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フィオナの海/ロザリー・K・フライ

フィオナの海
ロザリー・K・フライ

My評価★★★★

訳:矢川澄子
集英社(1996年6月)
カバー画・挿画:はらだたけひで
ISBN4-08-773251-7 【Amazon
原題:CHILD OF THE WESTERNISLES(1957)


10歳の少女フィオナ・マッコンヴィルは、スコットランドから蒸気船に乗って、祖父母の暮らす島へ向かう。
4年前、ロン・モルの島人たちは、全員が島を離れて移住した。けれどもフィオナは街の暮らしに合わないためで、医者の勧めで祖父母と暮らすことになった。
フィオナたちが島を離れようとしたその日、フィオナの弟で赤ん坊のジェイミーがゆりかごごと海へ流された。以来、家族はジェイミーが死んだものとして名前を口にしなくなったけれど、フィオナはジェイミーが群島のどこかで生きていると信じていた。
フィオナは島へ戻って、ジェイミーを探し出そうとする。

おじいさんが語ってくれた話では、マッコンヴィル家は赤毛だけれども、ときどきジェイミーのような黒髪に黒い瞳の子どもが生まれるという。
ずっと昔、ロン・モルに家が建ったばかりのころ、イワン・マッコンヴィルはどこかから黒髪に黒い瞳の不思議な女を連れて来て女房にした。その女はとても風変わりで、カモメやアザラシと話すことができ、珍しい魚介だの海草を、腕に抱えるほど採ることができた。
女の血を引いた黒い瞳の子は、神秘的な力で海と結びついているようで、大人になっても一生を海の近くで過ごすという。
フィオナはロン・モル島でジェイミーらしき男の子と出会うが、男の子は逃げて隠れてしまう。

やがて祖父母は、いまの借家を離れて本土へ引っ越さなければいけなくなった。フィオナと従兄弟のローリーは、みんなでロン・モル島で暮らそうと、祖父母に内緒で島の家の修復を始める。
そんなフィオナたちを、アザラシの<族の長(チーフタン)>が見守っていた・・・。

********************

ロザリー・K・フライ(1911年生まれ)はカナダ生まれのイギリスの女流作家。
本作は1994年に、ジョン・セイルズ監視によってアメリカで映画化。映画では舞台をスコットランドからアイルランドに変えたとのこと。原作者のフライは、映画の完成を待たずに亡くなったという。

スコットランド北西部の群島を舞台に、フィオナの弟を探し出そうとする想いと、祖父母やローリーのロン・モル島への望郷の念が綴られています。
島暮らしはラクではなく、経済的にも豊かではないでしょうが、ゆったりとした懐の深い海がすべてを補っているかのよう。島の生活には、ケルトの民間伝承に登場するアザラシ族のセルキーが、マッコンヴィル家と深く関わっているのです。

フィオナとおじいさんは、どうして島を出なければいけなかったのか、という会話になりました。
おじいさんは、フィオナの父親と仲間たちが古いやり方に満足できなかったことと、自分や子どもたちのにために違うものを求めたのだと語るんです。
でもフィオナには、みんなが島を捨ててまで何を欲しがったのか理解できません。それは、フィオナにとっては島が何よりも大切だから。
祖父母は、本当は島を離れたくなかった。でも老夫婦だけでは生活できないので、離れざるを得なかった。島に帰りたいけれど、それができないというジレンマを抱えています。
現実にフィオナの父親や仲間達のように、島を離れた人はいたかもしれないし、祖父母のように離れたくなくても離れざるを得なかった人もいたのではないか、などと考えさせられました。

何と表現したらいいのかわからないけれど、海の懐の深さや種族を越えた愛情など、のびやかでファンタスティックなムードと言おうか、穏やかな雰囲気が全篇に漂っているんです。
けれどもファンタスティックな甘い物語ではなく、実はとても現実的だったり。その辺りの兼ね合いに無理がなく、サラリと書かれていて自然に作中世界に惹かれてゆく。族の長(チーフタン)の行動も違和感なく読めました。
全体に無理なく受け入れることができて、開放感があって心地よい物語でした。この心地よさは、フィオナはじめ登場人物たちが、他人を思いやる気持ちを持って行動していることからくるのではないかと思います。(2005/6/27)

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No title

こんにちは。セイルズの映画、10年以上前に多分VHSビデオで見ました。とても幻想的な雰囲気があって、気に入ったことを覚えています。北国の厳しい風土も印象に残りました。また、多分地域に伝わるフォークロアに基づいた作品ではないかと思いました。

観たいです

これはDVDで出ているのですが、レンタルショップに置いてないのでまだ観たことがないんです。
幻想的で、風土など現地の様子がよく表れているのですね。いい映画のようですねえ。観たいです~~。
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