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心は孤独な狩人/カーソン・マッカラーズ

心は孤独な狩人
マッカラーズ(カーソン・マッカラーズ)

My評価★★★★

訳・解説:河野一郎
新潮文庫(1972年3月)[絶版]
0197-204201-3162 【Amazon】
原題:The Heart is a Lonely Hunter(1940)


耳が聴こえず話すことのできないジョン・シンガーは、同じ障害を持つアントナーブロスと同居していたが、アントナーブロスは精神病院に入院させれられてしまう。シンガーは新たな下宿先に転居し、食事はビフ・ブラノンの経営するニューヨーク・カフェーで摂るようになった。

カフェーには流れ者のジェイク・ブラウントが転がり込んでいた。ブラウントは、労働力を搾取されていることに気づかない南部の人々への義憤、南部の労働力を搾取する資本主義を解体すべきだと思っていた。だが誰にも理解されず、ただシンガーだけが彼の言うことを理解できると信じている。そして始終シンガーの部屋を訪れる。

ある日、突然妻を亡くしたカフェーの店主ブラノン。彼は妻のいない寂しさよりも、自分が分別のある人間かどうか考えることがあった。ブラノンはいつの間にか、しばしばシンガーの部屋を訪ねるようになった。
下宿先の大家の娘ミックは音楽家になることを夢みていたが、音楽のことだけではなく、真に自分という人間を理解できるのはシンガーしかいないと思っていた。だがミックは否応なく大人にならざるを得なくなる。
黒人のコープランド医師は、南部における黒人の人権擁護、私有財産の所有権を求めていた。しかしあまりにも厳格すぎて、息子や娘たちに理解されない。コープランド医師もシンガーの部屋を訪れるようになる。

誰も彼もが、耳が聴こえず口も利けないシンガーに胸の内を語る。しかしシンガーは!?

********************

マッカラーズ22歳時の初長編。初長編には作家のすべてが込められているというが、この作品には顕著に表れている。
ブラウントは部分的に『悲しき酒場の唄』のライマンに連なるだろうし、コープランド医師の語る人種差別問題やそういった描写は『針のない時計』に引き継がれているだろう。
ミックは『夏の黄昏』のフランキーそのもの。ミックの性格描写はマッカラーズのど独壇場だが、内容の是非はともかく、正直に言ってないほうがスッキリするんじゃないかな。他の人物の悩みは人生の挫折なのだが、ミックは将来への夢想と大人になった現実とのギャップなので、悩みの質が違うと思うのだけれど。

誰もがシンガーだけが自分を理解できると信じていて、一方的にシンガーに語りかける。しかしシンガーが自分のことをどう思っているのか、シンガーの内心を図ろうとはしない。
シンガーの穏やかさを見て、自分が理解されているのだと信じ込んでいるが、実はシンガーはみんなの言うことを理解していないのである。そのシンガーはアントナーブロスのことを考えており、彼の世界にはアントナーブロスしかいない!すごい皮肉さ。
シンガーを含めて、要するにみんなエゴイスティックなのだ。自分の求めるイメージを一方的に相手に押し付けているにすぎない。
「自分を理解してくれる誰かがどこかにいるはず」という気持ちはわかるが、その他の人には自分のことを理解できないと思い込んでいる。それで孤立してしまう。しかも一方的に好意を押し付けて、相手の心情を慮らない。そもそも他者に対する無理解、は言いすぎかな、他者と交感しようとしないことを孤独と言えるのかなぁ。ただし、孤立する原因がどこにあるのかということでなら納得できた。

マッカラーズの作品には身体的特徴を持つ人物が登場することが多い。それは作者自身が身障者だからだろう。けれど作者は、身障者に対して同情しても、共感はしていないのではないのかなあ。作中における身体的特徴を持つ人物は、精神的なありようが身体に影響を及ぼしているのではないかと思われる。
しかも障害が聖痕のように扱われているように感じられてならない。このことはシンガーが、キリストもしくは殉教者に喩えられている(ように感じられる)ことと無関係ではないだろう。それも一つの読み方ではないだろうか。(2001/9/2)

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