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火の記憶 1誕生/エドゥアルド・ガレアーノ

火の記憶 1誕生
エドゥアルド・ガレアーノ

My評価★★★★★

訳:飯島みどり
みすず書房(2000年12月)
ISBN4-622-04638-5 【Amazon
原題:MEMORIA DEL FUEGO(1982)


ウルグアイ出身で本名エドゥアルド・ヒューズ=ガレアーノ(1940年生れ)による、新大陸主にラテンアメリカの歴史を無数のテクストによって浮き彫りにした小説と言うべきか歴史書と言うべきか・・・。どちらでもありどちらでもないように思われる。

本書は3部作の第1巻で創生神話時代から1700年まで。2巻は18~19世紀、3巻は現代まで。
インディオの創世記からインカ帝国を経て、コロンブスの到来、15世紀末頃のスペインやポルトガルなど列国による植民地化。植民地政策への抵抗と反乱などの歴史が、実存する文献をもとに僅か数行から長くても3ページぐらいのテクストによって構成され、時代順に並べられている。
無数の人物の記録が、著者の意図によって進行する。だから主人公と言える人物はおらず、ストーリーらしいストーリーはない。歴史の流れ、各時代の出来事の積み重ねが主題だ。なので説明するのは難しい。

この本を読むと新大陸アメリカ、主にラテンアメリカの歴史がわかるような気になる。
端的に言うと、新大陸アメリカには太陽と月と精霊、大地を母とを崇める人々が住んでいた。そこへ金を掠奪せんとするヨーロッパ列国が侵略し、搾取への抵抗反乱の歴史が始まる。侵略者たちは、現地人を人間と見なさずに奴隷とした。現在のラテンアメリカの混迷はこの時点から始まっているのではないだろうか。

正直に言うと私には、一読だけで無数のテクストを記憶に留めることは殆ど不可能だった。あまりにも情報量が多いのだ。
読後にはラテンアメリカで行なわれた搾取による血生臭さ、混乱がクローズアップされているように感じられた。それが著者の狙いなのかもしれない。著者が前書きで明言しているように、確かに著者のスタンスは中立とは言えない。もっとも一方的な侵略に対して中立でいられるとは思えないが。

これまで新大陸なら新大陸、ヨーロッパならヨーロッパと各々の本を個別に読んで、事実と思われる部分を突き合せなければならなかった。グローバルな視野で書かれた本は意外に少ない。
その点著者は新大陸アメリカに焦点を当てているが、新大陸内だけではなく、同時代のヨーロッパの動きも書いている。新大陸はヨーロッパ動向に常に連動しているからだ。ヨーロッパが変わらなければ新大陸も変わらないので、宗主国の在り様も書かれている。
読んでいると、王制(専制政治)の危険さ、三権分立や世論というものの重要性がわかるように思う。

この本には、私の知っている限りヨーロッパ側の著作では知ることのできない事実がかなりあり、ラテンアメリカで現実にどういうことが行なわれていたのかがわかる。そのため、なぜかつての宗主国がいまだに植民地政策を人道的見地から顧みないのか想像できる。
ただし注意したいのは、元々ラテンアメリカに内在していた氏族の対立抗争が、植民地化によって表面化したことを忘れてはならない。ラテンアメリカの混沌化には、氏族の対立という要因もある。すべての責任を列国に転化しない著者はこの点において中立と言えるだろう。
私としてはこ著者のスタンスに惑わされず、現在のラテンアメリカの混沌化した根源を考察すべきだと思う。

ラテンアメリカ文学に興味のある人は特に必読ではないかと思う。ラテンアメリカ文学に共通する、虚無感や絶望感、空疎さなどの根幹を見い出すことができるからだ。それ以外の人でも歴史的事実を認識すべく、広く読まれるべき本ではないかと思う。ただし民俗学的見地で書かれていないことを留意したい。(2002/5/24)

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