スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

神の守り人<帰還編>/上橋菜穂子

[守り人シリーズ]神の守り人<帰還編>
上橋菜穂子

My評価★★★★☆

カバー画・挿画:二木真希子
偕成社(2003年2月)
ISBN4-03-540290-7 【Amazon


『来訪編』のつづき。バルサとアスラはスファルたちの追っ手を逃れたが、罠と知りつつもロタ王国のジタン祭儀場を目指すことに。
ジタン祭儀場は、かつてサーダ・タルハマヤが治めた首都で、ノユーク(精霊界)からタルハマヤ神が宿る聖域だった。

バルサは隊商の護衛をしながら旅していたが、途中で一行は狼に襲われる。そのとき<サーダ・タルハマヤ>(神とひとつになりし者)アスラが、カミサマの力を発揮!
九死に一生を得るが、アスラの恐るべき力を目のあたりにしたバルサは慄然とする。

シハナは父スファルを捕え、自らが指導者になった。スファルとタンダは、シハナから脱出して王都を目指す。一方、シハナの罠に陥ったバルサは瀕死の重傷を負い、アスラは敵と知らずシハナと行動を共にする。

いよいよロタ王国建国の祝賀儀式の当日、ジタン祭儀場で人々を待ち受けていたものは!?シハナの目的と謀とは?アスラは神の子となるのか、それとも惨劇をもたらす禍の子となるのだろうか?

********************

神の子となるか人の子として踏み留まるか・・・。ギリギリのところで選択を迫られるアスラ。
アスラの力は自分でコントロールできないし、理不尽な行いに対する憎しみによって発動します。けれども、血で血を洗うことは、被害者にも加害者にも幸せをもたらしません。それはなぜか、ということに対する答えがこの作品なのだと思います。

強引にロタ王国の改革を目指すシハナ。もしもシハナがサーダ・タルハマヤだったら、その絶大な力を行使することにためらわないだろうな。なぜならシハナは、誰ための改革かということが頭になく、改革のために力を己の行使することが、目標であり目的となっているから。
アスラとシハナの力は、現われ方は違えども、一方的であり人間性を蹂躙することでは同じ。二人を分けるものは何なのかが大切なところ。

アスラの選択は感動的なのだけれど、他の部分でどうにもスッキリしないモヤモヤ感が残った。ラストで示されたアスラが今後どうなるのかということもあるけれど、それはいい方へ考えたい。
モヤモヤ感は、結局ロタ王国が何も変わっていないからなのかな。アスラとトリーシアはロタ王国に波紋を投じたけれど、それが一過性の波紋で終わる可能性は否定できないんじゃ。
蔑まれている、いわば人種差別されている<タルの民>、彼らの地位を改善するには、両者の軋轢はあまりにも根が深すぎるように思われます。

モヤモヤ感を一層強めているのが、南部と北部の反目。反目の原因は、一つには経済格差による貧富の差にあると思われます。
ロタ王国には経済基盤がなさそうだし、近隣諸国との政治情勢を理由に、多くの外貨を獲得できる海上貿易をしていません。これでは経済格差が縮まることは非常に考えにくい。今後も資本のある南部はどんどん栄えるだろうし、資本のない北部は廃れる一方なのでは。拡大する貧富の差をどうやって解決するのか。

もう一つは氏族という制度です。氏族による身分社会制度と、氏族の代表者による政治機構です。つまり、ロタ王国の政体のあり方に問題があるように思うんです。
行き詰まった政治機構・経済政策は、私たちの(日本とは限らないけど)現実世界において打開策を見出せない諸問題と同様でしょう。
解決策のないままに問題提起していること、それがモヤモヤ感の理由。
でも、安易な解決策を持ち出さず妥協しないことは、作者の真摯な姿勢の現われであると思うのです。

季節は春。サラユの花の如きアスラはこれからどうなるのだろう。今後の作品でも登場するのでしょうか。
そして、現実でも閉塞感のある諸問題を作品世界に取り入れた作者は、今後どのような世界を築いていくのでしょうか。守り人の世界はどのように変わるのか、変われるのか、とても気になります。(2003/5/17)

備考:2009年7月、新潮文庫化【Amazon

精霊の守り人
闇の守り人
夢の守り人
虚空の旅人
神の守り人<来訪編>
+神の守り人<帰還編>
蒼路の旅人
天と地の守り人(第1部)
天と地の守り人(第2部)
天と地の守り人(第3部)
流れ行く者[守り人短編集]

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。