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サンディエゴ・ライトフット・スー/トム・リーミイ

サンディエゴ・ライトフット・スー
トム・リーミイ

My評価★★★★

訳:井辻朱美
カバー画:佐竹美保
サンリオSF文庫(1985年11月)[廃版]
ISBN4-387-85143-0 【Amazon
原題:San Diego Lightfoot Sue(1979)

収録作:去りゆく影を抱きしめよ(ハーラン・エリスン)/トウィラ/ハリウッドの看板の下で/亀裂の向こう/サンディエゴ・ライトフット・スー/ディノサウルス/スウィートウォーター因子/ ウィンドレヴン館の女主人/デトワイラー・ボーイ/琥珀の中の昆虫/ビリー・スターを待ちながら/二〇七六:青い眼(ブルー・アイズ)/トム、トム! ある思い出(ハワード・ウォルドロップ)


トム・リーミイ(1935-1977,米)は、60年代はファンジン活動、後にハリウッドで映画関係の仕事(主にシナリオ書きだったようです)に携わる。70年代に入ってから創作活動を開始し高評を得る。
本となったのはこの『サンディエゴ・ライトフット・スー』と長篇『沈黙の声』のみ。他に未発表の短篇「ポティフィー、ピーティー、私」と「Mは百万(ミリオン)のM」(作者は「生きているときはろくに眠らない」と改題したがっていたという)があるとのこと。

この短篇集には、ハーラン・エリスンとハワード・ウォルドロップによる寄稿(追悼)文あり。
ホラーやSF色の強い作品もあり多彩な作風なのですが、ミーリイは本質的に幻想小説・幻想文学系の作家だと思います。SF的な短篇よりも、幻想小説的な短篇の方がいいんですよ。
ミーリイの幻想世界は、現実世界での様々な相克によって起こる"亀裂"から立ち昇るかのように思われるんです。しかしその相克は対立するのではなく、両義的なもののような印象を受けます。

「トウィラ」「ハリウッドの看板の下で」「サンディエゴ・ライトフット・スー」「デトワイラー・ボーイ」のこの4篇が面白かったです。
この4篇には、悪意に満ちた性的な存在であると同時に、無垢で天使的なる者が登場します。性を象徴するかのような魔性の者、中性的いや無性的で畸形の無垢なる者。これらのモチーフは、長篇『沈黙の声』に顕著に表われていると思います。

トウィラ(Twilla.1974)
9年生に転入してきたトウィラは、天使的なほど清らやそうで美しい少女。しかし教師ミス・メイハンは、トウェラに何か異質なものを感じる。
やがて女生徒が死亡するが、保安官はなぜか死因を隠したがる。ミス・メイハンは死因を突き止めようとする。
ミステリータッチでオカルトぽい短篇。

ハリウッドの看板の下で(Under the Hollywood Sigh)
死者が出た事故現場で、警官ルーが見かけた完璧に美しく無機的な少年。しかしその少年は一人ではなく、同じ顔同じ姿形の少年が何人もいた!?惨劇の現場に現われる少年たちは何者なのか?
ルーは職務を離れて、少年の一人を監禁する。ルーはヘテロを自称しているが、尋問が欲情へと変わり・・・。
美しき魔に魅せられた男の話。うーん、悪くはないんだけど微妙。ストイックな話にできなかったのかな。

亀裂の向こう(Beyond the cleft)
外界と交流のない町で、ある日突然、子どもたちが人々に襲いかかる!
子どもたちは異常なほど急激に成長し、10歳で子孫を残せるようになりどんどん繁殖していった。生き残った人々は銃を持ち身を寄せ合って防御するが、新たに生れる子どもは異様だった。
この短編はホラー。何が原因で子どもたちが変化したのかはわからないけど、それは重要ではないと思うな。

サンディエゴ・ライトフット・スー(San Diego Lightfoot Sue.1975)
母の死をきっかけに15歳のジョン・リーは、南カンサスの辺鄙なド田舎を飛び出す。
たまたま来たバスに乗りロサンジェルスへ降り立った。美しく世間知らずで無垢なジョン。ジョンはゲイのデイジー・メイとパールに拾われ、彼らを通じて知り合った年上の女性スーと恋仲になるのだが・・・。

