スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢の国をゆく帆船/ロバート・ネイサン

夢の国をゆく帆船
ロバート・ネイサン

My評価★★★☆

訳:矢野徹
ハヤカワ文庫NV(1974年12月)[絶版]
カバー画:林幸蔵
コードなし【Amazon
原題:The Enchanted Voyage(1936)


ニューヨークのブロンクスに住む大工のベケット氏は、人はいいが押しが弱いため稼ぎが少ない。
ベケット氏の唯一の楽しみは、夜になると船(ヨット)に乗り込み、船乗りとして七つの海を航海する夢想に浸ることだった。
船は彼は小さな家の庭にあり、彼が自分で作ったものだ。船は妻の名をとって、『サラー・ベケット号』と名づけられている。
妻のサラーは夫の稼ぎが少ないため、肉屋に船を売って代金を得る。サラーは、ハンバーガーの販売用スタンドに使ってもらうため、船が移動できるよう車輪とブレーキを取り付けた。
それを知ったベケット氏は、船との別れを過ごすために船室で一夜を明かそうとするが、暴風雨のため船が動き出してしまった!

ハリウッドのレストランで働くウェイトレスのメリイ・ケリイは、気立てはいいがかたくて内気だった。
彼女は自分にピッタリの男性が現れるのを夢見ていたが、恋人は現れないし仕事はうまくはいかず、みじめな想いをしながらひとりぼっちで小さな下宿に暮らしていた。
彼女が道端で転んだとき、ベケット氏の船が通りかかる。ベケット氏はカリブ海まで行くと言う。
メリイは、憧れのフロリダで降ろしてほしいと乗り込む。

船はペンシルヴァニアで、大学出の歯科医ウイリアムズ青年の手押し車にぶつかってしまった。アイオワから来た彼は、仕事を求めて南に向かっている最中だった。
ベケット氏はウイリアムズを乗船させ、せらに途中の農場では仔牛も乗せて、一路フロリダを目指すが・・・。

********************

邦題から魔法に満ちた異世界を航海する物語かなぁと思っていたのだが、この物語には魔法や異世界といったものはいっさいない。にも関わらず、この作品はファンタジーだと思う。いや、大人のための寓話だ。
訳者あとがきによると、ロバート・ネイサン(1894-1985)はファンタジーとして書いたようだ。
クリス・ネヴァルがネイサンを初めて訪ねたときのことを、矢野徹に知らせた内容が以下になる。文中の「かれ」とはネイサンのこと。
かれの全著作のうち二冊を除いてあとはみなファンタジーだそうだ。
かれの定義するところによると、「ファンタジーとは、おこったことなどなく、おこり得るはずもないこと。
だが、おこったかもしれないと思わせるもの」だ。真実(リアリティ)とは多くの面があるもので、われわれはそのごく一部を見ているだけであり、真実はたぶん論理的に構築されているものだろうが、それを理解することはできないものだという。(p183)


陸地が自分にとって安全で快適だと思えないベケット氏。違う生き方を夢見るが現実派みじめでひとりぼっちのメリイ。なかなか仕事にありつけないが、将来の成功を夢見て意気込むウイリアムズ青年。
人生の成功者とは言えない3人がサラー・ベケット号に乗って、陽光と希望に満ちていると言われるフロリダを目指す。
それは現実逃避と言えるかもしれないが、私としては自己快復、自己を取り戻すための旅と言いたい。不器用に生きる人たちが、自分自身の生き方を模索する旅なのだから。乗り物は異なれど現在でもみられるテーマだ。
1936年に発表された作品なので、第二次大戦後に関わる記述がちょっとだけある。しかし当時のアメリカの一部ではそうなのか、ネイサンの資質なのか、全体にのんびりしているような感じがする。少なくとも現代よりは、多少のんびりした時代だったのだろうと想像される。

結末は納まるところにおさまって、ほのぼのとした感はあれども、ほろ苦い。
ベケット氏はまだ自分に自信が持てないようだ。若い二人と異なりもはや老後を考えるベケット氏にとっては、決してハッピーエンドではなく、将来への不安の影を払拭しきれない。とても現実的なラストと言えるかもしれない。けれど妻サラーに抱く気持ちは、少しは変わったことだろう。

訳者あとがきによると、矢野徹(1923-2004)が終戦直後に復員してきてから、無料で手に入るアメリカ兵用のポケットブックの原書で読んだうちの一冊だったという。氏がSFを読むキッカケとなった本だという。(2005/7/25)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

こんにちは、はじめまして

こんにちは、はじめまして。

ロバート・ネイサン/矢野徹訳には、一時、はまりました。たしかに魔法も異世界もないけど、これぞファンタジーですよね。

それから、事後連絡ですみません。リンクを付けさせていただきました。ブログの新参者ですが、よろしくお願いします。
また、おじゃまします。

No title

★jacksbeansさん
はじめまして。ご訪問ありがとうございます!jacksbeansさんのブログは時々拝見していました。自転車の登場する作品に絞っているところがユニークですね。

『夢の国~』は古い本でしかも絶版なので、読んでいる人がどれだけいるのかなあと思っていたのですが、読む人は読んでいるんですね。
やっぱりこれはファンタジーですよね♪大人のファンタジー。絶版なのは惜しいと思うんですけどねえ。

リンクありがとうございます。こちらからもリンクさせいもらいますね。
こちらこそよろしくお願いします。
プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。