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わが心高原に/おーい、救けてくれ!/ウィリアム・サローヤン

わが心高原に/おーい、救けてくれ!
ウィリアム・サローヤン

My評価★★★★

訳:倉橋健,解説:川本三郎
ハヤカワ演劇文庫(2008年1月)
ISBN978-4-15-140013-1 【Amazon

収録作:わが心高原に/おーい、救けてくれ!


ウィリアム・サローヤン(1908-1981)の戯曲集。
サローヤンはアメリカの劇作家・小説家。アルメニアからの移民の両親をもち、カリフォルニア州フレズノに生まれる。
1934年、短篇『空中ぶらんこに乗った大胆な若者』でデビュー。『君が人生の時』で1939年度ピュリッツァー賞に選ばれるのですが、自分の作品は商業主義とは無関係だから辞退したといいます。

サローヤンはスモールタウンで暮らす貧しい庶民の生活を描くことが多いのですが、そのような人々を優しく包み込むかのような温かな眼差しがあるんです。「絶望のなかでも希望を失わない」、「貧しくとも心は豊かに」と人生を前向き捉えているのですが、そこには生きることの歓びとほろ苦さが常に同居しているんです。
アルメニア系の移民の子どもとして生まれ育ったサローヤンだからこそ、現実の厳しさを身にしみて知っているわけで、それゆえに物語のなかで希望をみせてくれるのだと思うのです。
希望といっても、お金持ちになるとか出世とかではなく、人としてどうあるべきか、ということだと私は思っています。

わが心高原に(My Heart's in the Highlands.1939)
売れない詩人の父親と、アルメニア語しかわからない祖母と暮らすジョオニィ。ジョオニィがポーチにいると、老人が「わが心高原に」を演奏しながら現れた。
マッグレガア老人は、心をスコットランドの高原においてきたと言う。老人の美しい演奏に、ジョオニィと父、近所の人々は心を満たされる。
だが老人は連れ戻されてしまう。やがてジョオニィ一家は、家を明け渡さなければならなくなった。

********************

サローヤンの代表的戯曲。
短篇小説を戯曲化にしたもので、小説は千葉茂樹訳『心は高原に』を読んだことがあります。小説と戯曲の違いなのか、訳によるのか、小説とは雰囲気が異なりました。
小説はどちらかといえばほのぼのとしたハートウォーミングな印象でしたが、戯曲は内容が力強くストレートに伝わってきて、サローヤンらしさを感じました。

状況はまったく楽観的ではないけれど、それでも心を高々ともって生きようとする父親。
ジョオニィは、「誰が悪いというわけではないけれど、どこかに悪いところがあるように思う」と言う。誰に迷惑をかけているわけではないのに、思うように生きられない社会のあり方に、少年は不可解な違和感を感じているんです。
この点について、作者は人生を肯定してみせつつも、それでもなお社会との齟齬を感じているのではないかと感じました。

物語の時代背景は1914年、この戯曲が書かれたのは1939年。解説を読むまでまったく気づかなかったのですが、1914年は第1次世界大戦が、1939年は第2次世界大戦が勃発した年なんですね。
そのような時代背景を踏まえて読むと、サローヤンの伝えたかったことがより強く感じられるように思います。

おーい、救けてくれ!(Hello Out There.1941)
小さな町の刑務所の独房に入られた若い男は、淋しさから賄いの少女に話しかける。少女は働いて得たわずかなお金を、父親に取り上げられるという。
若い男は二人でサンフランシスコへ行こうともちかける。少女はその気になるが・・・。

********************

小さな町で淋しさを抱える男女の物語。
結末は決して明るくないです。解説者のように奇跡のようなラヴストーリーであり、一抹の救いと受け止めるかどうかは読む人によるのでは。
不思議なことに、絶望的なラストにもかかわらず、どこかしら絶望とは違うニュアンスを感じました。どうしてそう感じるのか自分でもわからないのですが・・・。私にはよくわからないのだけど、どこかしらに救いがあるのだろうと思います。(2008/2/8)

心は高原に(「わが心高原に」の小説バージョン)

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