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波の上を駆ける女/アレクサンドル・グリーン

波の上を駆ける女
アレクサンドル・グリーン

My評価★★★★☆

訳:安井侑子
晶文社・文学のおくりもの7(1972年1月)[絶版]
ISBN4-7949-1717-4 【Amazon


旅の途中、やむなくリッスの街に滞在していた青年ハーヴェイは、港で汽船から降りた一人の少女に目をとめる。少女の印象は強烈で忘れ難かった。
彼は少女の名前がピーチェ・セニエルということを突きとめるが、少女はすでに街を去った後だった。
ハーヴェイがフィラートルたちとカードをしていたとき、ふいにハーヴェイの頭に声が響いた。「波の上を駆ける女」と。
波の上を駆ける女とは、難破船の守り神と言われる少女フレジー・グラントの伝説のことだった。

彼は寄港した一艘の船が<波の上を駆ける女>号であることを知り、船が自分の捜し求める何かに導くことを予感。直ちに乗船する。しかし船長ゲスは評判が悪く、ハーヴェイはゲスと衝突した挙句、無理矢理ボートに乗り移せられて、海上に置き去りにされる。
運よく<ヌィロク>号に拾われた彼は、親切な船長プロクトルと姪のデジーらと親しくなる。船は航路ヘル・ヒューを目指していた。

ヘル・ヒューは創立百年のカーニバルの真っ最中で、人々は広場で、街の象徴である『波の上を駆ける女』の大理石像を崇めていた。街ではこの像を破壊しようとする一派と守ろうとする一派が対立しており、不穏な空気が漲っている。
カーニバルの最中、ハーヴェイはピーチェ・セニエルと面識を得る。<波の上を駆ける女>号の正当な持ち主であるビーチェは、ゲスから船を買い戻そうとしていたのだ。ハーヴェイとピーチェは各々、ゲスの元へ談判に行くが・・・。

********************

原書は1925-1926年に執筆、1928年に刊行。ロマン溢れる海洋幻想小説。
海原と架空の街リッスとヘル・ヒューを舞台とし、ヘル・ヒューではゲスを巡ってサスペンスタッチで展開。人々は運命に導かれるまま、出会い、別れ、そしてまた出会う。運命と言えばそれまでだけれど、あまりにも偶然が多いのが気にならなくもない。

物語のすべてがロマンティックなわけではありません。架空の街を舞台としているけれど、決して平穏な世界ではないんです。
私利私欲のために大理石の像を破壊しようとする一派と、守ろうとする一派の攻防戦。人はいいけれど欲のために罪を犯す水夫など、現世的な利害が絡んで事件が起こるんです。
世界は決して甘くはなく、すべてが自分の思い通りにいくとは限らない。でも、夢を捨ててはいけない。そのことが作品中に表れています。

様々な形でハーヴェイの前に現われる"波の上を駆ける女"は、人々に運命を指し示す女神というべきかな。
ハーヴェイは女神に導かれつつ、己の心が求め、正しいと信じる方向に突き進む。そして一時は苦い思いをするけれど、自分が採った行動は間違いではなかったと信じ、結果として幸福を掴みます。
自分が正しいと思うことをし、それを信じ続けること。と言うと道徳的だけれど、要は夢と自分を信じて、自身を裏切らないことでしょうか。それは他の作品にも共通しており、作者の根幹的な姿勢なのだと思います。(2003/4/12)

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こんにちは

これは「文学のおくりもの」の最初に出たシリーズですよね、ナツカシイ!晶文社のあのシリーズには面白いものがたくさんありました。グリーンのこの物語も、ただ少年の恋愛譚とか幻想譚だとかではなくて、もっと不思議なものが詰まっているような感じをうけました。

No title

★jacksbeansさん
そうそう、「文学のおくりもの」です。懐かしいですね。
あのシリーズは児童文学とかファンタジーとか幻想文学いうジャンルにくくれない、大人が読んでも感じるところのある、ちょっと変わった話が多かったように思います。
と言っても、ほとんど未読なんですけどね。いつか全巻制覇してみたい叢書です。所持していないので、図書館から借りてですが。
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