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芸術家列伝1/ジョルジュ・ヴァザーリ

芸術家列伝1 ジョット、マザッチョほか
ジョルジュ・ヴァザーリ

My評価★★★★

訳:平川祐宏・小谷年司
白水uブックス(20011年6月)
ISBN978-4-560-72122-3 【Amazon
原題:Le vita de' più eccellenti pittori,scultori e architettori(1550)

目次:チマブーエ/ジョット/シモーネ・マルティーニ/ウッチェルロ/マザッチョ/ピエーロ・デルラ・フランチェスカ/フラ・アンジェリコ/フィリッポ・リッピ/ベルリーニ/ヴァザーリの位置と意味/訳注


芸術家列伝1ジョルジュ・ヴァザーリ(1511-1574)は、ルネサンス期のイタリアはフィレンツェで、画家・建築家・都市設計などで活躍した人物。
通称「列伝」と呼ばれる『画家・彫刻家・建築家列伝』を著したことで有名。またウフィツィ(現美術館)の設計でも知られています。
画業に関しては、居並ぶ巨匠たち比べると、ひけをとることは否めないでしょう。個人的には感銘を受けるほどの画家ではないですね。

ヴァザーリはミケランジェロ(1475-1564)と同時代人で、ミケランジェロを信望しており親交があります。ヴァザーリは列伝の初版をミケランジェロに贈るのですが、ミケランジェロからはソネットを贈られており、そのソネットが『ヴァザーリの位置と意味』に載っていました。列伝にインスパイアされたロバート・ブラウニングの詩2篇も載っています。

ヴァザーリの「列伝」は、ルネサンス期の芸術家の作品と生涯を記したもの。1550年の初版では133人の芸術家を取り上げ、1568年の再版では30人を追加。
列伝中、画家部分の邦訳は白水社から上製単行本で『ルネサンス画人伝』(新装版)【Amazon】と『続ルネサンス画人伝』(新装版)【Amazon】が刊行されています。
今年2011年はヴァザーリの生誕500周年だそうで、それを記念してのuブックス化だそうです。uブックスは『ルネサンス画人伝』と『続ルネサンス画人伝』からピックアップされたもので、単行本とは異なるので注意。

「列伝」は著されてから500年以上経った現代でも、イタリア(フィレンツェ)・ルネサンス芸術についての貴重な資料としてつとに有名で、基礎的な資料といったところでしょうか。
しかし、ヴァザーリの記述の不正確さも有名で、読んでみると、ヴァザーリの思い違いや画家の生存年代の誤り、作品の取り違えなど等々誤解や誤記が多数あります。
精確さが求められる時代ではなかったとはいえ多すぎですよ。そのような欠点はあれども、やはり第一級の資料であることに違いはありません。

その理由として、第一に、いまでは観ることのできない失われた画について書かれていること。
ヴァザーリが著した以後、失われてしまった画のなんと多いことか!彼が書き残していなければ、私たちは存在すら知る由もないわけです。ジョットやマザッチョ、フラ・アンジェリコの画など、多くがいまでは失われてしまったことがわかるんです。
また、世界各地に散逸してしまった作品のオリジナルな状態がどうであったかも、ヴァザーリの記述から手がかりを得ることができる。記述は精確ではないけれど、当たりをつけて調べていくことができるわけですよね。

次に、ヴァザーリの生きていた当時に伝えられている画家たちの反応や世間の反響がどうであったか。
ヴァザーリと同時代の画家についての記述から、画家の性格や世間の評価、フィレンツェ・ルネサンスという時代の空気が窺い知れることにあると思います。
訳の賜物でもあるのでしょうが、ヴァザーリの文章は平たい言葉で読みやすいんですよ。ルネサンス画に興味さえあれば、誰でも読める本です。
学術的に取り上げられる本だから、学者然とした難しい言葉で書かれていて読みにくいのだろうと思っていたのですが、実はとても読みやすく、ごく平明な言葉で書かれています。
言葉の遣い方というよりも切り口から、ヴァザーリの興味が学者としてではなく、庶民的な範疇内にあったのだろうと想像されます。ある意味、それが彼の限界なのかも。読んでいると、ヴァザーリの人物像が想像できるんですよ。

ヴァザーリより数百年前の画家の画についての表現は通り一遍という感じだけれど、同時代の画家の描写はなかなかに軽妙で、「列伝」は文学的な位置にも立つのではないでしょうか。
ヴァザーリはゴシップも結構好きだったようで、なかでもフィリッポ・リッピの項は、面白おかしい読み物になっているんです。
文学といえば、訳注で平川氏は(『神曲』の訳者)アッシジのサン・フランチェスコのジョットの画と、ダンテの『神曲』の関係性に触れていました。二人は友人関係にあり、それぞれの作品は相互に影響し合っているのだそうです。
ジョットの項では、フランコ・サケッティの『三百物語』(邦題『ルネサンス巷談集』)も出てました。ヴァザーリの時代にも読まれていたんですねぇ。

本書を読む限りでは、ヴァザーリの優れているところは、美を視る目をもっていたこと、それを後世に伝えようと書き残したことだと思います。また彼は、優れた芸術は子どもや孫の世代以降、後世の人々にも伝えられるべきだと考えた。それは時代を超えた精神、とでもいうのでしょうか。

この巻ではミケランジェロとダ・ヴィンチは扱われていないのですが、ミケランジェロとダ・ヴィンチは、フィレンツェ市庁舎の五百人大広間に競って描きましたが、どちらも後に失われてしまいました。
しかし近年、イタリアの美術史家によって、ダ・ヴィンチ『アンギアーリの戦い』がいまも五百人大広間に存在するといわれています。ヴァザーリが描いた壁画の裏にもう一つ壁があり、そこに描かれているのが『アンギアーリの戦い』であろうということです。
『アンギアーリの戦い』とミケランジェロの『カスチーナの戦い』がどういう位置関係にあったのかは、ヴァザーリの記述でしか知ることができないとか。
『アンギアーリの戦い』以外でも、列伝には重要な内容を含んでいることが、まだあるのかもしれません。それは私にはわからないけれど、「無い」とは誰にも断言できないと思うんです。(2011/7/1)

+芸術家列伝1 ジョット、マザッチョほか
芸術家列伝2 ボッティチェルリ、ラファエルロほか
芸術家列伝3 レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ

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