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精霊の守り人/上橋菜穂子

[守り人シリーズ]精霊の守り人
上橋菜穂子

My評価★★★★★

カバー画・挿画:二木真希子
偕成社(1996年7月)
ISBN4-03-540150-1 【Amazon


放浪の女用心棒<短槍使い>のバルサは、新ヨゴ皇国で偶然に第二皇子チャグムの命を救う。
バルサは、チャグムの母親である二ノ妃から、チャグムの命が狙われているため、館を脱出してチャグムの命を守ってほしいと頼まれる。
星読博士は星を読み国政を導く。その星読博士は、チャグムの体内には恐ろしいモノが宿っているという。そのモノは新ヨゴ皇国の建国に深く関わっており、国の土台を揺るがすモノだった。
帝は威信と国の安泰のために、密かにチャグムを亡き者にせんと、直属の暗殺団たる「狩人」を放っていた。狩人によって負傷したバルサは、幼なじみの薬草師タンダの家に匿われる。

新ヨゴ皇国の聖祖・トルガル帝が来る前、この地には「ヤクー」と呼ばれる民族だけが住んでいた。
ヤクーは、目に見える普通の世<サグ>と、普段は目に見えない別の世<ナユグ>があり、二つの世は同時に存在していると考えている。
百年に一度、ナユグの魔物が目覚めて、子どもの魂を喰らうという。その魔物を200年ほど前にトルガル帝が退治し、それが新ヨゴ皇国の正史となった。

タンダはバルサの話から、チャダムに宿っているのがナユグの生き物「ニュンガ・ロ・イム」の卵だと気づく。
ニュンガ・ロ・イムはサグの人間に卵を産みつける。卵は夏至の満月の夜に孵るのだが、もし卵が孵らなかったら、この地はひどい大旱魃に見舞われるという・・・。
タンダはヤクーに細々の残る言い伝えと、トルガル帝の伝説に食い違いがあることを知る。
またニュンガ・ロ・イムの卵を好物とする「ラルンガ」が狙っていることを知る。しかしラルンガの正体も退治方法も、卵を守る知恵もいまでは失われてしまった。
タンダと彼の師匠・呪術師トロガイは、ラルンガ退治の方法を模索。バルサは狩人とラルンガからチャダムを守ろうとする。そんな中、チャグムの体に孵化の兆候が・・・。

********************

ナユグのニュンガ・ロ・イムの卵が人間に宿る!?なんとも不気味そうですが、この作品に不気味さはないです。オリエンタルなムードの作品で、特に匂いの描写が目立ちますね。
己の生きる道を自分で決めることができない少年チャグム。バルサの過去、彼女に対するタンダの想い。口が悪く威勢のいい呪術師トロガイ。そして帝や星読博士たち、狩人たち。
この作品に悪人は登場しない。あるのは立場の違いでしかない。
星読博士の一人ガカイは気持ちのいい人ではないけれど、妬み以上のものはない。ラルンガは人間側から見ると悪ではあるが、ラルンガにあるのは好物を食べたいという気持ちだけだ。となると、悪とはなんだろう?
この作品では、善に対する悪=二元論という単純さはありません。悪意とは単純なものではなく、立場が変われば善悪を推し量る基準も変わると言っているかのよう。

特殊な能力を持つ者は、この世サグと二重写しに、もう一つの世ナユグを視ることができるという。ところが多くの人には視えないから、視えないことを信じるのは難しく、ヨゴ人のようにナユグに対する知識は失われる。ゆえに星読博士と、その最高位である聖導師は間違いを犯す。
このことは、ワイツゼッカー(1920~,独)ではないけれど、私たちにとっての歴史(過去)とは何かということに対するわかりやすい譬えではないでしょうか。

民族学的史観に立った姿勢による国産の異世界ファンタジーという、珍しいタイプの作品です。たんに珍しいからではなく、作品から作者の思想性を感じられるところが好きですね。
この作品の何がいちばん気に入ったかと言うと、ストーリーはもちろんですが、ヨゴ人とヤクーという民族史観の異なる二つの文化の在り方です。
異世界を舞台とした国産ファンタジーは多く、それらの作中では、作者によって様々な気候風土・人種が創造されていますよね。
ところが日本は島国のため他国と国境を接していないからか、単一民族だからか(必ずしも単一民族とは言えないと唱える学者もいます)、私の知っている限り、民族の相違性がまったく見えてこない、もしくはまったく触れていない作品が多いように思われるんです。だからと言って、作品の良し悪しが決まるのではないけれど。
民族が異なれば史観も異なるのは自然なこと。物語といえども、文化や人種とともに、史観の差異は重要なことだと思うのです。そうしたところがこの物語では書かれていて、だからか大人が読んでも満足感を得られる作品だと思います。(2003/1/29)

備考:2007年3月、新潮文庫化【Amazon

+精霊の守り人
闇の守り人
夢の守り人
虚空の旅人
神の守り人<来訪編>
神の守り人<帰還編>
蒼路の旅人
天と地の守り人(第1部)
天と地の守り人(第2部)
天と地の守り人(第3部)
流れ行く者[守り人短編集]

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