スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

移動都市/フィリップ・リーヴ

移動都市
フィリップ・リーヴ

My評価★★★★

訳:安野玲
創元SF文庫(2006年9月)
ISBN4-488-72301-2 【Amazon
原題:Mortal Engines(2001)


戦争によって文明が荒廃してから千年後の遠未来。
各都市は移動しながら、都市淘汰主義によって互いに狩ったり狩られたりし、資源や奴隷を確保していた。移動都市の都市淘汰主義に対し、反発する反移動都市同盟は争っていた。
移動都市ロンドンは階級制が徹底しており、上層にはロンドン市長を兼任する工学ギルド長のクロームがいる。クロームの片腕は、冒険家で史学ギルド長のヴァレンタインがいる。最下層には、罪を犯したりした者が、汚濁が充満する作業に従事させれらている。

博物館で働く史学ギルド見習いの少年トムは、憧れの冒険家ヴァレンタインと同行できて有頂天になる。だが、ヴァレンタインがナゾの少女に襲撃された!
少女はヘスター・ショウといい、復讐のためヴァレンタインを狙っていたのだ。
異貌のヘスターとの出会いにより、トムの運命は一変。トムはヘスターと行動を共にするはめになり、弱肉強食の世界で様々な危難に遭う。

二人は飛行船の持ち主でパイロットのアナ・ファンに助けられる。彼女は反移動都市同盟の女スパイだった。しかしヘスターに対して刺客が差し向けられ、二人は危機を逃れるのだが・・・。
一方、ヴァレンタインの娘キャサリンは、少女(ヘスター)に襲撃されてから父親の様子がおかしいことを心配する。父親を助けるために、キャサリンはヘスターの正体と理由を探ろうとし、<メドゥーサ>なるトップシークレットの存在を知る。
ロンドンは反移動都市同盟の牙城に接近しつつあった。いったい何のために?ヴァレンタインは何をしたのか、その目的は?そしてメドゥーサとは?

*******************

都市が移動し互いを貪り喰らい合い、飛行船が飛び交う未来。都市はギルドによって運営され、人々は階級によって分けられる。移動都市と反移動都市同盟は対立している。そんな奇怪な未来世界を舞台にした、トムとヘスターの冒険SF。
独特の世界設定、行く先々で次々に巻き込まれるトムとヘスターの冒険に次ぐ冒険。次第に明らかにされてゆくナゾ、個性的なキャラクターたち。全4部作の第1部ということだけれど、この巻だけ読んでも問題なし。面白かったです。

訳者あとがきによると、フィリップ・リーヴは1966年、イギリスのブライトン生まれ。イラストレーターとして活躍し、本作が初の小説らしい。イラストレーターだからでしょうか、映像が喚起させられ、全体的に読むアニメという感じがしました。
読みながら、常に宮崎アニメを思い浮かべました。この作者、絶対に宮崎アニメ・ファンだと思うな。

トムは悪人であれ、人を傷つけることに抵抗感を抱く。また、移動都市ロンドンで生まれ育ったため、都市淘汰主義こそ正しいと信じて疑わない。しかし外部の世界に触れたことで、既存の価値観が絶対ではないことに気づき、トムの価値観は揺らいでいく。彼は、植え付けられた価値観や論理観ではなく、何が正しいのかを自分自身で判断していくんです。
キャサリンは最下層の人々の実態に触れ、上層階級の生活や都市機能が、どのような人々の犠牲の上に成り立っているかを知ります。そして、父親を愛しつつも、自分が正しいと信じる行いをしようとします。

トムとキャサリンに共通するのは、自分たちの身の回りから踏み出したときに新しい視野を得、それまで絶対的だと信じていた価値観や論理観を見直していること。これまで自分たちが正しいと信じていたことは、本当に正しいのかと悩むんです。
エンターテインメント性によって薄まってしまったけれど、非常に難しいテーマを扱っていると思います。それに対する作者の解答は曖昧になってしまった感がありますが。そもそも、簡単に解答をだせるようなことではないだろうけど。

魅力的なキャラクターがどんどん死んでいくのは残念でした。どうしても彼らは死ななければいけなかったのだろうか、と疑問を感じます。
キャラクターは殺すのはカンタンですが、生かすのは難しく、作家の技量が問われると思います。生かす方法を探ることで、よりテーマが深まったのではないかあ、と思うんですけどねえ。(2008/5/14)

+移動都市
掠奪都市の黄金

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへにほんブログ村 本ブログ 海外文学へ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

H2

Author:H2
My評価について
=1ポイント
=0.5ポイント
最高5ポイント

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。