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誰だ ハックにいちゃもんつけるのは/ナット・ヘントフ

誰だ ハックにいちゃもんつけるのは
ナット・ヘントフ

My評価★★★★★

訳:坂崎麻子
集英社文庫コバルト・シリーズ(1986年1月)[絶版]
ISBN4-08-610812-7 【Amazon
原題:THE DAY THEY CAME TO ARREST THE BOOK(1983)


『ハックルベリー・フィンの冒険』が禁書!?
ジョージ・メイソン公立高校のノラ・ベインズ先生が、歴史の授業の補助読本に『ハックルベリー・フィンの冒険』を指定した。だが本には「黒んぼ」と連発。これが人種差別だと、一部の生徒や父母からクレームがつく。また女生徒ケイトは、この本は女性蔑視だと言いたてた。

ムーア校長はハックの本を授業から外して、図書館で生徒が手にすることのないように指示するが、本が有害かどうかを決めるのは、まず教育委員会が構成した調査委員会が調査した後に、教育委員会が決定する。
ムーア校長はこれまで父母からクレームのついた本を、独断で生徒たちの目に触れないようにしていた。前任の図書館司書が辞めたのはそのだめだった。

学校新聞の記者で生徒のバーニー、ノラ・ベインズ先生、新任の司書ディアドリーたちは、ハックが禁書なのが納得できない。彼らはハックを守り、ファースト・アメンドメント(First Amendment。米国憲法修正法第一項、言論・新聞・宗教の自由を保障した条項)の自由のために立ち上がった!

********************

原題は『彼らが本を逮捕した日』。いわゆる「言葉狩り」について、「言論の自由とは何か」についてわかりやすく楽しく書かれたフィクション。
ファースト・アメンドメント(米国憲法修正法第一項。言論・新聞・宗教の自由を保障した条項)とは何か?国民にとっての知る「権利」や「知的財産」とは何か、検閲の危険性とはどういうこかとなのかについて、子どもや学生向けにわかりやすく書かれているんです。しかも物語として楽しく面白いんですよ。

『ハックルベリー・フィンの冒険』が検閲されたのは、アメリカで実際に起こったことです。
アメリカでの検閲は日本にも影響を与え、発禁処分や不適切とみられる表記の削除など、様々な規制が設けられたそうです。現在では時代背景と作品の歴史的価値が鑑みられ、原文のまま刊行されています。

現在の日本では、ハックの検閲当時とは微妙に異なった観点による検閲への動きがあります。
児童文学の第一人者で国語教科書の編纂者の一人である神宮輝夫氏は、現在の日本でも一部の人々の考えに則って、国語の教科書に対して検閲が行われていると言います。おそらく当人たちには検閲しているという意識はないのではないかと想像するのですが、結果としては検閲以外の何物でもありません。
誰かを傷つけない本なんか、一冊だってないんです。図書館中、捜してごらんなさい(p112)とディアドリーは言うのですが、私は真実だと思います。
検閲というものは、それをされてしまうと、人々は真実から目を背けさせられてしまう。不快な内容だからといって真実を歪められたり、人々の目から隠されたりすると、何が正しく何がいけないのか人々は判断できなくなってしまう。

ケイトの主張するように、有害な本を排除して「知らないでいる自由」はないのか?自由とは危険なもの、思考の自由のもとで何をしてもいいのか?誰が何をどこまで規制するのか?
ディアドリーは自由とは危険なものであるとし、自由の反対はさらに危険なものだと言います。
ケイトは言いました。国は、何が正しいかを教えなければならない。だから、教室や図書館から、まちがった考え、生徒の精神を毒する考えを追放しなければならない、と。
ええ、ケイト、ごめんなさいね。それは独裁者の教育理念です。わたくしたちのものであるはずがない。この国では、考え方を制限するのは、先生や司書の役目ではありません。むしろ、その役目は、その考えを、よいものも悪いものも、説明し、分析して、生徒が将来、自分でそれができるようにすることです。生徒たちが自分の考え方をつかむように導くことです。これが何が正しいかを教えることではありませんか?思考の独立ということを教えることだからです(p230~231)

事は教育とは何かということにも触れざせるを得ないのですが、ディアドリーのセリフは書物や教育に限らず、すべての「情報」に対しても言えることだと思います。

この作品はアメリカのファースト・アメンドメントにおける「自由とは何か」という物語ですが、アメリカだけではなくどの国にも通じ、それぞれの国において常に論議されるべき問題だと思います。
子どもや学生に限らず、あらゆる世代や時代を越えて読まれるべきテーマだと思うので、現在絶版なのが非常に惜しまれます。(2002/8/20)

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