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ゴレスターン/サァディー

ゴレスターン
サァディー

My評価★★★★

訳:沢英三
岩波文庫(1951年10月)
ISBN4-00-327841-0 【Amazon
原題:GULISTĀN(1258)


ゴレスターンサァディー(1184?-1291)は、ペルシアの三大詩人の一人。ホラーサーン出身のフェルドスィー(934-1025)、シーラーズ出身のハーフェズ(1325/26-1389/90)らとともに詩聖と讃えられる。
ペルシア(現イラン)のファールス州の州都シーラーズ出身。ファールス州は古代ペルシア帝国勃興の地で、ペルセポリス神殿址で知られる。
ちなみに13世紀のイラン世界は、シリア、イラク、イラン、アフガニスタン、ウズベキスタンなど広範囲にわたる。

サァディーの代表作一つが本書『ゴレスターン(薔薇園)』で、ペルシア文学の最高傑作だとか。訳者は本文も含め、ペルシア流の発音で表記している。原題は本来ペルシア語。
東洋文庫から蒲生礼一訳で『薔薇園(グリスターン)』刊行されている(「グリスターン」とはゴレスターンのインド風の読み方だという)。蒲生訳の方が読みやすくわかりやすいのではあるが、私は沢英三訳の方が古雅な趣きがあり、ペルシア色の雰囲気を濃厚に醸し出していると思う。

8つの章から成り、第1章は「王侯気質について」、第2章「托鉢僧の行状について」、第3章「足るを知るの美徳について」、第4章「沈黙の益について」
第5章「恋愛と青春について」では、サァディーが若かったとき、正午の暑熱を避けるため通りがかりの家の蔭に避難した。そのとき家の中から一人の美女が現れ、ぶどう酒の入ったコップを差し出した。飲み干してサァディーは生気を取り戻すのだが・・・

「わが心の渇きは消されず
冷き水の一飮みもても、また海を飮めばとて。

如何ばかり樂しからまし、その幸運者は
朝な朝な、かゝる花の(かんばせ)にまみえ得る。
酒に醉る者、夜半にまた目覺むべし
されど酒くみ人に醉える者は、最期の審判(さばき)日の朝まで目覺めず。」(p215)


以上は美女についだが、異性はもとより同性間でのことも書かれている。同性への感情は友情以上なのだが、それが美意識上の感情なのか恋愛感情かどうかは判断つきかねる。にしても同性愛が禁じられているのに堂々と書くところが、ある種、イスラムの不思議である。

第6章「老年と衰弱について」、第7章「教育の効果について」、第8章「社交上の戒めについて」。
サァディーの体験談、諸王の行状や逸話、市井での珍しい出来事などの見聞、物語などバラエティーに富んでいる。また、シリアのトリポリで十字軍に囚われた失敗談も語られている。正確には、開放された後の失敗談だが。

内容はいわば教訓詩、というよりも説話集といったところかな。どちらかといえば物語といった印象を受けた。
哲学的なものではなく、日常的に心がけておく道徳観や倫理、教訓や警句、節制とか謙遜といったことなどが語られている。
謙譲という言葉は現代日本では死語となったようにしか思われないが、概ね日本人にも通じるところがあり、アジアなのだなあという印象を受けた。西欧人とは根本的に考え方が異なるように思う。

サァディー(サアディー)の氏名は、シェイフ・モスレヘッディーン・サァディー・シーラーズィーとして知られるという。ファールス州を治めるアターベク(テュルク語で「父なる君侯」という意味)のサァド・ザンギー王の治世に生まれた。
「サァディー」とはサァド王の名からとった雅号で、「幸運」「繁栄」の意なのだそうだ。シェィフ(シャイフ)とは、聖者の域に達した人に与えられる尊称。長老・尊者・教師・知識人といった意味らしい。モスレヘッディーンとは「宗教改革者」の意の本名で、シーラーズィーは「シーラーズの人」。

サァディーの父親はサァド・ザンギー王に仕えていたのだそうだ。サァディーは父親の薫育を受け、父亡き後は母親が教育の任に当たり、その後、宗教・学問の中心地バクダードの最高学府で学ぶ。
メッカ巡礼や小アジア、北アフリカの国々を訪れるなど、人生のほとんどを旅上に過ごしたらしい。
帰郷した後、サァディーは新王(サァド・ザンギー王の子)に本書を献じた。

サァディーの生きた時代は十字軍の時代だが、サァド・ザンギー王の治世の13世紀前半にはモンゴルのチンギス・ハーン勢力が南下するなど、不穏な時代だった。
歴史的にアラブ、トルコ、モンゴルといった諸外国に支配され続けてきたイラン世界だが、なかでもサァディーの生きた時代はまさに激動の時代といえよう。
そのような歴史的背景を踏まえて読むと、サァディーの詩から彼の徳性が伺えるかのようである。なにより当時のイスラム世界を思い描くための縁の一端となる。サァディーの旅に添い、中世ぺルシア世界の薫香に酔いしれつつ漂いたい。(2011/7/24)

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