまった。やがて買い物から母が帰ってきた。そして父が帰ってきたとき、ヒューは父から大人として声をかけられた。

********************

このあらすじだけでは何がなんだがわからないだろうが、マッカラーズの長編や内面世界を知るには絶好の短編集。彼女の作品に共通する、満たされない想いや現実に対する苛立ちといったものが、何に起因しているのかがわかる。

傾向ごとに分類するため、各作品名のあとに(1)~(9)の番号を振ってみた。
(1)は主人公ではなくサッカーの視点だが、(6)と(7)と共に、自分の渾身的な愛情を注いだ相手が大人へと変わってしまい、そのために二人の仲が離れてしまう。このことは(6)に顕著に表れている。
相手に絶大な愛情を捧げている、と言うよりも同一化を求めているのだが、だからこそ相手が大人へと変化する過渡期を、敏感に捉えることができるのだろう。
大人への変化は(9)にも見受けられ、自分だけではなく周囲の変化への「恐れ」が体現化している。そういう点では(5)も同じようなニュアンスがある。

(2)と(8)は全く見も知らぬ他人への一方的な愛情であり、ラストのあり方こそ違うがそこには絶望はなく、自分を信じて自分を理解できる人物を新たに探そうとする意欲が見られる。ここがポイントで、どの作品でも愛情を注いだからといって、必ずしも報われてはいない。だからと言って自分の殻にに閉じこもらず、常に外部との接触を求めている。

この短編集で(4)はちょっと異質のように感じるが、愛情を捧げる相手がいなかった場合のバリエーションとも考えられる。肝心なのは、コンスタンスは体が不自由だが空想に逃げていないことだろう。
(7)は決して過去を悔やんでいるわけでなく、過去を回想しつつも視線は未来へと向いている。このことはどの短編にも共通しているだろう。(2001/8/20)

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