都市小説でありながらリリカルな青春小説的であり、ラストは幻想小説。
冒頭とラストに捻りを効かせているのだけれど、ラストはちょっとわかりにくかった。誰もがスンナリわかる、とは言えないと思うな。
でも短篇集のタイトルにされるだけあって、ミーリイ独得のムードと余韻があり、代表作といっていいと思います。私はこの短篇がいちばん好きです。

ディノサウルス(Dinosaurs)
遠未来、科学的知識も歴史も失われ廃墟と化した地球で、生き延びる人々の物語。しかし地下には青色児(ブルー・ベイビー)という、畏怖すべき存在がいた。
青色児とは何なのかわからなかったよ。

スウィートフォーター因子(the Sweetwater Factor)
47年間も雨を降らせず、アフレカの首都をタフィ(お菓子)に変え、バナナはキノコように地面から生える。
それというのも自然のバランスや秩序を覆して、不条理を撒き散らすスウィートフォーター家の因子のせい。最後の当主はモントゴメリー・スウィートフォーター(通称モンティ)という。
スウィートフォーター家のせいで、完璧な秩序と調和を尊ぶ<母なる自然>はえらくご立腹。だが、ついにモンティが亡くなった。以後の千年間、<母なる自然>は秩序と調和に精進するが、<歴史>は退屈のあまり欠伸をする。
ナンセンスな物語と思わせておいて、実はシニカル。小洒落た一篇。

ウィンドレヴン館の女主人(The Mistress of Windraven.1976)
匿名作家として書いたゴシック・ロマンス小説『ウィンドレヴン館の女主人』で、大成功したアグネス。アグネスは続編を書こうとするが、失業した夫との夫婦仲がうまくいかず亀裂が進むばかり。破綻してゆく実生活から逃れるべく、アグネスはウィンドレヴン館での幸せを夢見続ける。
よくあるオチだけど、このオチこそが『サンディエゴ・ライトフット・スー』に通じるんです。

デトワイラー・ボーイ(The Detweiler Boy.1977)
伊藤典夫訳を参照のこと。
この短編は都市を舞台に探偵が活躍するハードボイルドタッチに、無垢で天使的であると同時に魔性の者が登場します。「サンディエゴ・ライトフット・スー」と並ぶ、ミーリイの代表作の一つだと思います。

琥珀の中の昆虫(Insects in Amber.1978)
嵐のために道が塞がれ、たまたま行き会った人々は近くの館へ避難する。しかしそれは、ウェザリー教授が女生徒のアンを館に連れて来るために企んだことだった。
念力を操るウェザリー教授は、少年時代に異界から生命エネルギー体を引き込んでしまった。そのために母親が、時間に留められた存在になってしまった。
母親の生命エネルギー体を異界へ戻すために、テレパスであるアンの力が必要だった。だが、避難した人々の中にアン以上の力を持つ少年ベンがいた!
ホラーちっくSFといったところ。このぐらいだったらミーリイではなくても、誰かB級ホラー系の作家が書いたんじゃないかなあ。

ビリー・スターを待ちながら(Waiting for Billy Star.1978)
ハイウェイ沿いの店に、住み込みで働くスザンヌ。
彼女は同棲相手の二流のロデオ騎手ビリー・スターと二人で店に来たが、ビリー・スターに置いてけぼりにされたのだった。スザンヌは働きながらビリー・スターを待ち続ける。
だがある日、偶然店に来たロデオのカウボーイから、ビリー・スターの死を知らされる。翌朝、スザンヌが消えた。ジュークボックスからは「テネシー・ワルツ」が流れ・・・。

構成的にはこの短篇集の中で、いちばんスッキリしていました。
ラストは「ウィンドレヴン館の女主人」と同じパターン。でも、主人公である女性の心境が異なるので、受ける印象が全然違って、こちらはロマンティック。
リーミイは、このようなノスタルジックというかリリカルというか、そんな作風の方がいいですね。

二〇七六:青い眼(ブルー・アイズ)(2076:Blue Eyes.1979)
異種族から宇宙から飛来し地球を支配してから百年後の2076年、草原で暮らす狼部族の若き戦士・青い眼(ブルー・アイズ)の活躍を描いた物語。
未完の大作の序章といったところ。本来、映画のシナリオとして書かれたものだとか。
未来を舞台に、上帝を倒して人類を解放しようとする若者の成長を描いたヒロイック・ファンタジーという感じ。(2003/9/29)

デトワイラー・ボーイ(伊藤典夫訳)

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