スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ナレンブルク/アーダルベルト・シュティフター

ナレンブルク 運命に弄ばされた人々の城
A・シュティフター

My評価★★

訳:武内康夫
解説:ルドルフ・フリープ
林道舎(1994年12月)
ISBN4-947632-47-X 【Amazon
原題:Die Narrenburg(1841)


山岳地帯のフィヒタウ(村)に、シャルナスト家のローテシュタイン城がある。この城は血族が継いできたが、もし継ぐ者がいなかった場合は信託遺贈される。
信託遺贈で城を手に入れる場合、二つの条件があった。一つは自叙伝を書いて保管すること。もう一つは、すでに保管されている自叙伝を読むこと。ただし持ち出し厳禁。だがいまは城に住む者はなく、廃墟同然だった。

1836年の夏、フィヒタウに若い男ハインリヒがやって来た。彼はエラスムスおやじの経営する旅館『緑のフィヒタウ館』に投宿していた。そこで彼はローテシュタイン城のことを耳にする。
ハインリヒはエラスムスの娘アンナと恋仲になる。月明りの庭で、ハインリヒとアンナは語り合う。
エラスムスはアンナをとても大切にしており、立派な相手に嫁がせようと思っている。ハインリヒはアンナと結婚するために、エラスムスを納得させる地位と公職を手に入れようとする。

ハイリンヒは城の信託財産を管理している市書記のローベルトに、城の内部を見学できるよう手配してもらう。ローベルトはアンナの姉トリーネの夫だった。
二人は管理人の老人ルプレヒトに、城内を案内してもらう。城には一族の末裔の少女ピアがいた。ルプレヒトは巨匠の絵画や、哀しい逸話を残した歴代城主たちの肖像画を見せてくれた。
ハイリンヒは、自分がシャルナスト家の血を引いていることを確信する。だがそれを証明しなければならない。一族の一員であることを証明し、信託財産を継いだハインリヒは、一族が遺した自叙伝に目を通す。
自叙伝にはヨードークス伯爵と、彼がインドから連れ帰った妻ヒュリオン、ヨードークスの弟ジクストゥス伯爵の悲劇が書かれていた。その悲劇にはルプレヒトの妻も関わっていた。

********************

美しい娘アンナと結婚したいがために、地位を手にしたいと願うハイリンヒ。実はハイリンヒは城主の子孫だったという、棚からボタ餅物語。解説を読むとわかるが、ハインリヒによるハッピーエンドは作者の願望のようだ。

ナレンブルクは一般に「愚者の城」と訳されているらしい。本書では「運命に弄ばされた人々の城」という副題がついている。
主題はハイリンヒではなく「城」なのだ。正確には「城だけが知っている一族の歴史」といったところ。
弟ユーリウスを殺したと伝えられる兄ユーリアン。異国人の美しい妻ヒュリオンと、ヨードーク伯爵。ユーリアン兄弟と、ヒュリオンとヨードークス伯爵の事件を運命と言うのは、あまりにも奇麗事すぎるのでは。どちらも嫉妬心から起きた事件なのだから。
ヨードーク伯爵はヒュリオンを理解しようとしていない。だから悲恋と言うより、支配/被支配関係の縺れ。この場合同情すべきはヒュリオンで、作者はヒュリオン側に傾斜している。
ヒュリオン亡き後、ヨードーク伯爵は城に火を付けたという。この辺りが狂気なのだろうが、自己憐憫のなれの果てとも言える。そうしたことを踏まえると、副題は余計で、タイトルは「愚者の城」の方がいいと思う。
最愛のナルチッサ亡き後に城を出て行き、異郷で死んだクリストフ伯爵。こういった城の歴史がタイトルの由縁に違いない。

牧歌的なフィヒタウの風景と、城の暗い歴史。この明暗のコントラストが鮮やかであればあるほど物語が引き立つと思うのだが、いかんせん訳がムチャクチャ酷いので、物語を楽しむどころではない。いままでにも訳と校正が酷いと思う本はあったが、これほど酷いのは初めて。
翻訳以前に、日本語がなっていないのだ!しかも校正をしていないんじゃないかと思うほど(これで校正したと言ったら怒るぞ)劣悪。
シュティフター作品の読みどころは、美しい自然描写にあると思うのだが、これでは自然描写の雰囲気を味わうどころではない。
他に訳本がなかったので仕方なく読んだが、常に訳に苛立ちを我慢して読んだので、意味を掴みきれていないかもしれない。
それでも、ハインリヒの身上がご都合主義なのと、歴代城主たちに同情の余地がないので、魅力ある物語とは思えなかった。ただし、訳が変われば解釈や印象が変わるので、ともあれ新訳を求む。(2002/11/28)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。