スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

隊長ブーリバ/ゴーゴリ

隊長ブーリバ
ゴーゴリ(ニコライ・ゴーゴリ)

My評価★★★☆

訳・解説:原久一郎
潮文学ライブラリー(2000年12月)
ISBN4-267-01585-6 【Amazon


15世紀、南ロシア・ウクライナ。兄オスタップと弟アンドリイは、キエフの宗教学校を卒業してコサックの両親の家へ帰って来た。
父親タラス・ブーリバは、古株の連隊長の一人。彼は息子たちにコサック魂を叩き込むべく、息子たちをコサック隊の本拠地で廠舎のあるザパロジエのセーチへ連れて行く。

セーチでは連日大酒宴を繰り返して放逸無為に過ごしていた。タラス・ブーリバはトルコへ戦に行こうと持ちかける。そのとき、ポーランド人がウクライナのロシア正教徒と教会を迫害していることが伝わり、ザパロジエ全軍はポーランド西南部へ進軍する。
城壁包囲の最中、アンドリイはポーランド貴族の娘に恋をし、軍を抜けてポーランド側へ付く。

時ならず、ダッタン人によってザパロジエが襲撃されたとの報が届く。あらゆるものが略奪され、留守を守っていたコサックが捕虜にされたという。
ザパロジエ軍は、ポーランド包囲軍とダッタン人追討軍の二手に分かれる。兵力が二分されると勝算がなくなることを承知の上で、死を賭してもコサックの名誉を守ろうとする。
タラス・ブーリバとオスタップは包囲軍に残った。臨時の団長となったタラス・ブーリバは、最後の決戦を指揮する。

********************

原題は『タラス・ブーリバ』。ザパロジエ全軍と典型的なコサックの隊長タラス・ブーリバが、死を賭しても仲間と名誉を守るため、勇猛果敢に戦う姿を描いた悲劇。そして、滅びゆくコサック魂を描いた作品。
解説によると、1835年に刊行された4篇からなる第2作品集『ミルゴーロド』のなかの1篇だという。ちなみに作者の故郷は南ロシアのウクライナだが、父親はコサックの血をひく小地主だったそうだ。

メリハリの効いたストリーリー展開なので、舞台化したら面白いだろうな思ったら、ヤナーチェク作曲の『タラス・ブーリバ』は有名らしい。他にはオペラや映画化もされているのだそうだ。
コサック団は剛毅で恐れ知らず、何者にも屈しない。反面、闘争心に溢れ、奔放で略奪し放題、陽気だが大酒呑み。戦を求め、戦がなければ自分たちから仕掛けることも辞さない。そして、いったん戦い始めたら情けを知らず、敵ならば女でも幼子でも容赦しない。

確かに彼らは勇猛かもしれない。けれども、話し合いでの解決なんて気は毛頭なく、武力による決着を求め、欲しいものがあったら略奪する。しかも、何の罪のない女と幼児まで殺戮する姿は、私は好きになれない。
作中のコサック対ポーランド戦争は、あくまでもコサック側の視点で書かれているのだが、コサックに正当性があるのかと言えば、彼らのやり方を見る限りそうは思えない。

この作品、どう受け止めればいいのか判断に迷う。
ストレートに読めば、タラス・ブーリバは最後のコサック魂の持ち主(この点については異論ある人はまずいないだろう)であり、彼は英雄とでも言えるような悲劇な最期を遂げる。
しかし、はたして彼は英雄なのかどうかとなると、かなり微妙に思う。作者が彼を完全に悲劇の英雄とみなしているかというと、必ずしもそうではないように思われてならないのだ。
包囲戦以前では、彼らの略奪や殺戮に対しての巧妙な皮肉が顕著に表れている。包囲戦以後は怒涛の展開になるので目立たないが、作者のスタンスに変化はない。皮肉の効かせ方は、いかにもゴーゴリらしい。
一見すると、題材こそゴーゴリとしては珍しい歴史ロマンといった感じだが、後年の作品(初期の作品はまだ味読なので)に共通する作者のスタンスが、まだハッキリとした形にはなっていないけれど、すでに表れている。

作者には、確かにコサックの同胞愛や南ロシアへの郷土愛はある。けれども、コサックがコサックらしく生きるために何をやってもいいかというと、そうではない。
そのことを、良くも悪くも典型的なコサックのタラス・ブーリバを描くことによって、言いすぎかもしれないけれど反面教師にしているのではいかともとれる。ただし、翻訳によって印象がかなり変わるため、別の訳で読むとまた違う印象を受けるかもしれない。
仮にコサック側とタラス・ブーリバに正当性があったとしても、正当性に関わらず、人としての「倫理」を問うているのではないかと思われてならない。(2005/7/11)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。